表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第三話 英国からの求婚者
34/62

10 美咲の理想の男

 「美咲(みさき)

 「いやよ」

 姉ちゃんは一秒待たずにそう答えた。

 「まだ名前を呼んだだけじゃないか」 

 ジルが苦笑いすると、姉ちゃんはプイっとそっぽを向いて言った。

 「その先の言葉は聞くまでもないわ。言わなくて結構。

今までにも散々聞いてきたしね。答えは今でと同じよ。

私はあんたの愛の申し出を受け入れるつもりはないわ。これからもずっとね。

だから(いさぎよ)くイギリスに帰ってちょうだい。以上よ」

 「まいったなぁ」

 ジルは本当に参ったという様子で頭をかいた。

が、ここまで言い張る姉ちゃんを説得するのは、俺の経験上不可能と言って差し(つか)えない。

もう(あきら)めた方がいいんじゃねぇのか?

と俺は思ったが、しかしジルはすがるように言った。

 「本当に一パーセントも望みはないの?」

 「ないわ」

 姉ちゃんの言葉はにべもなかった。

が、ジルは(なお)も食い下がる。

 「じゃあ美咲の理想の男というのはどんな人物なんだい?

具体的に好きな男が居るのかい?

もしかしてすでに愛を(ちか)い合った相手が居るとか?」

 そう言われた姉ちゃんは、目をつむって眉間(みけん)にしわを寄せた。

ちなみにこれは、姉ちゃんには愛を誓いあった相手なんか居ないし、

具体的に好きな男も思い()かばないし、

理想の男なんてロクに考えたこともない。

自分のやりたい事をやりたいように突き進んできたせいで、

恋愛(れんあい)沙汰(ざた)をすっかりおいてけぼりにしてしまっていた。

が、年頃の娘が全くそういう事に頓着(とんちゃく)がありませんでしたとはさすがに言いにくいので、返答に困っている。

姉ちゃんのこの顔は、そういう顔なのだ。

姉弟(きょうだい)ゆえにわかってしまう姉の胸の内が、弟の俺には(かえ)って心苦しかった。

でもそれを姉ちゃんに代わってジルに伝える訳にもいかないし、

ここは姉ちゃん本人に何とか切り抜けてもらうしかない。

 そんな中姉ちゃんが、(しぼ)り出すように言った言葉はこれだった。

 「愛を誓い合った相手は、居ないわ。だけど、私の理想の男は、居るわ」

 「へぇ、それはどんな男だい?」

 ジルが(うす)い笑みを浮かべて(たず)ねると、姉ちゃんは何故が俺の方をちらっと見やってこう言った。


 「それはね、ここに居る、弟の(せい)()よ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ