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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

続編のない短編達。

このかは、部長が大好きです!!

作者: 池中織奈

「美羽部長、いた――!!」



 日色このかは、その日も三弦美羽部長の名を呼んでいた。


 いつも大声で美羽の名を呼びながら、このかはやってくる。

 日本人にしては色素の薄い茶色の髪を持つ、かわいらしい少女だ。目をキラキラさせて、屋上にいた美羽を見つけると、勢いよくその身体に抱き着く。



「このか……、おはよう」

「おはようございまーす!!」


 このかのことを埋め止めた美羽は、美しく笑う。

 ただその綺麗な黒目に見つめられるだけでも何だかこのかは嬉しい気持ちになってしまう。


 そして抱き着いた時に感じられる、胸のふくよかさに、


(相変わらず柔らかーい!! 私はこんなに大きくないからなぁ。えへへ、美羽部長は彼氏さんいないから、私が独り占め!!)



 などと考えながら、このかはえへへと口元を緩ませる。



 このかはこの高校に入学してまだ間もない一年生である。対して、美羽はこのかの所属する放送部の部長である。


 このかは美人で、優しい美羽に出会った初日で懐いた。



「美羽部長、好きです!!」


 と自己紹介直後に叫んで、放送部の部員たちに笑われたのは、良い思い出である。





 学年が違うため、放送部の活動でしか美羽と会えないこのかはある時、「美羽部長にもっと会いたい!!」と我儘を言った。

 その結果、美羽は朝早めに通学することになったのだ。朝早くに学園のどこかにいるから、見つけてみせなさいと悪戯を思いついたように笑った美羽に、「わーい」と喜んだこのかは朝早くから毎回美羽のことを探している。


 美羽のことが大好きでたまらなくて、美羽ともっと居たいと思っているこのかにとって美羽がこうして自分のために時間を作ってくれるだけでも喜ばしいことだった。

 しまいには、昼もたまに美羽は一緒に食べてくれるのだ。このかは美羽が優しすぎて益々懐いた。




「美羽部長、あーん」


 思いっきり抱きついて、美羽を堪能したこのかは現在、美羽と隣同士で座っている。

 両親が海外に赴任していて、朝ごはんを食べることが少ないという美羽のためにこのかは毎日のように朝食を用意するようになった。


 結構ぽんこつ気味なこのかだが、料理などの家事スキルに関しては高いのだ。

 これは両親が共働きで、弟妹の面倒を見ていたことに起因する。朝から大好きな美羽部長のためにと張り切るこのかであった。ちなみに弟妹たちに、「彼氏が出来たのか?」と疑われていることはこのかは知らない。



 ちなみになぜあーんをして食べさせているかと言えば、あーんをして食べさせるといつもクール気味な美羽が可愛くなるからである。

 このかが「あーんしたいです!!」と頼めば、「いいよ」とすぐに頷いてくれたのだ。



 あーんをして食べさせると、何だか美羽の違う一面が見れこのかは嬉しくて仕方がなかった。

 


(なんだか、美羽部長を餌付けしている気分!! 美羽部長可愛い!!)



 朝から美羽成分を補給出来たこのかは至極幸せそうな表情を浮かべていた。



 朝から二人で過ごして、学校が始まるからとそれぞれの教室へと向かう。美羽もこのかと一緒に居たいと思ってくれるのか、いつも教室まで送ってくれるのだ。

 優しい美羽に毎度のことながらこのかは好きぃいいというあふれんばかりの思いになるのであった。



(今日は美羽部長、一緒にご飯食べてくれるって言ってたもんね。あー、楽しみ!!)



 その日は、美羽が一緒に昼食を食べてくれる日だった。

 幸せオーラを全開で、授業中もにこにこしているこのかにクラスメイトたちはほっこりしている。いつも無邪気でにこにこしているこのかは、クラスの中でもよい癒しなのであった。



「じゃ、いってきまーす」

「また部長さんのところ? いってらっしゃい」



 このかの友人たちもすっかりこのかの美羽好きを知っているので、昼休みに笑顔で送り出してくれるのであった。




「美羽部長、ご飯いきましょー」

「行こうか」


 美羽の教室まで迎えに行くと、すっかり見慣れた光景になっているのもあって三年生たちも微笑ましいものを見るような目をこのかに向けていた。

 大学受験に向けて余裕のない三年生にとっても、美羽を無邪気に慕うこのかは癒しであった。

 何より、かわいらしいこのかと美人な美羽が仲よくしている様子はとても目の保養なのである。



「お弁当ですよー」


 ちなみに美羽が大好きなこのかは、一緒に食べるときは毎回お弁当を作ってきている。

 大体、美羽の好物ばかり入れているこのかであった。



「美羽部長、美味しいですかー?」

「美味しいよ」

「わーい!!」


 毎回、美羽に美味しいと言われるだけで飛び跳ねて喜ぶこのかである。


 そんなこのかを可愛いと思ったのか、美羽は自分より頭一つ分背の低いこのかの頭を撫でる。

 頭を優しく撫でられた美羽は恥ずかしくなったのか、顔を赤くしてえへへと笑うのだった。



 昼休みが終わって、教室に戻ったこのかは午前中と同様へにゃりと幸せそうな笑みを浮かべていた。



 放課後、放送室では当たり前のようにこのかは美羽の隣に座って、にこにこと笑っている。

 部長として、今後の放送の事を説明している美羽はこのかフィルターからしてみれば大変かっこよかったのだ。

 しかし、真面目に話している美羽を邪魔してはいけないとこのかはこういうときは「かっこいいー」とか「美羽部長凄い!!」とか口に出したいのを我慢しているのである。口がもごもご喋りたそうに動いている。

 放送部員たちは、ほっこりした気分でこのかを見ている。




「美羽部長、かっこいいです!!」


 さて、真面目な話し合いが終わればこのかは当たり前のように美羽に抱き着いて笑顔でそんなことを言う。

 人前だろうと、このかは平常運転で美羽にべたべたしているのであった。



 美羽も平然とそれを受け入れ、仲良く話すのが放送部での平常運転であった。




 寧ろ二人の空間的なオーラを出すので、他の放送部員はなるべく二人から離れて、それぞれ部活動をするめるのであった。





「百合の花が綺麗に咲いているのは、いいわ」

「拙者もそう思います。なんと尊い……」


 ちなみに放送部員の中で、GL好きな二人の男女はこそこそとチラ見しながら興奮したようにそんなことを言い合っていた。




 日色このかと、三弦美和。

 あまりにも仲が良いため、女子生徒同士だが付き合っているのではないか? と一部でささやかれていることを、本人達は知らない。





(美羽部長に見つめられると嬉しくて、ちょっとドキドキするんだよね!)

(……このか、可愛い)




 そして互いにそんな気持ちを抱きながらも、恋愛感情には二人は無自覚なのであった。




 ――このかは、部長が大好きです!!

 (後輩は部長が大好きで、いつもべったりくっついている)




色んなジャンルの書ける幅を広げたいと、ガールズラブの現代ものを書いてみました。

無自覚に仲よくしている先輩後輩です。


日色このか。

一年生。無邪気で、ぽやぽやしている。

可愛い見た目をしていて、まるで飼い主をみつけた犬のようにいつも美羽を追いかけている。

家事全般は大得意。

美羽と過ごしてドキドキしているが、恋愛感情とかは気づいていない。でも多分、美羽が他の人と仲よくしていたらすねると思われる。


三弦美羽

三年生。クール系の綺麗な美少女。

美しく、成績も優秀。無邪気に慕ってくるこのかが可愛い。

勉強や運動は出来るが、料理は苦手。このかの料理がおいしくて気に入ってる。

このかと居て可愛いなと思っていたり、たまに唇を見つめてしまってたりするが、恋愛感情には気づいていない。



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