2 先生は、しっかり話をかきまわす
「あの、先生、今すごく話がややこしくなってるんで、ちょっとさがってもらっていいですか?」
しかし鏡先生は胸を張ってこう返す。
「心配するな稲橋!話は大体わかった!ここは先生に任せろ!」
本当か?
大丈夫か?
不安しか湧いてこない俺をよそに、鏡先生はビシッとジルを指さして叫んだ。
「おい貴様!はるばる遠い地からプロポーズをしに来たようだが、それは無駄だ!
彼、稲橋聖吾が愛し合っているのはこの私、鏡左京だからな!
だから彼の事はあきらめてもらおう!」
それ見ろますます話がややこしくなったわい!
「何だ?美咲の弟はそういう趣味だったのか?
まあ、他人の趣味をとやかくいうつもりはないが」
と、ジルはあっさり納得したが、それでは非常に困る俺はヤケクソに声を荒げた。
「とーにーかーくっ!今はまだ授業中なんだよっ!
あんたも色々姉ちゃんに言いたい事があるだろうけど、とりあえず今はいったん帰ってくれ!
話は今晩にでも好きなだけしてくれりゃあいいから!
それから鏡先生!とにかく黙ってあっち行ってください!」
俺はそう言って鏡先生を校舎の方へ押しやり、その様子を眺めていたジルは、やれやれという様子でこう言った。
「まあ、時間はいくらでもある事だし、ここはひとまず君の意見を受け入れてあげるよ。
美咲、また来るよ。それまでに僕のプロポーズを受ける準備をしていておくれ」
そしてジルは美咲に投げキッスをし(そして姉ちゃんは俺を盾にしてそれを受け止め)、ヘリに乗りこんで飛び去って行った。
辺りは再び静寂に包まれ、校庭には俺と姉ちゃんがポツンと取り残された。
何か、フルマラソンを完走したくらいに疲れた(完走した事ねぇけど)。
そして姉ちゃんの方に視線をやると、姉ちゃんは
「ああもう!」
と、いらだたしげに頭をかいていた。
何か、またややこしい事に巻き込まれちまったなぁ・・・・・・。




