14 ヘリでお出迎え
そんな事を考えながら、俺は窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。
校庭では体育の授業の生徒がサッカーをしている。
空は爽やかに晴れ渡り、
何羽かの鳥が気持ちよさそうにそこを飛びまわり、
そのはるか向こうに、一機のヘリコプターが飛んでいた。
そのヘリコプターは、気のせいかこちらに近づいてくるように思えた。
ヘリコプターってあんなに低い所を飛ぶんだっけ?
と思えるくらい、そのヘリコプターはどんどん高度を下げていた。
が、別にトラブルで墜落しそうという様子でもない。
が、まっすぐこちらを目指して飛んできているのは確かだった。
まさか、こっちへ向かっているのか?
そんな俺の予想の通り、ヘリコプターは御撫高校へ向かって飛んできていた。
近づくにつれ、ファタファタというプロペラの音も大きくなってきた。
そしてヘリコプターはとうとう御撫高校上空まで到達し、
そこから飛び去る様子もなく、空中で待機している。
それに気づいた他の生徒達も窓際に張り付き、上空で飛び続けるヘリコプターを見上げた。
「何だ何だ?」
「ヘリだよヘリ!」
「こら!授業中だぞ!」
生徒や先生の声が上がり、教室の中がとたんに騒がしくなる。
するとそのヘリコプターがゆっくりと校庭に向かって高度を下げ、着陸の態勢に入った。
校庭でサッカーをしていた生徒達は慌てた様子でワラワラと逃げて行き、
誰も居なくなった校庭に、ヘリコプターはゆっくりと着陸した。
プロペラの風圧で校庭の砂が激しく舞い上がり、
花壇の草木が揺れ、窓がガタガタと鳴った。
こうなるとさすがに先生も窓に張り付き、一体何事かと外の様子に釘付けになっていた。
そんな中ヘリコプターのプロペラはゆっくりと止まり、辺りは一瞬にして異様な静けさに包まれた。
そしてヘリの側面のドアが開き、そこから一人の人物がゆっくりと、
やけにもったいぶったような足取りで現れた。
その人物は金髪の若い男だった。
ここは校舎の三階なのではっきりした姿は見えないが、どうやら外国人のようだ。
真っ青な派手なスーツに身を包み、右手には拡声器を持っている。
そして男はその拡声器を口元にあて、
キーンというノイズ混じりの声で、
しかしはっきりとこう言った。
「美咲!迎えに来たよ!」
美咲、と、その男は確かにそう言った。
美咲は俺の姉ちゃんの名前である。
と、いう事は、あの男は姉ちゃんの知り合いなのか?
それにしても迎えに来たってのはどういう事だ?
と考えていると、ヘリのプロペラの音でも全く起きなかった姉ちゃんが、
その声を聞いたとたんにガバッと立ち上がった。
そして窓からその男の姿を見るなり、
「げっ!」
と声を上げる。
その表情は露骨に強張っており、姉ちゃんにとってあの男は招かれざる客なのだと、直感でそう思った。
すると姉ちゃんはいらだった様子で頭をかきむしり、
「こんな所まで追いかけて来るなんて、どういう神経してんのよ?」
とつぶやいたかと思うと、
「行くわよ!」
と叫び、俺の右腕をつかみ、教室の外へ連れ出そうとする。
「ちょ⁉どうしたんだよ姉ちゃん⁉一体何がどうなってんだよ⁉」
まだ状況が飲み込めない俺はそう口走るが、姉ちゃんは
「来れば分かるわよ!」
と一括し、俺をグイグイ引っ張って行く。
一体何が起こってるんだ?
これから一体、何が始まるんだよ?




