表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第一話 御撫の里に美咲来る
6/62

3 留学生が、来るらしい

 その日の昼休み、俺は一人で御撫高校の学食へ行き、本日の日替わりランチであるチキン南蛮(なんばん)定食を食べていた。

すると正面の席に、

 「この席いいかしら?」

 という声と共に、絹のようにつややかな黒髪を背中までのばした、生まれた時代が中世ヨーロッパであれば、女王にでもなっていそうな美貌(びぼう)とオーラを兼ね備えた女子生徒が現れた。

彼女の名前は尾田(おだ)清子(きよこ)

御撫(みなで)高校新聞部の部長で、その美貌から、

「ミナ高三大美女」

の一人に数えられ、そのあまりに明晰(めいせき)すぎる頭脳から、

「ミナ高の裏の生徒会長」

とも呼ばれている。

誰もが見とれる美人だが、その一方で油断ならないお方でもある。

この人には今まで何度か助けられている(?)けど、俺は正直この人が苦手だった。

 そんな事を考えていると、尾田先輩は野菜炒め定食が乗ったお盆をテーブルに置き、俺の正面の席に腰かけた。

そしてこの人独特の、人の心を見透(みす)かすような笑みを浮かべてこう言った。

 「あなたの周りは相変わらず(にぎ)やかそうね」

 それに対して俺は、慎重に言葉を選びながらこう返す。

 「まあ、毎日賑やか過ぎるくらい賑やかですね」

 「いい事じゃないの。それだけ毎日が充実してるって事だもの」

 「そうなんですかねぇ」

 尾田先輩の言葉に俺はため息交じりにそう返すと、尾田先輩は少し目を細めて言った。

 「ところで今度、この学校にイギリスから留学生がくるそうよ」

 「へぇ、そうなんですか」

 「一週間ほどの短期留学だそうだけど、稲橋(いなはし)君知ってる?」

 「いえ、知らないです。俺は尾田先輩みたいに、色んな情報に精通してないんで」

 実際尾田先輩の情報網はとてつもなく広くて深い。

一体どこから仕入れてくるのか知らないが、あらゆる情報を誰よりも早くキャッチするという、まさに新聞部部長にふさわしい(?)能力を備えているのだ。

そんな尾田先輩は、(いた)ってさりげない口調でこう続けた。

 「(さわ)(なぎ)(そう)に住むのかしら?」

 「え?」

 尾田先輩の言葉に頓狂な声を上げる俺。

 「いや、そんな話は聞いてませんけど、イギリスからわざわざやって来る留学生なら、あんな古い木造の学生寮より、本館の学生寮に入ってもらうんじゃないんですか?」

 俺はそう言ったが、尾田先輩は

「ふぅん」

と意味ありげに言っただけで、後は話題を変え(最近沢凪荘で何か面白い出来事は起こっていないかとか)、その話題には触れなかった。

 一体、何なんだ?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ