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163  魔石を受け取る


 お披露目の最中に、おりんとチアにこっそり頼んでラウたちに声をかけてもらっておいた。

 神社の一室を借りて、翌日無事にラウに会うことができた。


「やっぱお前か。いや、大蛇退治の話を考えるとお前しかないんだけどよ……。今のちびのお前と、お披露目のお前はどっちが本当の姿なんだ?」

「今の方だよ。あっちは神様業やるとき用だね」

「便利なもんだな」


 今日来ているのはラウだけで、昨日一緒にいたコジロウの姿はない。


「コジロウさんは来なかったの?」

「実は昨日、お前のお披露目にこっそりと国王も来ていたんだ。何日も待っていたわけじゃないし、タイミングが合ったのは偶然なんだけどな。で、見事に二日酔いで一歩も動かせねえ。そっちをコジロウに任せてきた」

「はえー、そうだったんだ」


 フットワークの軽い人なのかな。

 たしかにちょっと見ていた感じ、昨日はラウとコジロウ以外にも何人かのグループで来ていた感じだった。


「気付いてなかっただろうが、お前とも話していたぞ。周りにばれるとややこしくなるから身分は明かしてなかったけどな」

「あー、そうなんだ」


 話しかけてきた中に、雰囲気的にお偉いさんかなって人が何人かいたのは覚えている。

 その中の一人だったのだろう。


「ざっと集まった魔石は持ってきたし、追加分もまだ手配中だ。この国は魔物自体多くないが、基本的には輸出品だから、仮に買い占めてもそんなに影響はない。それなりの量は集められるはずだ」

「うん、ありがと」

「……結構な量だがこの魔石の使い道は何か決まってるのか?」

「土地改良とか農業指導とか相談とか、その辺でかな。国中回るって言ってたじゃん」


 もらった魔石は日国(ひのくに)で土地改良や肥料作成などにまわそうと思っている。

 いちいち王国まで帰って地脈でマナを充電して戻ってくるなんてのも効率悪いしね。


「他の稲荷神にも助力してもらってたとかって話だったそうだから、その辺の関係か……。お前の個人的な報酬はいいのか?」

「今回、神様になったのがそれみたいなもんだからね」

「……なるほどなあ。まあ、お前がいいならそれでいいけどよ。一応、今日は代理ってことである程度の裁量を持たせてもらってるからな。他にも希望があれば言ってくれてかまわねえぞ」

「今のところはないかな。チアとおりんも大丈夫?」

「特にないですにゃ」

「うーん、だいじょぶ」


 おりんは即答したが、一瞬チアが考える仕草をした気がした。

 なにか食べたいものでもあったかな?


「前も思ってたけど、ラウって結構お偉いさん?」

「うん? ああ、血筋的に王家の血がちょっとばかし入ってんのさ。かなり遠いし、本当に少しだけどな」


 あー、そういう感じなのか。

 まあ、そういうことならこちらも堅苦しい役人や、顔を知らないお偉いさんなんかと交渉するよりはラウが窓口になってくれた方が気分的に楽だ。


「じゃあ、今後もなんかあったらラウに言えばいいね」

「一緒に戦って、酒飲んで飯食った仲だ。窓口役くらいならいつでも引き受けてやるぜ」


 わたしはお酒は飲んでないけどね。

 大蛇退治の時には酔っぱらったけど。


「そうそう。国王から、無事に被害なく大蛇退治ができたことの感謝と今回お前が神になったってことへの慶祝を伝えておけとさ」

「ああ、はいはい。どもども」


 さて、そういうわけで無事に魔石も受け取ったし、借りを返していかないとね。


「どこから回るつもりなんだ」

「話がすぐに伝わってそうな近場から適当に回っていく感じ。その辺は天柱稲荷様が指示くれてるよ。まあ、最初は酒蔵からなって言われてるけど」

「おお、いいじゃねえか。わかってるな!」

「正直、そっち方面の知識はあんまりないから、知ってる理屈だけ教えて頑張ってね、って感じだけどね」

「そうなのか?」

「自分で作るんなら魔術の応用でできるけど、作り方の話となるとね」


 一般的な知識しかないので、手取り足取りの指導なんてできっこないからね。




 それから数日後、天狐の言いつけ通りに酒造を回らされてから、足元から村を回り始めた。


 酒造についてはすぐに終わりだ。わたしの使った完成品を渡し、知識を伝えてそれ以上にできることはない。

 火入れ、(おり)関係についてあれこれ、吸着やろ過、蒸留酒のこと、知っている限りのことを話してあとは野となれ山となれである。


 何もヒントなしにやるよりはいいだろう、と割り切っておく。付きっきりであれやこれややっていると時間がいくらあっても足りない。

 錬金術の使える魔術師の一人でもいればまた話が違うんだけどね。


 おりんは護衛を兼ねてわたしのそばにずっといる。

 この国の魔石はすべてこの国のために使う予定で、つまりは戦闘用に使える魔石は手持ちがないままなのだ。


 チアがたぬきちに会いたいと言い出したんだけど、さすがに一人で行かせるわけにはいかないのでまだ我慢させている。


 限界をむかえていたおりんの体の再構築をしたとき、チアがひどい火傷で死にかけた。たぬきちはその時に助けてくれたお酒好きな不思議なたぬきだ。

 元々、大蛇(おろち)退治の際にチアが助けたたぬきだったんだけど、間違いなく神霊の類だろう。

 ちなみに、たぬきちという名前はわたしが勝手につけただけで、多分本当は立派な名前がある。


「少ししたら先に銀狐様の近くも回るようにするから、それからにしな。お酒と食べ物の用意もしておいてあげるから」


 お酒はこの前のお披露目の時にばらまいたので、また用意しなければもう手持ちは残っていない。


「ん-、じゃあラウさんとコジロウさんのところに行ってきていい?」

「別にいいけど、何かあった?」

「町のおいしいお菓子とか教えてもらおうと思って。ベルちゃんとか、セレナママとか、エル様とか、みんなへのお土産とかも」

「そういえば、観光的なことはしてなかったもんねぇ。いいよ、行ってきなー。わたしらも夜には帰ってくるし」


 前買ったものは適当に目についたお店で買ったもので、のんびりあれやこれや吟味したりはしていない。


「あとね、ちょっと戦ってみたいなーって」

「え?」

「いってきまーす」


 さらっと戦闘狂みたいなセリフが聞こえた気がしたけど、チアはそのままさっさと出かけて行った。


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