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沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第三話 英国からの求婚者
27/62

3 尾田先輩、色めく

 「またややこしい事に巻き込まれているみたいね」

 その日の放課後。

掃除当番で校舎の階段の(おど)り場を掃除していると尾田(おだ)先輩が現れ、さも愉快(ゆかい)そうな顔でそう言った。

それに対して俺はげんなりした顔でこう返す。

 「別に巻き込まれたくて巻き込まれてる訳じゃあないんですけどね。

こっちはホントにいい迷惑ですよ」

 「あらそう?私にはとても楽しそうに見えるけど」

 「楽しそうにしてるのは尾田先輩でしょうが」

 俺はややトゲのある声で言ったが、尾田先輩は全く意に介さない様子でこう続ける。

 「ところであなたのお姉さんにゾッコンの彼だけど、随分(ずいぶん)お金持ちのおぼっちゃんのようねぇ」

 「そうですね。何とか財団の次期頭首(とうしゅ)とか言ってました。そんなにすごい金持ちなんですか?」

 「そうね、ジェラード財団といえば、イギリスを拠点(きょてん)に、ホテル、飲食、自動車、造船等、様々な業界で成功を収めている大グループよ。

今通っているグレートブリテン王立大学でも成績は優秀で、

ジェラード財団の次期頭首としてふさわしい人物と言われているわ」

 「へぇ~そんなすごい人なんですか。どうりで自信に満ち(あふ)れていた訳だ。

でも、そんないいところの御曹司(おんぞうし)が、どうしてうちの姉ちゃんを追いかけまわすんですかねぇ。

ガサツでおおざっぱで強引で、自分の生きたい道を突っ走るような人なのに」

 「さあ、それはその人の好みなんでしょうけど、はるばるこんな田舎町まで追いかけてくるところを見ると、そういい加減な気持ちでもないんじゃない?」

 「でも姉ちゃんは心底あの男の事を嫌っているみたいだし、俺もあの人の事はあんまり好きになれそうにないですよ」

 俺がため息交じりにそう言うと、尾田先輩は絹のような黒髪をかきあげて言った。

 「まあどちらにしろ、明日のミナ高新聞の一面は決まりね。『御撫(みなで)高校に英国からの求婚者現る!』」

 「えぇっ⁉この事新聞に書くつもりですか⁉」

 「当たり前じゃないの。こんなにスキャンダラスな話を記事にしなくてどうするの。

それにあれだけみんなの前でド派手にやらかしたんだから、ほぼ全校生徒が知っているわよ」

 「た、確かに、今更(いまさら)内緒になんてできないですよね・・・・・・」

 「そういう事。あなたにはいろいろ貸しがあるし、たまにはこういう形で返してもらわないとね」

 そう言って(あや)しい笑みを()かべる尾田先輩。

なんだか利子が大きすぎる気がしないでもないが、それはそれで納得するしかなさそうだ。

俺はひとつ息をつき、頭をかきながら言った。

 「それにしても、いつもながら情報が早くて正確ですね。一体どこから仕入れてくるんですか?」

 「うふふ、知りたい?」

 「いえ、やっぱり遠慮しときます・・・・・・」

 にっこり微笑(ほほえ)んで尾田先輩にそう言われると、(かえ)ってそれ以上つっこめない俺だった。

 「それじゃあね、困った事があったらまたいつでも相談してね」

 尾田先輩は右手をヒラヒラさせてそう言うと、軽い足取りで階段を下りて行った。

 「相談というか、尾田先輩が俺の事を探っているんじゃないのか・・・・・・」

 そう一人ごちていると、心底げんなりした様子の姉ちゃんが、ヨロヨロした足取りで上の階から下りて来た。



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