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177  増えた女子会

 フィフィが軽くハープを鳴らすと、妖精のシアが珍妙な動きをしながらふらふら飛びまわり始めた。

 ぱっと見、酔っ払いの盆踊りという感じだ。


「メイレーン、何これ?」

「踊ってるんだと思います。姉様が演奏しているときもよくやっていますので」

「そ、そう……」


 踊りが下手な妖精もいるんだ……。

 妖精のイメージがちょっと崩れるな。


「妖精の踊り方も色々あるんですね」


 反応に困っているわたしを見て、おりんがさらっとそれらしいことを言ってフォローしてくれた。

 チアは変なのーと言いながら楽しそうにシアの真似をしている。


「姉様の時とはちょっと違う踊りですね」

「そうかしら。私にはよくわからないかな」


 メイセリアが首をかしげた。

 謎の動きにしか見えないので、多少変わったところでわたしも絶対に気付かない自信がある。

 わかるのはいつも一緒にいるメイレーンだからだろう。


「いつものはどんなのなのー?」


 踊りながらチアが聞いた。

 シアの酔っ払いダンスよりは動きにキレがあるので、チアのダンスは幼稚園のお遊戯会っぽい。

 これはこれでかわいくはある。 


「えーっと……口では説明しづらいですね。姉様、ヴィオリネ持ってきてませんでした?」

「一応持ってきていたけど、馬車に置いてきちゃったわね」

「もう姉様、何しにきたと思ってるんですか!」

「演奏にはきてなかったはずなんだけど……」

「そうでした! 遊びにきただけでした! ちょっと行ってきますね」

「それもちがうような……。私が取ってくるから、メイレーンは座ってなさい」


 取りに行こうとした妹をメイセリアが止める。

 家でもこんな感じなんだろうな。


 えっと、こういうときってどう呼べばいいんだっけ。

 

「パントス、いる?」


 ドアを開けて声をかけると、階段の下からすごい勢いで誰かが上がってくる気配がして、そのまま息一つ切らせずにスッとパントスが現れた。


「なんでございましょう」

「今、身体強化使って……いや、今はいいや。シェルグレード家の馬車からメイセリアの楽器を受け取ってきてもらえる? それと、御者さんに泊まりになるだろうからそう言っといて」

「承知しました」


 少しするとパントスが弦楽器を手に戻ってきて、それからすぐにジニーもやって来た。


「やほー。なんか男の人増えたんだね。ま、ああいう人がいた方が防犯的にいいか。聖女様だもんね」

「そんな感じ。ジニーに聖女様って言われるとなんか笑っちゃいそう」


 雑なあいさつを交わしながらジニーが部屋に入る。


「代わりにジニー様って呼んでもいいよ。なんか食べるものある? ……って、妖精とチアが……踊ってる?」


 今はメイセリアの弦楽器の音色に合わせてシアは謎の動きを繰り返していて、チアもそれを真似をして遊んでいる。

 やや疑問系寄りだったけど、一応踊ってるようには見えたらしい。


 メイセリアも宮廷楽師に推薦されてるだけあってさすがの腕前だ。


 ジニーはこちらが紹介するまでもなく、自己紹介しながらそのままメイレーンのところに行ってしまった。


「もしかして噂の妖精令嬢のメイレーン様ですか?」

「はい。妖精のシアと、メイレーン・シェルグレードです」

「なんか噂になってんの?」

「あったり前じゃない。妖精なんてちっちゃな子供がたまに見ることがあるくらいでしょ。いつも妖精を連れてる子がいたら、そりゃ注目の的よ」


 メイレーンは普通に学園にもシアを連れていっているらしい。


「妖精と心を通じ合える純真な乙女が入学してきたって、男たちが色めき立ってるんだから」


 同じクラスにいて見ていましたくらいの口ぶりだな。


 勢いがよすぎるところはあるけれど、友達びいきを差し引いてもメイレーンはよい子だし、シアとも仲良くやっているようなので、間違ってはいない。


「相変わらずよく知ってるねぇ」

「そりゃ、それが本業だし。ロロは逆に反応薄いね。冒険者やってると妖精ってわりと見かけるの?」

「いつから情報屋になったの。冒険者が見かけるかは知らないけど、シアはわたしが喚んだ妖精だから」

「……ホントに?」

「はい、本当ですよ。ロロさんが喚んでくれました」

「……なんかもう、最近の大きなニュースってほとんど全部キミら絡みなんじゃって気がしてくるよ」

「そんなこともないでしょ……」


 そうは言ったものの、まあまあ心当たりはあるな。


「ほんと? 実は噛みつくかぼちゃとか、ロロック村のねじりサルとかもロロだったりしない?」

「それは本気で知らない」


 よくわからないけど、普通に気になるので今度また教えてもらおう。


 それから少ししてアリアンナ姫も馬車で到着し、全員がそろった。


「今日はよろしくね。あー、もう遊んでるじゃない」

「アリアを待ってたんだよ。みんな、こちら友達のアリアね」


 パントスに案内されてやってきたアリアが早速文句をつけてくる。

 やっていたのは暇つぶしのババ抜きである。


「ア、アリアンナ様……?」


 誰が来るのかは言ってなかったので、メイレーンたちが驚いている。

 二人は当然ながら姫のことも知っていたようだ。


「今日はロロの友達のアリアですから、あまりかしこまらないでください」

「だってさ」

「やった、助かります。今日はよろしくお願いしますね。アリアンナ様も夕食まだですよね。これ、おいしいですよ」


 そう言われても遠慮がでてしまうところだろうけど、ジニーはあっさり普通に話しかけた。


 わたしやおりんは昔は貴族だし、メイレーン姉妹も普通にこの国の貴族だ。チアは面識があるし、妹のエライア姫と仲良しである。フィフィはハーフリングで元々この国の生まれでもない。

 子爵家勤めで貴族は身近にいるとはいえ、ジニーは生粋の地元のド平民である。

 メイレーンに話しかけていた時といい、本当に物怖じしない子である。


「ジニーもいたんですね。ロロは相変わらず見たことない食べ物を作ってるわね」

「あの辺りは好み分かれそうですけど、こっちのスープ無し麺はどれもおいしいですよ」


 勝手に感心していたら、アリアンナの反応は完全にジニーと面識があるそれだった。

 そういえば、化粧師のギルドの話や講習会でジニーもお城には出入りしている。その関係か。


 ちなみに、好みが分かれそうと言われたのは和食系の料理で、スープ無し麺とはパスタのことだ。

 麺はスープに投入するためのものという認識らしく、珍しい物扱いされてしまっている。


「会ったことあるんだ。それであんまり遠慮なかったんだね」

「お城で一回あいさつしただけだけどね」

「ほぼ初対面だった!」


 ジニーのメンタルの強さはともかく、遠慮しなくていい空気を作ってくれたのは正直助かる。


「じゃあ、そろそろ()るかな。メイセリア、曲のジャンルの希望とかある?」

「戦いや勝利をイメージするようなものがあればうれしいです。課題で国を守られた国王様を称える曲を作りますので」

「ん、おっけー。じゃあ、最初はその辺から」


 クラシックあたりからいくのがいいかな。

 威風堂々? フィンランディア?

 それとも、RPGのゲームメドレーなんかもよさげだろうか。


 そんなこんなで、人数も増えた最後のお泊りの夜が始まった。

 寝たり起きたりしながら、結局次の日の夕方まで遊んでいたけど。


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