7 そして彼女がやって来た
そしてその週の日曜日の朝。
この前俺に手紙を寄こした白銀の乙女が、この沢凪荘へとやって来た。
彼女は沢凪荘のボロッちぃ引き戸を豪快に開け放ち、やまびこよりもよく通る快活な声を響かせた。
「やっほーこんにちは!聖吾居るー?」
その声に俺をはじめとする沢凪荘の面々が、玄関に集合した。
そして白銀の乙女とはどんな人物なのかと、好奇心全開の視線を集中させる。
が、
沢凪荘にやって来たその人物は、俺が思っていた白銀の乙女、柏木姫華ではなかった。
目の前の人物は俺とほぼ同じ背丈で、
背中まで伸びる豊かな赤い髪を右耳の上でひとつにまとめ、
はっきりと見開かれた目からは、彼女の備える明るさと行動力と、
有無を言わせぬ支配力が込められた光が放たれている。
ラフなTシャツとデニムのショートパンツを身にまとい、
まるで登山にでも出かけるような大きなリュックを背負っている。
彼女は間違いなく柏木姫華ではない。
けど、俺は彼女の事を、いやという程知っていた。
そんな彼女は俺が何か言う前に、仁王立ちで堂々と胸を張って自己紹介をした。
「私の名前は稲橋美咲、十七歳。そこに居る、稲橋聖吾の姉です!」
そう、彼女、稲橋美咲は、俺の二つ年上の姉なのだ。
その事実を色んな意味で受け止められない俺は、とりあえずこう言わずにはいられなかった。
「な、な、何で姉ちゃんがここに居るんだよ⁉」




