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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第一話 御撫の里に美咲来る
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2 矢代はいつもご機嫌

 俺は自転車に乗り、後ろに矢代(やよ)先輩を乗せ、御撫(みなで)高校へペダルをこぎだした。

今日は少し早く(さわ)(なぎ)(そう)を出たからゆっくり行こうと矢代先輩が言うので、

俺はのんびりしたペースで自転車を走らせる。

 俺達が住む御撫(みなで)(ちょう)は、山と田畑に囲まれた田舎町。

五月も半ばになり、山の緑は一層濃くなり、様々な花がツボミをつけだしている。

普段はあまり意識しないけど、こうしてのんびり自転車をこいでいると、道端にもいろんな花や草木が生えていてるのがわかる。

色も形も大きさも様々。

そのひとつひとつに命が宿っていて、一生懸命生きてるんだろうなぁという事は、

草花の名前なんか全然知らない俺でも何となく感じる。

そんな事を思っていると、後ろの矢代先輩がご機嫌な口調で言った。

 「この辺のお花もすっかり咲いてきたなぁ。

ねぇお兄ちゃん、今度ミナ高の裏山に、みっちゃんや()()さんと一緒にピクニックに行けへん?

あそこはもっといっぱいきれいなお花や森があるから、きっとめっちゃ楽しいで!」

 「そうですねぇ、でも美鈴(みすず)は行くって言うかなぁ?」

 「行くに決まってるよ絶対!だってみんな一緒ならメチャクチャ楽しいに決まってるもん!

そんで夏になったらみんなで海に行って、

御撫神社(別名鬼(おに)(まつ)神社)のお祭りに行って、楽しい事が目白押(めじろお)しや!」

 「いいですねぇ」

 心底楽しそうな矢代先輩の言葉に、俺の顔も自然とほころぶ。

この人は本当に無邪気(むじゃき)で素直で、まぶしいくらいにピカピカな心根を持っている(無類のいたずら好きでもあるが)。

そんな矢代先輩は、一転してしみじみした口調になって言った。

 「ホンマに、こんな楽しい時間が一生続けばええなぁ」

 そんな矢代先輩に、俺はあえていたずらっぽくこう返す。

 「そうですか?俺はもう結構お腹いっぱいって感じですよ?」

 すると矢代先輩は俺の背中をバシバシ(たた)きながらこう言った。

 「まだまだ楽しい事はこれからやの!もっともっといっぱい、皆で楽しい思い出つくるんやからね!」

 「わかりましたよ先輩。わかりましたから、そんなに背中を叩かないでください」

 しかし矢代先輩は勢いに任せて、俺の背中をバシバシ叩き続けた。

 「痛い痛い!」



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