入道雲の行先
沢山の人にこの物語を見ていただけたら幸いです。
初雪が降り積もる12月中半。
都心部では巨大な入道雲の出現という、気象現象が起こっていた。
遡ること高1の8月。もう、二年前のとこ。僕は母の恋人と3人で暮らすことになった。今までの僕なら絶対に同居は反対をしていたのだが、母のためだと思い気持ちを押し殺したのが始まりだ。
暮らし始めて3週間も経たないうちになれない環境と不規則な食生活から、僕の気持ちはどんどん暗い方へと向かっていた。
そんな時支えてくれたのは夏子の存在だった。
夏子はクラスメイトで入学式の時から好きな人である。
夏子は直ぐに僕の変化に気づいて寄り添ってくれた。しかし、好きな人に話せば完全に引かれてしまいそうで怖かった僕はなんでもないふりをし続けた。
「ねえ、やっぱりいつもより元気ないんじゃないかな?」
「そんなことないよ!大丈夫ありがとう」
本当は毎日、家事におわれて1つでも違うと深夜まで怒られ続け朝になればまた怒られる。最近では暴力も当たり前で…いや、当たり前になってはいけないことが当たり前になってしまっていて混乱している。
「でも、痣が…」
「あ、、あぁこれ?ちょっと転けちゃって」
笑い飛ばして言いつつ夏子の顔は先程よりも真剣味を帯びていた。
「無理して笑わないでいいんだよ」
突然雲が空を覆うような時間に僕はまたはぐらかす。
「大丈夫だよ、ドジしちゃっただけだって笑ほら早く教室戻ろ?」
そんなことが1年続いた。
高2の8月。僕はベットの上にいた。
突然引き戸の扉が開き息を切らした夏子が僕を見て思わず口を抑える。
「そんな、なんで、、こんな…」
そう思われても不思議ではない。別れを一方的に告げられた母は、全て僕が原因だと言って拳の色が変わるほど僕をサンドバックにして家を飛び出し、トラックに引かれて死んだ。身元を調べた大人は家に着くと失神している僕を見つけて病院に運んだ。
「夏子、大したことないよ。もう暗くなるから帰った方が」
「なんで、頼ってくれなかったの?私じゃ頼りなかったの?」
思ってもいなかった返事に天井から夏子に、視点を移す。
「私もずっと隠してたことがそういえばある。私これから入道雲になるの。」
理解し難い夏子の発言にもっと頭が混乱する。
「来年の12月の初雪には戻ってくるから、また会えたらその時は絶対に頼ってね」
もう行かなきゃと窓に腰掛けると振り向きざまに言った。
「それと、私も好きだから。次はちゃんと言ってね。」
はじめまして「かえも」です。
今回なろうに初めて短編小説を書いて投稿しました。
なろラジには今年出会ったので去年は参加出来なかったのですが、今回投稿できてとても嬉しいです!
抱え込まないこと、時には人を頼ることを知って欲しいです。
僕と夏子の今後が気になっていただけたのなら本望です。