表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第五話 美鈴の行方とパーティーの結末
60/62

6 最後は結局こうなる

 「あ、私達の事は気にしなくていいから、どうぞそのまま続けて」と姉ちゃん。

 「な、何て深い愛だ。君達はそれほどまでに深い愛で結ばれていたのか!」とジル。

 「あらあらまあまあ♡とうとうあなた達はそういう関係になったのね♡

それじゃあ今夜はここのホテルでお泊りね♡」と()()さん。

 「そっかぁ、ついに結ばれたんやね。

もちろんウチは、お兄ちゃんとみっちゃんの仲を応援するで!」と矢代(やよ)先輩。

 「フン、まあ、いいんじゃないの?お似合いといえばお似合いよ、あなた達」と理奈(りな)

 何かもう、このまま死ねるなら死にたいです。

俺は心からそう思い、おそらく同じ気持ちの美鈴(みすず)は、

 「もう!ばかぁっ!」

 と叫び、俺に強烈なビンタをくらわした。

 「ぶへぁっ⁉」

 プールに落ちた衝撃より、このビンタの方がよっぽど強烈だった。

そして美鈴は両手で顔を(おお)い、ものすごい速さでホテルの中へ駆けこんで行った。

その後を追うように、矢代先輩と沙穂さんと理奈が駆けて行く。

 その場に残ったジルは俺の(かたわ)らに歩み寄り、真剣な口調で言った。

 「今回の決闘、どうやら僕の負けのようだ。

もしあの状況に置かれた時、僕も君と同じ行動ができたかは、正直自信がないからね」

 すると背後から歩み寄って来た姉ちゃんが、得意げな口調で言った。

 「そりゃあ私の弟だもの。好きな女の子を体を張って助けるくらい、朝飯前よ!」

 「あの、そういう()ずかしい事言うのやめてくれない?」

 俺はそう言ったが、姉ちゃんは事もなげにこう返す。

 「あら、あんたプールに落ちる前、もっと恥ずかしいセリフを言ったわよ?

『その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!』って」

 「うああああっ⁉やめてくれよ!あの時は無我夢中だったんだよ!」

 「その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!」

 「何で二回言うんだよ⁉頼むからやめてくれ!」

 「後で美鈴ちゃんにちゃんと聞こえたか確認しておくわね」

 「お願いだからやめてください!」

 と、俺と姉ちゃんが言い合っていると、ジルは(うす)い笑みを浮かべ、俺達に背を向けて言った。

 「こんな立派な紳士が弟に居るんじゃあ、僕なんかは到底(とうてい)美咲(みさき)に釣り合わないな。

この現実を受け入れて、僕は美咲を(あきら)める事にするよ」

 そしてジルはゆっくりとホテルの方へ歩き出す。

するとそんなジルの(さみ)しげな背中に、姉ちゃんが軽い口調で声をかけた。

 「ま、イギリスに帰ったら、一回くらいデートしてあげてもいいわよ?

私みたいな気まぐれでワガママな女でよければ、ね」

 その言葉を聞いて振り向いたジルの顔には、闇の中に一筋の光が差したかのような希望の色が()かんでいた。

 やさしいそよ風が吹き、プールの水面(みなも)をおだやかに()らす。

そこには綺麗なお月さまが、プカプカと気持ちよさそうに泳いでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ