表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/214

205  アダマンタイト・ゴーレム

「おりん、魔石お願いね」

「どこにあるの?」

「基本、核と一体化してるよ。だから、割れちゃうことが多いね」


 言っている間にウッドゴーレムを焼き切っておりんが割れた核を取り出す。


「運がいいですね。今回は無事です。魔石は割れてないですよ」

「お、助かるね」


 この大きさのウッドゴーレムの魔石だ。

 そこそこ魔術を連発しても魔力を簡単には使い切らないだろう。


 坂を下っていくと、廃坑そのままのような雰囲気の洞窟に変わった。

 もっとも洞窟内のサイズは廃坑の時とは比べ物にならない。


 また大物がいるのかな。


「別種のゴーレムがいます」


 進んでいくと、今度は岩のゴーレムが数体うろついていた。

 さっきのウッドゴーレムのような巨人サイズではないけど、わたしたちよりは断然大きい。


「……ロックゴーレムか」


 こちらへ気付いて向かってくる前にストラミネアが動いた。

 ロックゴーレムたちの動きが不自然に止まり、見えない壁で左右から挟まれたように腕を縮こまらせたあとバラバラに砕け散った。

 まとめて圧壊させたようだ。


 ストラミネアは、最後に一体だけ残してあったロックゴーレムには圧縮させた空気をぶつけて破壊した。


「それほどの強度でもないですね」


 ゴーレムの頑丈さの確認だったらしい。


「チアでも十分斬れそうだね」

「じゃあ、次のはチアがやるー」


 少し進むと早速次のゴーレムが現れた。

 ゴーレム系ばかりだな。そういうダンジョンなのだろう。


「いっくぞー」

「あ、チア、そのゴーレムは……」


 言い終わる前には、もうチアが色の違う二体のゴーレムをそれぞれ上下と左右に真っ二つにしていた。


「なに?」

「それ、アイアンゴーレム……いや、もういいや」


 なんか普通に切ったな、この子。

 鍛冶神の作った剣の性能を差し引いても、どうなんだろ。

 ちょっとゴリラすぎない?


 二体のゴーレムはきれいな断面をのぞかせて動かなくなっている。

 片方は鉄で片方は銅かな……。


 次に出てきたアイアンゴーレムはおりんが倒した。


 アイアンゴーレムの攻撃をかいくぐって胴体部分に赤熱させた腕で触ると、すぐに熱で核は破壊された。


「これ、熱くなってるから冷めるまで回収できないね。斬れるやつはチアが斬った方が早いかな」

「あーい」


 そのまま冷めるまで小休止して、再度出発した。


「その先に二体いますよ」

「はいはーい」


 チアが処理しつつ奥へと進んでいく。


「そろそろダンジョンの最奥が近そうです」

「結局、特に変わったことはなかったですにゃ」

「奥にまだ反応がありますので、ボスモンスターが設置されているようですね」


 ダンジョン・コアを守る最後の番人だ。

 今までの感じだとこれもゴーレム系だろうな。


 予想通りというか、金属系の黒いゴーレムと、その周りには透明感のある四色のゴーレムがいた。

 どれもウッドゴーレムのように巨大なタイプではない。


 部屋に入ると反応してくるタイプっぽいな。

 入ると閉じ込められそうな類の仕掛けはなさそうなので、ちょっかいを出してターゲットと認識されても逃げるのは問題なさそうだ。


 黒く光るゴーレムのあの体は……。


「……アダマンタイト、か。ちょっと最後だけ難易度上がりすぎでしょ。おまけに周りに宝石系のゴーレムまでいるし」


 宝石系のゴーレムも、硬度はそこまでじゃないけど魔術系の攻撃をしてくるので侮っていい相手ではない。


「転移魔法陣が置かれていた理由はこれでしょうかね。……へそくり用ダンジョンですか?」


 いや、まったく関係ないし偶然なんだけど。

 ただおりんの言うように、どのゴーレムも倒せるなら素材としては非常に魅力的だ。


「わざわざこんな面倒なへそくりしないよ。地下じゃキツい相手だし……。ダンジョンの成長を止めるって意味じゃ結構魔物は減らしたからもう放っといてもいいんだけど」

「そんなもったいないことできませんよ!」


 動く宝石と言っていい存在のジュエルゴーレムを見つけるのは、宝くじを当てたようなものだからな……。


「ジュエルゴーレムだけでも倒して持って帰りたいですにゃ。今、手持ちのアクセサリー全然ないですし」

「うーん……でも、ちょっとキツくない?」


 ジュエルゴーレムだけと言っても、戦闘が始まればアダマンタイトゴーレムが黙って見ていてくれるわけがない。

 絶対にまとめて五体相手にしなくてはいけなくなる。


「キレイだけど、お店で買うのと違うの?」

「純度もすごいけど普通の宝石とは性質的にも違う、おりんが目の色変えてるのも納得の希少な高級素材だよ。ちなみに、チアやわたしの風精霊の靴に使ってる精霊核もあれ系の加工品」

「ほへー」

「一言余計ですにゃ」


 おりんがジロリとこちらを見た。

 それから、打って変わった猫なで声でチアに話しかける。


 ネコの方が猫なで声だ。


「チアちゃんも一緒におそろいのアクセサリーでも作りませんか? ね、チアちゃんも手伝ってくれますよね」

「ホント? うん、作る! ミネアちゃんみたいにおりんちゃんの火も入れれるかなー?」

「どうでしょう。多分できるとは思いますが……。で、ロロ様もいいですよね」


 どうしよっかなーと思っていたら、おりんの一本釣りでチアが見事に釣られた。

 チアはチアで何か考えているようだし、これはもう仕方ないな。 


「わたしとストラミネアがアダマンタイトゴーレムの気を引いて、おりんとチアがジュエルゴーレムを速攻で斬って退散ね」

「いえ、可能そうならジュエルゴーレムは私が全部やりたいです。その……チアちゃんがやるとバラバラになっちゃいそうなので」


 チアが魔法の鞄(マジック・バッグ)から取り出した本人と不釣り合いな大剣におりんが目を落とす。


 たしかにチアが倒すとなると真っ二つならいい方で、運が悪いと木っ端みじんにしちゃいそうだもんね。


 ただ、赤青白茶と種類の違うジュエルゴーレム四体も弱い相手じゃない。

 多分四属性に対応してるんだろうけど、おりん一人で大丈夫かな。


「じゃあ、チアとストラミネアがアダマンタイトゴーレムね。手間取ったら、おりん以外もジュエルゴーレムの損傷は気にせず倒しちゃう感じで」

「あーい」

「わかりました」

「チア、あのゴーレムはチアの剣じゃ斬れないから、気を引きつつ逃げ回る感じでストラミネアのフォローしてあげて。あとウッドゴーレムでわかってると思うけど、人間とは関節の動き方が違うから気をつけてね」

「ん-、斬れない?」


 チアが納得いかない感じで自分の剣を眺める。

 鍛冶神がチアのために作った剣なので、性能は間違いない。


「チアの剣と同じかそれ以上に硬いし、それがあのサイズだからね。今倒せるとしたらおりんが溶かすくらいかな」


 アダマンタイトは魔術が通りにくい素材だし、おまけに地下だからわたしとストラミネアも派手なことはできない。


「むー」


 ウッドゴーレムと他のゴーレムから回収したいくつかの魔石を用意して準備を整えた。


 最初の攻撃はマナを変換して魔力にして使えるので派手にいこう。

 さすがにまだこの段階では反応してこない。


「攻撃術式描いたり、魔力を圧縮し始めたら反応すると思うから、先にストラミネアがアダマンタイトゴーレムに一発入れて吹き飛ばして。全力ね」

「わかりました」


 ストラミネアが空気を圧縮して弾丸を作り始めた。


 ゴーレムたちは無反応だ。

 ……あれ?


「まだ反応しないね。いいや、やっちゃって」


 負けるわけがない、壊れるわけがないという想定なのかな?


「いきます」


 ストラミネアが撃った瞬間、ようやく五体のゴーレムが一斉に動き出した。

 機械的に動くゴーレムたちの行動に迷いはない。


 ブラウンのゴーレムが腕を向けると地面から岩の壁が生成される。

 やっぱり地属性か。あの縞模様は……オニキス系……かな?


 ストラミネアの攻撃を防ぐために作ったのだろうが、遅い。

 それが完成する前にストラミネアの放った弾丸はアダマンタイトのゴーレムに直撃して、そのまま奥の壁に背中をめり込ませた。


 すごいな。そこまでいけるか。


 洞窟の中という風の精霊にとって力が出しにくい環境なのに……精霊核を取っ払って目に見えて出力が上がっている。

 ダンジョンの壁って普通の岩壁なんかよりもかなり頑丈に出来てるんだけど。


 次はわたしだ。

 圧力をかけた水でゴーレムたちを押し流す。

 鉄砲水だ。


 岩壁を作ったばかりのオニキスゴーレムと、透明なダイアモンドらしきゴーレムが思い切り流されていった。

 

 青いサファイアのゴーレムが腕を払うとそちらに向かった水は方向を変えた。

 その後ろから真っ赤なルビーゴーレムが全身に炎をまとわせながら突進してくる。

 燃え盛るゴーレムが腕を振るうと炎が帯となってこちらに向かってきた。


 同時に、チアとおりんが飛び出した。


 真っ黒な炎をまとい、文字通り炎の精霊となったおりんがチアを超える速度でルビーゴーレムに向かう。

 おりんは炎の帯が直撃するのを完全に無視して、そのまま赤いゴーレムの懐に潜り込んだ。


 おりんが手を触れた瞬間、ルビーゴーレムのまとった炎が消え失せる。

 相手の炎に干渉したようだ。


 腕で振り払おうとしたルビーゴーレムの背後に素早く回り込むと、おりんを見失っているゴーレムの核目がけて根元まで短剣を差し込んだ。


 まずは一体。


 近くにいたサファイアゴーレムが、おりん目がけて大量の水をまとわせた腕を叩きつけてきた。

 後ろに飛んで腕の直撃は避けたが、水がおりんを押しつぶそうと迫ってくる。

 それをおりんの放った炎がまとめて蒸発させた。

 

 炎はそのままサファイアゴーレムの腕をかすめ、熱に耐え切れなかったゴーレムの腕の表面にヒビが走った。


「んにゃー!」


 向こうも棒立ちじゃないんだから、それくらいはしかたないでしょ。


 そのまま接近したおりんの短剣が一体目と同じように青いゴーレムの核も刺し貫いた。

 ヒビも入れずに一直線に刺し貫いたところを見ると、刀身に熱を加えているようだ。


 これで二体。

 

 手際よく仕留めてるな。

 滑り出しは上々だ。


 こちらでは、アダマンタイトゴーレムにストラミネアが更に一撃を加えて壁に更にめり込ませている。

 それでもアダマンタイトゴーレムは何事もなかったかのようにすぐに抜け出てきた。


 そこにチアが正面から一撃を叩き込んだ。


 確認のためなのか、案外イケるんじゃないかと思っているのか、本気で斬りかかっている。

 衝撃でゴーレムがわずかにのけぞった。


「かったーい!」

「最初に言ったでしょ! 近寄りすぎ! 下がって!」


 鉄砲水に流された二体のジュエルゴーレムが起き上がった。

 オニキスゴーレムが光る腕を地面に叩きつけると、岩の棘が地面から次々と生えながらチアの方へ向かっていく。


 ダイアモンドゴーレムはチアに腕を向けると、腕の周りに渦巻いていた風を伸ばしてきた。

 横向きの竜巻のようなそれは、そのままストラミネアがねじれさせて方向を変える。


 さすがは風の精霊。


 チアの代わりに竜巻が直撃したオニキスゴーレムは、バランスを保てずにすっ転んだ。


 さすがに飛ばされはしないか。


 わたしはもう一方の腕からも風の竜巻を伸ばそうとしているダイアモンドゴーレムを狙って魔術を放つ。

 地面から飛び出した岩の杭がダイアモンドゴーレムを吹き飛ばし、こちらも仰向けになって地面に転がった。


 これで再度二体ともダウンだ。


 一応、岩の杭の先は傷を作らないように平らにしている。

 転んでいるだけでどちらのゴーレムにもダメージはない。

 

 おりんがすっ転んでいる二体のゴーレムを破壊するためそちらへ向かう。


 先程オニキスゴーレムの放った岩の棘は、後ろに下がってかわしたチアとアダマンタイトゴーレムの間をちょうど隔てていた。


 一部がアダマンタイトゴーレムにも当たっていたが、もちろんその程度でダメージを負ってくれるようなヤツじゃない。

 むしろ、ちょうどいいと言わんばかりに左右の腕で岩の棘を殴りつけ、飛び道具代わりにチアに向けて飛ばしてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ