表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/9

4 転生

時間にして30分程だろうか赤く充血した目が恨みがましく鏡の向こうでこっちを見ている。

残された両親や妹、友達の事を考えるだけで胸が締め付けられるように痛む。

だけど死んで新しい人生が与えられたならやるしかない。今までだってただ生きてきた。自分のできる範囲でそれなりに頑張って、生きてきた。

それが生まれ変わり続くだけの事だ。


そう言い聞かせ自分からトイレの扉を開いた。

元々私は営業職。自社取扱い商品でクライアントの課題の解決を立案しプレゼン、そして実行するのが仕事だった。この世界に慣れるまでは仕事と割りきろう。どうせ家族など居ない世界。ひとりぼっちなんだから。


「便秘ですか?」


トイレから戻った女性に対して失礼な台詞だがドアを破り突入されなかっただけよしとしよう。

返事をしないままリビングのソファで再び対峙する。相手の顔をよく見ると50手前くらいの渋めおじさんである。短い髪を整髪料で固めており、体躯は細身ながら鍛えているのが服の上からもわかる程だ。私の泣き腫らした顔を見て向こうもなんと続けていいのか押し黙ってしまった。


「何かノートやペンのような書くものをいただけませんか?」


私の一言にそばに控えている男達がお互いを見つめ合い首を振る。その中の1人がバタバタと別室からノートとボールペンを持ってきて渡してくれた。


「すみません。それしか…」


ノートには『数学 ユーリ・ヤクモ』と記されており、開くと最初の数枚のページが破り取られた後が残っている。急拵えしてもらったようで申し訳ないが使わせてもらおう。


さて、始めるとするか。


一度深呼吸をしてから私の方から口を開いた。


「大きく分けて三点、教えていただけますか?一つ、どうして私がここにきたのか。二つ目、どうやって生きていけばいいのか…三つ目はさっきの国を救う云々の話。」


わかりやすいように最初に人差し指を立てて一本ずつ増やしていく。情報はいくらあっても足りない。この世界の知識が圧倒的に不足している。

渋いおじさんは少し黙ったが頬を爪先で少し掻いてから話し始めた。


「ここにお越しいただいた理由からお話しましょう。今年16歳になる並外れて強いマナを持つ者が各国に1人、合わせて5人います」


「マナってあのマナですか?よくある力的な、MPみたいな?」


ファンタジーにありがちなワードナンバーワンが突如として現れ困惑する。体感としては全く感じないが私もマナを少しは持っていたりするんだろうか。


「MPはよくわかりませんが…アビリティを発動する力の源のことです」


「アビリティ…?」


「はい。魔獣を倒すために、現在は人口の約一割がアビリティと言われる各々違う能力を10歳で目覚めさせます。世界水準として18歳になると魔獣討伐の専門の学校に通い鍛錬したのち、攻撃に向く能力を持つ者を中心に魔獣駆除隊に配置します。……順番が前後しますが、生きていくために駆除隊に就職することが年収も高く国家公務員ですので安定しており人気の職業です」


なんとなくどういう世界線なのか見えてきたように思う。特殊能力で魔獣を倒しまくって勇者になるやつね。


「アビリティとマナについては遺伝によるところが八割と言われています。基本としてマナは父親から、アビリティは母親から受け継ぎます。アビリティは時折遺伝しない場合もありレア度が高いものが生まれたりもしますが、マナに関しては九割五分が父親と同じレベルになります。ただ、先程申し上げた5人はこの例外の方に属し、測定不能な程マナが強大なのです。我がナユタ国では先程貴女を召喚したユーリ様がそれに該当します。本来なら来年の4月から世界最高峰のクラミレンス退魔獣学校に通っていただき、他の各国トップの4人とコネクションを作り、均衡している各国への武力牽制の意味も兼ねて首席卒業をしていただく予定でした」


「ちょっとよろしいですか?」


メモを書き取る手を止めて口を挟む。


「どうぞ」


「嫌な予感がしてやまないんですが、まず私を召喚したのがさっきの男の人でユーリ…さん。そして本来なら学校に入って首席卒業予定『だった』ということは…さっき見た感じだとそれが無理そうだから私に代わりになってくれとかそういうことですか!?」


「おお、なんとご聡明でいらっしゃる!」


「おお、じゃないですよ!首席も何も、特殊能力もなければ成績も中の中。しかも高校とか15年前くらいに卒業してて中学校の勉強さえも覚えてないですから!もう方程式とかさいんこさいんとか脳内からすっぽり消えてますから!」


記憶を手繰り寄せるが友達と遊んだり漫画読んでる記憶が大半だ。


「勉学はどうかわかりませんが、貴女にはアビリティと強大なマナがあるはずです。そういう召喚をユーリ様にはしていただきましたから」


「呪文とかを唱えたら火が出る…とかですか?」


「それは儀式をしてみないとわかりません。儀式でアビリティを解放したのち検査をすればわかりますし、魂に刻まれているものですから自ずと使い方も脳内で理解できるようになります。ただし、ユーリ様のようにマナの大きさによってはコントロールが難しかったりする場合やアビリティでも複雑な制約がある場合はそれを使いこなす修練が必要です」


メモを取り終えて重要な部分に丸をつけ整理する。


「今までの話を要約すると、まずはじめに、儀式後アビリティのコントロールを身につける。次に、ユーリさんの代わりに変な学校ですごい人達と友達になって首席とって欲しい…っていうのが召喚した目的であり当面の目標。最後に魔獣駆除するお仕事に着いたら食いっぱぐれない。っていう認識でいいですか?」


「概要としてはその通りです」


「現状はざっくりとわかりました。追加で確認したいことが2点あります。一つ目がお金の事です。金銭的な生活の保証はどうなりますか?達成できた場合と、チャレンジして達成できなかった場合、そしてチャレンジしない場合…を教えてください」


まずはライフラインとして金と家の確保が最優先だ。


ただ、この話に乗るかどうかは別問題だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ