3 美鈴!
「な、何だよいきなり⁉」
俺が聞くと、姉ちゃんは柵越しに屋上の下を指さして言った。
「美鈴ちゃん居たわよ!ほら、あそこ!」
姉ちゃんに言われて俺も柵越しに屋上の下を見下ろすと、はるか下の階にあるバルコニーに、美鈴の姿が見えた。
そしてよく見るとその正面に、バスローブを着た男の姿もあった。
「ちょっと誰よあれ⁉もしかして美鈴ちゃんの彼氏⁉
もしくはパーティーで口説かれて、こっそり抜け出したとか⁉
残念だったわね聖吾!でも失恋したからってこの屋上から飛び降りちゃだめよ!」
「色々ぶっ飛んだ話はやめろよ!とにかく何か変だよあの状況⁉今すぐ美鈴を助けに行くぞ!」
俺はそう言うと同時にホテルの中に戻った。
後を追う姉ちゃんが俺に声をかける。
「ねえ、あのバルコニーって、おそらく客室に設置されてるやつよ。
部屋の鍵がなきゃ入れないわ!」
「えぇ?じゃあどうするんだよ?
美鈴はもしかしてあの男の部屋に連れ込まれて、襲われそうになってるんじゃないのか⁉」
「しょうがないわね、あいつに頼みごとをするのは気が進まないけど、背に腹は代えられないわ」
姉ちゃんはそう言うと、俺をつれてパーティーホールに居たジルの元に戻り、
事情を説明し、その部屋の合鍵を用意してもらうようお願いした。
ジルはこのホテルチェーンを束ねる財団の御曹司だし、これくらいの無理はホテル側も聞いてくれるだろう。
ジルはそのお願いを速やかに承知してくれて、ホテルに掛け合い、その部屋のものであろう合鍵のカードキーを手に入れた。
そして俺と姉ちゃんとジルは一目散にその部屋に向かい、ドアの前に立った。
「ここで間違いないんだな?」
ジルの問いかけに俺と姉ちゃんは頷く。
屋上で撮影したバルコニーの写真をホテルの人に確認してもらい、
部屋の場所を特定してもらったので間違いはないだろう。
ジルはカードキーでドアのロックを解除し、間髪入れずにそのドアを開け放った。
するとそこに、居た!
美鈴とさっきのバスローブの男!




