第3話 「最高権力者」
『聖なる扉』から姿を現した人物───それは。
第一司教、ルマン・アリシア・チュトラリー。
そして───教皇聖下、アリア・アリシア・チュトラリー。
「きょ、教皇聖下!?!」
フィリップもそして、
この場に集まった主要人物達も一斉に膝を折り、
アリアに対し深く頭を下げる。
特別な日でなければ、
相見えることさえも許されない『神の代理人』。
「顔を上げなさい」
凛と静かな声が、エリア王国の王の間に響き渡る。
主要人物達はその声に、一斉に顔を上げた。
「では、フィリップ国王。
私が何故ここに来たのか、分かっていますね?」
すっと、前を向いていたアリアは横の玉座の前で膝を折り、
こちらを見上げているエリア王国の国王、
フィリップに静かな声で尋ねる。
「な、なんのことでしょうか……」
「はぐらかすつもりですか。
100年前、創世神アリシアに誓った契約を破るなど、
あってはならないことです」
アリアの隣にいたルマンが、
静かに怒りを帯びた声音でフィリップを睨みつける。
「それは……!
100年前の国王が交わしたことでしょう!
私には関係ないはずだ!!」
焦りと憎しみを交えた声色で、
フィリップは邪魔だとばかりにルマンを睨みつける。
「100年前のことと言えど、
創世神アリシアに誓ったのならば、
その子孫である貴方にも適応されるのです」
今にも聖魔法で攻撃をしそうなルマンを視線で宥めつつ、
アリアは少し面倒そうに告げる。
「そんなの、先祖が勝手にやったことだ!!
そもそもなんだ、その偉そうな態度は!
父上はこの国の国王だぞ!
お前のようなお飾りが口答えするな!!」
「教皇に対し、なんてことを……っ!!」
「落ち着きなさい、ルマン。
若者の挑発になど乗ってはいけませんよ」
「申し訳ありません、聖下」
今にも殺す勢いで殺気を投げつけるルマンを今度は言葉で宥め、
呆然としながらも状況を見守っている第二十二司教を見つめる。
「第二十二司教、ローラス。」
「はっ、教皇聖下」
「あなたは良くやりました。
・・・・・
このような無能な連中の相手は大変だったでしょう?」
「……聖下」
アリアが告げた労りの言葉に、
第二十二司教ローラスは感激で涙を流しそうになっている。
「無能な連中とはなんだ!!
先程から言っているだろう、お飾りが!
俺たちを無視するだなんて失礼だぞ!!」
「無礼なのは、お前の方だフーリヒ」
見るに耐えられなくなったのか、
この場で第一王子アクアは初めて言葉を発する。
「兄上……?どういうことですか?!」
「お前が暴言を吐いた相手は、『神の代理人』。
唯一、創世神アリシアの声と姿を見ることが出来るお方だ。
この世界は、創世神アリシアの加護《聖神力》を与えることのできる教皇聖下の加護によって、
各国が魔物に襲われることのない平和な日々を送ることができるのだ」
「そ、そんなのただのデマカセでしょう?!
そんな伝説じみたことがあるわけがない!!」
「実際に聖下の加護を失った国は滅びました」
有り得ない!と声を大にして言い張るフーリヒに、
情けなさと、虚しさを感じたレーナは、
フーリヒを咎めるような静かな声で告げる。
「は、母上……?」
「あなたも、そして陛下もあまりにも愚かで、
無知で、馬鹿らしくて、
今まで見るに耐えられなかったのです」
「レーナ?!な、何を言うんだ!!」
フィリップもフーリヒも、
レーナの言葉に驚愕を浮かべるしかないようだ。
「そのような家族喧嘩は後にしてくださいますか?」
「……申し訳ありません、第一司教様。
お話の腰をおってしまい……」
「いえ、レーナ王妃やアクア王子のような”常識人”もいて、
かなり助かっているところです」
あまりにも腹黒い笑みを浮かべているルマンに、
こんな子だったっけ……?と思いながら、
アリアは話を進めることにした。
「では、早速この国の処分について話しましょうか」
「お、お待ちを!聖下!」
「なんでしょう、シモス宰相」
「我々は正当防衛です!
カスティージョ王国側から侵攻の兆しがあったのです!」
「だ、そうですが……どうでしょう?」
事前に繋いでいた、通信石で繋いでいた映像通話を、
アリアは大画面にして上空に映し出し、
画面の先の人物に意見を問う。
『そのようなことはしておりません。
我々はあなた達とは違い、
先祖の契約を破棄するような真似は致しません』
画面の先にいるのは、
カスティージョ王国の国王ファースト。
正妃ルーネ、第一王女マリナ、第二王女サナ、
第一王子ルーマスト、第二王子ロイドという顔ぶれだった。
「なっ……!」
「あちらの意見も取り入れたいので、
勝手ながら連絡をつけさせてもらいました」
「さて、ここからが本番ですよ?皆様方」