4 決死のダイブ
美鈴は部屋の奥のバルコニーの柵側に立ち、おびえた顔で立ちすくんでいる。
そしてその正面に立ちふさがるように、こちらに背を向けてバスローブを着た大柄な男の姿があった。
「美鈴!」
俺は考えるより先に叫んだ。
その声にバスローブの男が振り返る。
男は酔っ払っているのか、真っ赤な顔をして、酒臭い息を吐き、怒りに満ちた目で言った。
「なんだぁお前は?せっかくこれからお楽しみだってのに、邪魔するんじゃねぇよ!」
その言葉にカチンときた俺は、後先考えずにこう叫んだ。
「その子は俺の女だ!今すぐ返しやがれ!」
しかし男はいやらしい笑みを浮かべてこう返す。
「はあ?知らねぇなぁ。大体こちらのお嬢さんが俺の部屋に来たんだから、双方合意の上って事だろうが?」
「違う!私、お酒に酔って、意識がもうろうとしながら廊下を歩いてて・・・・・・
気がついたらここに連れ込まれていたの!」
「なんだとう⁉廊下に倒れていたお前を介抱してやった恩人に何だその言い草は⁉」
男は怒りに任せてそう言い、乱暴に美鈴の手首をつかむ。
「きゃあっ!」
美鈴の悲鳴を聞いた俺は、頭の線がプツンと切れた。
そして一直線に男に殴りかかった。
「てんめぇっ!」
「ああっ⁉やんのかこの野郎!」
男は美鈴の腕を払い、俺の方に向き直った。
と、その時、美鈴が後ろによろめき、柵を越えてバルコニーから落下した。
「え?」
声を上げる美鈴。
気がつくと、俺も美鈴と一緒にバルコニーの柵を飛び越えていた。
反射的に美鈴を助けようとしたのか。
よし、ナイス判断だ、俺の条件反射。
「うぉああああっ!」
俺は必死に美鈴を抱きよせ、気合で美鈴の下にもぐりこんだ!
これで少しはクッションになるだろ!ていうかここって何階だっけ?
十階?
ああ、死ぬな俺。
こんな事ならちゃんと告白しとけばよかったなぁ。
バルコニーから顔を出す姉ちゃんの姿が、ものすごいスピードで遠ざかって行くのが見えた。
姉ちゃん、決闘に勝てなくて、ごめんな・・・・・・。
ドッボーン!




