表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

呼び出し

作者: 柚子

今日、俺はある大きな戦いに出る。

いや、部活は帰宅部やし、不良に目をつけられているとかでも

ないんやけど。

まぁ、あれです、告白ってやつです。


相手は同じクラスの飯田愛子さん。(名前すら美しい)

大人しい性格で、そんな話したこともないんやけど、友達と

喋っていた時のふとした笑顔に心奪われてしまい、

1年半・・・・とうとう俺は決意をした。


・・・・したのはいいんやけど、これってやっぱり昼休みとかに

言うべき?

いや、でも放課後の方が人は少ないし、誘いやすいか・・・

いっそのこと、どっかのカフェに呼び出してみる、はないか。

あーどうしよ。

声をかけるタイミングは結構あったのに、時間だけが過ぎていく。

(まぁ、その間も何回か目が合った気がしてちょっと運命

感じちゃったりしてるんやけど)


「あの、飯田さん?」


そう声を掛けることが出来たのは、結局終わりのHRが終わる

ちょっと前で・・・・


「はい?」

「この後、ちょっと時間あるかな?」

「えっと、今日は何もないので大丈夫ですけど?」

「じゃあ、HR終わって15時40分に体育館の裏に来てください!」

「わ、わかりました」


HRの内容なんて全く頭に入ってこんくて、ずっと

頭の中で色んな場合に備えてのシチュエーションを

繰り返したりして、気がつけば体育館裏に到着

していた。

遅れること数分、無事飯田さんもやってきてくれた。


「ごめんな。こんなところに急に呼び出して」

「いや、別に」

「その、今日、呼び出した理由、わかる、かな?」

「なんとなく、ですが」

「じゃあ、話は早いよな。実は、俺っ・・・・」

「私!あんまり強くないので!お手柔らかに!」

「え?」

「タイマン・・・・です、よね?」

「え?」

「ここに呼び出した理由。今日ずっとこっちを睨みつけて

 たし、とうとうこんな所に呼び出されてしまって・・・・」


タイミングを見計らうのに、ガン見しすぎたorz

運命感じてる場合じゃなかった!

でも、そんなズレたこと言うてくる所すら可愛いと

思っている俺は末期なんやろうな。


「ちょっと、ごめん。んー、あの、全然違うわ」

「え?」

「タイマンじゃない方では思いつかんかな?」

「タイマンじゃない方・・・・はて?」

「いや、あの、呼び出したのは、その・・・・」


せっかく決意したのにorz

このシチュエーションは想定外やった。

調子狂ってしまって、なかなか言葉が出てこやん。


「奥野くん?」

「ごめんな。ちょっと待ってな」

「じゃあ、言うこと思いついていないみたいなので、

 私からお話してもいいですか?」


思いついてないのは、君のせいですけどもね。


「ど、どうぞ?」

「私、奥野くんのことずっと好きだったんです」

「・・・・え、あ、え?」

「そんなに目立つタイプではないけど、いつも周りを

 支えているというか、縁の下の力持ちというか、

 派手すぎず地味すぎず、クラスがやりやすいように

 自然となっているのは奥野くんのおかげだと思って

 いるんですよね。そんな所を見ている内にいいなって

 思っていて・・・・私もずっと話をするタイミングを

 伺っていたんですが、まさか呼び出されるなんて

 びっくりでした。エスパーかと思いました」


少し俯き、髪の毛を耳にかけながら微笑む彼女。

なんて絵になるんやろう。

というか、さらっと嬉しい内容を言うてくれているけど・・・・


「あの、飯田さん?」

「はい?」

「それは告白と捉えてもいいんかな?」

「え?・・・・あ!本当ですね」

「やとしたら、今日呼び出した理由は俺もそれです。

 俺も飯田さんのこと好きで。菅野さんと話をしている

 時の楽しそうな、いつも見せないような無邪気な笑顔に

 心惹かれて。それから気にするようになって、目で追う

 ようになって・・・・飯田さんの方こそクラスのこと細やかに

 気にしてて、支えてると思ってるよ。俺はそんなところが、

 その・・・・大好き、なんです」

「ありがとうございます。タイマンじゃなかったですね」


女の子にタイマン申し込むようなタイプと思ってたのかな?


「私、嫌われているんだと思っていました」

「やとしたら、告白してくる勇気素晴らしいんやけど。

 今日も睨みつけてたわけじゃなくて、話しかけるタイミングを

 見計らってたわけで」

「じゃあ、両想いってやつですか?」

「え?」

「カップル成立ってやつです、よね?」


無邪気になんて可愛いこと言うてくるんや、このやろっ。


「い、飯田さんがそれでいいなら、是非よろしくお願いします」

「私は大歓迎ですよ。よろしくお願いします」


お互いに下げた頭を同じタイミングで上げた。

何かそんなことすら嬉しくて、思わず2人とも吹き出してしまった。


「じゃあ、帰ろか」

「はい、帰りましょう」


そのまま校門まで来たところで、


「あ、でも今日は別々で帰りましょう」

「なんで?」

「きっと一緒だと帰り道ずっとニヤニヤしちゃうから。恥ずかしい

 じゃないですか。だから、今日は1人で喜びを噛み締めながら

 明日に備えて自分の気持ちを整えておきますね。明日から

 一緒に帰りましょうね」


あーとことん可愛い。


「わかりました」

「では、また明日」

「うん、また明日」


じゃあ、俺も噛みしめながら飯田さんとどんなことがしたいか

考えながら帰ろ。

あー幸せやなあ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ