3 彼女は朝からセーラー服
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
窓から差し込む日の光と雀の鳴き声で目を覚ました俺は、大きなあくびをしながら上半身を起こした。
そしてニ、三回首を回し、隣の布団に目をやる。
が、そこに姉ちゃんの姿はなかった。
今は午前七時。
時差ボケで疲れたとか言っていた割に、随分早起きじゃねぇか。
と、思っていると、
「せーいごっ!おはよう!」
という威勢のいい声とともに、姉ちゃんが部屋に入って来た。
「おお、随分早起きだなぁ姉ちゃん」
と言いながら、俺は姉ちゃんの姿を見上げる。
すると姉ちゃんは昨日と違う格好をしている事に気がついた。
それはラフなTシャツにデニムのショートパンツではなく、パンツ一丁の半裸でもなかった。
姉ちゃんは今、御撫高校のセーラー服を身にまとっている。
つまり美鈴や矢代先輩と同じ格好をしているのだ。
「な、何で姉ちゃんがうちの高校の制服を着てるんだよ?」
俺がそう尋ねると、姉ちゃんは朝からテンション全開でこう言った。
「それはね、今日から私もあんたの学校に通うからよ!」
「な、な、何ですとぉっ⁉」
その言葉に俺は思わず立ち上がる。
そして姉ちゃんを指さしながらこう続けた。
「ななな何でいきなりそういう事になってるんだよ⁉そんな事できる訳ないだろ⁉」
しかし姉ちゃんは何でもないという様子でこう返す。
「あら、ちゃんと特別短期留学っていう形で手続きは済ませてあるから、何も問題はないわよ?」
「特別短期留学だってぇ?」
なるほど、尾田先輩が言っていたのはこれだったのか。
相変わらずあの人の情報の早さと正確さは恐ろしい。
でも、だからといってこの状況をすぐに受け入れられない俺は、姉ちゃんにくってかかる。
「だ、だけど何でまたいきなり、俺の通う高校に行きたいなんて言うんだよ?姉ちゃんは今大学生だろ?」
「だって私、飛び級で高校卒業して、さっさと大学に入っちゃったでしょう?
本来なら今年高校三年のはずだから、せめて一週間くらい、
現役女子高生としての生活をエンジョイしたくなったのよ」
「現役女子高生って・・・・・・それだけのためにわざわざここまで来たのかよ?」
「そんな事ないわよ?聖吾がどれだけ男らしく成長したかも見てみたいのよ。
それには普段の学校生活を見るのが一番じゃない?」
「だからってなぁ・・・・・・」
俺は尚も言い募ろうとしたが、それをぴしゃっと遮るように姉ちゃんは言った。
「とにかく、これはもう決まった事なんだからウダウダ言わないの。
私はあんたの学校じゃあ新入生なんだから、ちゃんとサポートしてよね」
「はぁ・・・・・・」
ため息に近い返事をする俺。
とりあえず、支度するか・・・・・・。




