助手
研究室の空気は少々張り詰める。
今回の実験は今までのデータを集めた集大成、これが失敗に終わると数年の苦労が水の泡。
理論上は間違いない。温度・圧力・グラム、各数値は正常、実験に使われる機材の扱いは慣れた助手達の担当。
万全の体制を整えて今日を迎え、教授の声は震える。
「さて、準備はいいね。実験を開始しよう。」
実験は成功した。数年の苦労が報われた筈だった。
温度の摂氏と華氏の標記違い
圧力はPaとbarの勘違い
グラムを量る手は震え
助手達のミスが重なった偶然の産物として
実験は成功してしまった。
そもそも、慎重に慎重を重ねた教授の二転三転した指示に翻弄され、渡された資料もバラバラ。果たして今回の成功の要因など誰が分かるものか……
世紀の大発明は神の悪戯によって今日も幻となる。
神憑り的に美味しく出来た料理
「もぅ一回作って」「この前のアレ」
え〜作れません。
似たような物は作れても、なんか違う……
そんな事ありません?