1 彼女の出発
翌日の日曜日。
前日のパーティーで精根尽きはてた俺達は、昼過ぎまで起きる事なく爆睡した。
そしてその日の夕方、沢凪荘から去る事になった姉ちゃんを、俺達沢凪荘の面々は、玄関まで見送った。
この一週間で家族のように仲良くなった矢代先輩は大粒の涙を浮かべ、姉ちゃんに抱きついた。
「うぅ、もうお別れなんてイヤやぁ」
そんな矢代先輩の頭を優しく撫でながら、姉ちゃんはこう返す。
「私も凄く悲しいよ。ここでの暮らしは、まるで自分の家みたいに楽しかったもの。
夏休みになったらまた遊びに来るから、そんなに泣かないで、ね?」
「うん・・・・・・」
姉ちゃんの言葉に矢代先輩は頷いたが、胸に埋めた顔を離そうとはしなかった。
そんな中沙穂さんが、姉ちゃんに声をかける。
「ぜひまた来てね。ここはあなたの新しいお家だから、いつでも帰って来ていいのよ?」
「はい、必ず帰ります、必ず」
姉ちゃんは沙穂さんにそう返すと、俺の方を見てニヤリと笑って言った。
「いや~それにしても、あんたもしばらく見ないうちに、いっぱしの男になったのねぇ。
父さんと母さんに、いい土産話ができたわ」
「何をそんなに大げさな事を言ってんだよ。俺は大して何も変わってねぇよ」
俺はそう言ったが、姉ちゃんは
「い~や」
と首を振ってこう続ける。
「あんたは大きく成長したわよ。何せ自分が愛する女の子を、身を呈して守ったんだからね」
「は・・・・・・はぁっ⁉誰が誰を愛してるだって⁉一体何の話だよ⁉」
「あ~ら、この期に及んでとぼける気?
あんたあの時はっきり言ったじゃないの。
『その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!』って」




