19 沢(さわ)凪(なぎ)荘(そう)に来て、最も思い出深かったエピソード
なので自分の部屋へ向かっていると食堂の方から、沙穂さんのエロオヤジ全開の声が聞こえた。
「うふふふ♡それじゃあ私も美鈴ちゃんの採寸のお手伝いをしますね♡」
「いえ、いいです。激しく遠慮します」
「そんな事言わずに♡後で理奈お嬢様の採寸もしましょうね♡」
「何で私の採寸をするのよ⁉っていうか何であんたはそんな変態みたいな目つきをしてるのよ⁉」
「そんな事ありませんよ♡」
その後の展開は何となく想像できるけど、まあ、それは気にしないでおこう。
俺は自分の部屋で浜野さんに服の採寸をしてもらい、矢代先輩が呼びに来てくれたところで、再び食堂に戻った。
食堂では美鈴と理奈がやけにぐったりした様子でちゃぶ台につっぷしており、
その傍らに、至極満ち足りた表情の沙穂さんと、
やけに楽しそうにニヤニヤしている姉ちゃんが立っていた。
その光景を見た俺は姉ちゃんに尋ねた。
「何となく想像はできるけど、一体何があったんだ?」
すると沙穂さんが両手を自分の頬にあて、ホゥッとため息をついてつぶやいた。
「いたいけな乙女の秘密を、色々と堪能させてもらったの♡」
「ああ、そうですか・・・・・・」
その言葉で大体状況が分かった俺は、それ以上は聞かない事にした。
この出来事を後に姉ちゃんは、
『沢凪荘に来て、最も思い出深かったエピソード』
として語る事になるが、姉ちゃんも沙穂さんと一緒に色々と堪能したようだ。
そんな中理奈は墓から這い出すゾンビのように立ち上がり、消耗しきった様子で浜野さんに言った。
「それじゃあ必要なデータは取ったし、さっそく今から屋敷に戻ってドレス制作を始めるわよ。
浜野、すぐに車の用意をしなさい」
「かしこまりました!」
浜野さんはそう言い、
「それでは皆さん、失礼します!」
とお辞儀して食堂を出て行った。そして理奈も、
「今夜中にドレスを仕上げてくるから、楽しみにしていなさいよ!」
と、美鈴と姉ちゃんに言い放ち、沢凪荘を去って行った。
理奈の奴、徹夜でドレスを仕上げる気か。
メチャクチャ気合い入ってるじゃねぇか。
と感心していると、姉ちゃんが悪い顔をして俺に言った。
「美鈴ちゃんのスリーサイズ、こっそり教えてあげようか?」
「・・・・・・・・・・・・いらんわい!」
そんなもの・・・・・・興味ないんだからね!




