1 美鈴はイズコ?
「美鈴が居なくなったって?」
俺が聞き返すと、矢代先輩は頷いて続けた。
「ウチ、みっちゃんが酔っ払って倒れたってリナリンに聞いて、教えてもらった救護室に行ってみてん。
そしたらそこに居た救護係の人が、ちょっと目を離した隙に居らんくなってしもうたらしくて。
ここの会場めっちゃ広いし、きっと迷子になってしもうたんやわ」
するとそれを聞いた姉ちゃんは
「それは一大事ね!」
と叫んで踵を返し、俺の腕を掴んで言った。
「それじゃあ今すぐ美鈴ちゃんを探しに行くわよ!聖吾、ついて来なさい!」
「おお?おお」
俺が引っ張られるようについて行こうとすると、それを見たジルがあわてて呼び止めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ美咲!
このホテルから出ていないなら必ず見つかるし、そんなに慌てなくても大丈夫だよ!
それより僕と美咲の将来は――――――」
「あんたとの将来より美鈴ちゃんの方が百億倍大事よ!
あの子は今お酒を飲んで酔っ払っているのよ⁉
まだ意識がもうろうとして、下手をすれば階段から落ちたりするかもしれない!
そうなる前に探しださなくちゃならないわ!」
姉ちゃんが、何とかジルの申し出を先延ばしにしようとしてるのはバレバレだったが、美鈴が心配なのも事実だ。
俺は矢代先輩にここに居るよう告げ、まだ何か言いたそうなジルをほっといて、会場の外に駆けだした。
廊下はどこまでも長く続き、あらゆるところで別れていて、確かに迷子になってもおかしくはない。
俺と姉ちゃんは必死に色んな場所を探したが、
トイレにも、階段にも、違うパーティーホールにも、
どこにも美鈴の姿は見当たらなかった。




