表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第二話 姉、御撫の学び舎に立つ
23/62

13 彼女との思い出

 その日の昼過ぎ、俺は学校の教室で午後の授業を受けていた。

姉ちゃんは転校二日目にしてすっかりクラスの皆と打ち解け、ここでの学校生活を満喫(まんきつ)しているようだ。

逆に俺は姉ちゃんに何かと振り回され、美鈴(みすず)には何故か冷たい目で(にら)まれ、

クラスの男子どもには姉ちゃんのプライベートなアレコレを聞かれ(スリーサイズとか好きな男のタイプとか)、精神的にも体力的にもクタクタになっていた。

 俺は日常に、ドラマティックな刺激を求めるタイプではない。

普通に学校へ行き、適当に勉強して、放課後にアルバイトに精を出し、帰って飯食って寝る。

そんな平々凡々な毎日を過ごせればそれでいいと思っているのだが、現実はそう思い通りにはなってくれない。

それに対して自分の思い通りに現実を生きているであろう姉ちゃんは、俺の後ろの席でグースカと授業中の居眠りに勤しんでいた。

 はぁ~、結局この歳になっても、俺は姉ちゃんに振り回されるんだなぁ。

 そう思うと、果てしなく長くて深いため息が()れ出る。

そして俺の脳裏(のうり)に幼少の頃の姉ちゃんとの思い出(という名の苦悩の日々)が(よみがえ)る。

 近所の野良猫に(姉ちゃんが)石をぶつけ、(俺が)追いかけまわされたり、

(姉ちゃんが)近所のガキ大将にケンカを売り、(俺が)そのガキ大将と決闘するハメになったり(そのガキ大将に俺はボコボコにされたが、その後姉ちゃんがそのガキ大将をボコボコにした)、

裏の怖い(じい)さんの盆栽(ぼんさい)に(姉ちゃんが)サッカーボールをぶつけて壊し、逃げ遅れた俺がしこたま怒られたり・・・・・・。

大体姉ちゃんが何か悪さをして、

それに俺が巻き込まれ、尻拭(ぬぐ)いもさせられ、

おいしいところは姉ちゃんが持って行くというパターンだった。

 おかげで少々理不尽(りふじん)な事や困難な状況に(おちい)っても、俺はそれを受け入れる根性と体力(そして(あきら)めと妥協(だきょう)

する心)を身につけた。

それはある意味よかったのかも知れないが、あの幼少の頃に戻りたいなどというセンチメンタルな思いは、俺には微塵(みじん)もない。

姉ちゃんは(さわ)(なぎ)(そう)に来てから三回ほど

「あ~っ、あの頃に戻りたいっ」

としみじみ言ったが、俺はいずれもそれをお断りした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ