第4.5話 「後片付け」
エリア王国から皇居へと戻ってきたアリアたちは、
彼らが破った『対立凍結の契約』への後始末をすることになった。
ルマンはエリア王国側に今後の注意喚起として、
警告文を送ると同時に、
国王と第二王子をコシュマール塔で一定期間働かせ、
王位継承権の破棄するようにといった正式な文を送った。
一方でアリアはというと───。
「お久しぶりです、アリシア様」
『久しぶりですね、アリア。
ゆっくり休息はとれましたか?』
教皇であるアリアだけが入室を許可されている、
神聖国の『祈りの間』。
その内装はまるでクリスタルに包まれているかのような、
不思議な空間で、中央には祭壇があるだけだった。
その祭壇には、
大きなクリスタルが天井まで細長くある。
アリアはそこに祈りを捧げ、この世界の創世神へと、
今回の一件を報告することになったのだ。
『なるほど……
わたくしに対しての契約を違反したのですね』
「はい……ですが、
それを未然に防ぐことができなかった私たちにも非はあります」
『そのようなことはありません。
あなたは今まで一睡もすることなく、
世界の平和のために働いてきていたのですから。
この件は彼らの責任です。』
まるでホログラムのように身体が透けているアリシアが、
頭を垂れるアリアの頭をそっと優しく撫でる。
そこには体温などないけれど、
アリシアが心からアリアを心配しているのだと伝わってくる。
創世神アリシアの容姿はただただ美しいのみ。
アリアと同じ薄い金色の髪に、青空のような瞳。
その金色でストレートな髪は、
床までつくほどに長いことだけがアリアとの違いだろうか。
『近頃、闇の神グロルが何やら動きを見せています。
何かよからぬ事を企んでいるのは確かです。
アリア、気をつけなさい』
「闇の神グロルが……分かりました」
創世神アリシアはアリアにそう告げると、
その姿は虚空へと消えていった。
■
ひとり祈りの間に残されたアリアは、
アリシアから告げられた警告に思考を傾ける。
「(アリシア様があのように、
わざわざ警告をするということは、
もう動き出しているはず。
であれば、闇の神グロルは何が目的で……?)」
闇の神グロルと破壊神テラは、
創世神アリシアを酷く嫌っているのは知っている。
しかし、彼らのその絶大なる力を持ちえても、
全てを創り出した創世神に敵うわけもなく。
この世界に住まう人々は、
日々神々の喧嘩に巻き込まれてるのだ。
それは、神同士ではどうしようもないと悟った。
闇の神グロルが、人間に忠誠心を持たせ、
彼らを使い、創世神に攻撃という名の嫌がらせをしているのだ。
闇の神グロルが関与した者たちは皆、
記録によれば『創世神を信じていない者』。
『創世神の加護を持つものを酷く嫌悪している者』。
『神の愛し子を殺そうとする者』。
といった思想を持つ者たちなのだそう。
最近でいえば、ここ800年ほど前にできた、
カシマール帝国が最も有名だろうか。
彼らはときおり世界大戦に発展させようと各国を脅しながら、
ときおりその活動をピタリと止めたりと、
何とも胡散臭く面倒な国なのだ。
時に国交で失敗した際に、
神聖国側が悪いなどとありもしないことをほざく、
胡散臭い輩ばかりがいる国だとアリアは認識しているが、
それはもしや、闇の神グロルを祖神としているからではないだろうか……?
闇の神グロルは、悪趣味なやり方を好き好んでいる。
そんな存在を崇拝しているとしたら……?
「(これからあの闇の神は本格的に動いてくるはず。
どのような手を使ってくるかは分からないけれど、
私としてはやることなど2000年前から変わらない。)」
どうして創世神が私たち三姉弟を不老不死にしたのか。
それは、彼らに対抗するためだということは、
アリアは薄々気づいていた事だ。
人間と同じ寿命の限りがあれば、
産まれてくる度に神の愛し子となった者に、
こういうことが起きていると説明しなければならない。
それでは、闇の神グロルを食い止めることなど、
できない可能性だって否定できない。
わざわざ説明をする時間を省き、
なおかつ知識と経験が豊富であれば、
闇の神グロルの手下となっている人間達に、
対抗するのは容易く行える。
そのための『神の愛し子』なのだから。