6 最後は結局こうなる
「あ、私達の事は気にしなくていいから、どうぞそのまま続けて」と姉ちゃん。
「な、何て深い愛だ。君達はそれほどまでに深い愛で結ばれていたのか!」とジル。
「あらあらまあまあ♡とうとうあなた達はそういう関係になったのね♡
それじゃあ今夜はここのホテルでお泊りね♡」と沙穂さん。
「そっかぁ、ついに結ばれたんやね。
もちろんウチは、お兄ちゃんとみっちゃんの仲を応援するで!」と矢代先輩。
「フン、まあ、いいんじゃないの?お似合いといえばお似合いよ、あなた達」と理奈。
何かもう、このまま死ねるなら死にたいです。
俺は心からそう思い、おそらく同じ気持ちの美鈴は、
「もう!ばかぁっ!」
と叫び、俺に強烈なビンタをくらわした。
「ぶへぁっ⁉」
プールに落ちた衝撃より、このビンタの方がよっぽど強烈だった。
そして美鈴は両手で顔を覆い、ものすごい速さでホテルの中へ駆けこんで行った。
その後を追うように、矢代先輩と沙穂さんと理奈が駆けて行く。
その場に残ったジルは俺の傍らに歩み寄り、真剣な口調で言った。
「今回の決闘、どうやら僕の負けのようだ。
もしあの状況に置かれた時、僕も君と同じ行動ができたかは、正直自信がないからね」
すると背後から歩み寄って来た姉ちゃんが、得意げな口調で言った。
「そりゃあ私の弟だもの。好きな女の子を体を張って助けるくらい、朝飯前よ!」
「あの、そういう恥ずかしい事言うのやめてくれない?」
俺はそう言ったが、姉ちゃんは事もなげにこう返す。
「あら、あんたプールに落ちる前、もっと恥ずかしいセリフを言ったわよ?
『その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!』って」
「うああああっ⁉やめてくれよ!あの時は無我夢中だったんだよ!」
「その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!」
「何で二回言うんだよ⁉頼むからやめてくれ!」
「後で美鈴ちゃんにちゃんと聞こえたか確認しておくわね」
「お願いだからやめてください!」
と、俺と姉ちゃんが言い合っていると、ジルは薄い笑みを浮かべ、俺達に背を向けて言った。
「こんな立派な紳士が弟に居るんじゃあ、僕なんかは到底美咲に釣り合わないな。
この現実を受け入れて、僕は美咲を諦める事にするよ」
そしてジルはゆっくりとホテルの方へ歩き出す。
するとそんなジルの淋しげな背中に、姉ちゃんが軽い口調で声をかけた。
「ま、イギリスに帰ったら、一回くらいデートしてあげてもいいわよ?
私みたいな気まぐれでワガママな女でよければ、ね」
その言葉を聞いて振り向いたジルの顔には、闇の中に一筋の光が差したかのような希望の色が浮かんでいた。
やさしいそよ風が吹き、プールの水面をおだやかに揺らす。
そこには綺麗なお月さまが、プカプカと気持ちよさそうに泳いでいた。




