表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沢(さわ)凪(なぎ)せ女(にょ)り~た4  作者: 椎家 友妻
第二話 姉、御撫の学び舎に立つ
16/62

6 尾田先輩とご対面

 「あのなぁ、いくら何でも初日から堂々と居眠りしすぎだろうが。

ちっとは身内のメンツってもんを考えてくれよ」

 その日の昼休み、学食へ向かいながら、俺は隣を歩く姉ちゃんに(うった)える。

が、姉ちゃんは何ら悪びれる様子もなくこう返す。

 「だってぇ、時差ボケがまだ抜けきらないんだもん。

それに高校レベルの数学や科学はほぼ完全に分かるから興味ないし。

あ、でも、国語や日本史は興味あるわよ?日本の勉強は日本でするのが一番だもんね」

 「とにかく、これからはもう少しちゃんと授業を受けてくれよ。

一応特別留学生って事になってんだからな」

 俺の言葉に姉ちゃんは綿菓子のように軽く

「は~い」

と返事をし、頭の後ろに両手を組みながら言った。

 「ねぇ、あんたどうして学校では美鈴(みすず)ちゃんと全然喋(しゃべ)らないの?席も隣なのに」

 「えぇ?だって別に喋る用事ねぇもん。あっちだってそうだろうし」

 「つれないわねぇ、もっとガンガンアタックすればいいのに」

 「何の話だよっ」

 そんな事を言い合っていると、目の前に尾田(おだ)先輩が現れた。

 「あ、どうもこんにちは尾田先輩」

 俺は立ち止まり、極力不自然にならないよう努めながら挨拶(あいさつ)をした。

すると尾田先輩も立ち止まり、

 「あらこんにちは、そちらが今日来た留学生の方?」

 と、(うす)い笑みを()かべて言った。

それを見た姉ちゃんは俺の肩に手をまわし、尾田先輩に背を向けて声をひそめた。

 「ちょっとちょっと、誰なのよあの美人は?

っていうか何であんたの周りにはこんなに美少女がいっぱい居る訳?

私の周りにはちっとも美男子が居ないってのに!」

 「知らねぇよ!」

 「あの、稲橋(いなはし)君?」

 尾田先輩に声をかけられ、俺と姉ちゃんは(あわ)てて向き直る。

俺はとりあえず、二人にお互いの紹介をした。

 「ええと、こっちは俺の二つ年上の姉で、稲橋(いなはし)美咲(みさき)っていいます。

で、こちらが新聞部部長の尾田(おだ)清子(きよこ)先輩。今三年生だから、姉ちゃんと同い年だよ」

 すると姉ちゃんと尾田先輩はお互いニコッとほほ笑んで握手(あくしゅ)をかわした。

 「はじめまして、(せい)()の姉の美咲です。いつも弟がお世話になっています」

 「どうもはじめまして、尾田清子です。

そう、留学生というのは稲橋君のお姉さんだったのね、全然知らなかったわ(・・・・・・・・・)。

こちらこそ弟さんにはいつも色々と楽しませて・・・・・・

いえ、お世話になっています」

 留学生が俺の姉ちゃんだっていうのをこの人は絶対に知っていただろうし、今ポロッと本音が出たよな?

と思っていると、そんな尾田先輩の胸の中を(するど)(さっ)したのか、

姉ちゃんは再び俺の肩に手を回し、尾田先輩に背を向けて声をひそめた。

 「聖吾、この人メチャクチャ美人だけど、(さわ)(なぎ)(そう)の人達と違って何だか油断ならないオーラを感じるわ!

この美貌(びぼう)(まど)わされて変な事に巻き込まれないように気をつけなさいよ!」

 「ああ、そうだね・・・・・・」

 というか、もう結構巻き込まれてるかもしれません。

とか思っていると、このやりとりがそのまんま聞こえていたのか、尾田先輩がコホンと(せき)ばらいをした。

 「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?

私は別に、稲橋君をどうこうしようなんて思っていませんから。

ただ、彼の周りでは色々と面白い事が起きるので、それを取材させてもらっているだけです。

だって私、新聞部ですから」

 (あや)しい笑みを浮かべながら尾田先輩はそう言うと、

「それじゃあまたね、稲橋君」と言い、優雅(ゆうが)な足取りで去って行った。

その後姿を、俺と姉ちゃんは間抜けな(たたず)まいで(なが)めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ