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2.そもそものはじまり(ぼんやり)



 俺とメアの関係性。

 コトの経緯としましては。

 うーん……、どこから説明したら良いんだろうなぁ……。あれか。先に天界絡みのことを説明したほうが分かりやすいのか。


 あのタイミング。

 そう。

 まだ名前も知らない、謎の幼女勇者・メアに完全敗北を喫したあと。

 魔王だった俺は、即座に天界へと連行された。


 前の世界からこの異世界へと転移してくる(というかさせられた)前にも、一度訪れた場所だ。俺はここを通って、異世界へとやって来た。


 真っ白い空間に雲っぽい地面。天井も無いのに謎空間からシャンデリアが一つぶら下がってきている。……もともと明るい空間なんだから、シャンデリアの意味無いんじゃない? とかなんとか、前に来たときも思ったなぁとちょっとだけ懐かしい気分になる。


「こんなだったなぁ……」


 確か十年ほど前。

 ここで俺は反則級な能力を与えてもらったのだ。


 目の前が神々しく光る。……そうそう、あのときもこうやって現れたんだったっけ。

 この部屋の主。

 ――――女神の、お出ましだ。


「あらあらりょーちゃ~ん、大変だったわねぇ~。ぼろぼろじゃないの~」

「はぁ……、まぁ、そうっすね、すんません」

「好きに生きて良いとは言ったけれどぉ、ちょっとやりたい放題過ぎたみたいね☆」

「そうっすねー……」


 女神ルーリー。

 俺が異世界に転移してきた際、力を与えてくれた人(神)だ。

 ゆるふわなブロンドウェーブに、フーセンのようなおっぱい。神々しい白のヴェールが、何というかとてもえっちな感じでけしからんですね。


 見た目は二十代後半くらいなのだが、何ともママみが強いというか。甘い声で俺のことをりょーちゃんなんて呼ぶからかもしれない。


 そんな女神ルーリー様は、「あらあらお小遣い落としちゃったの~?」くらいのテンションで俺に語りかける。


「大変だったわねぇ、りょーちゃん」

「まぁ……。大変、でしたね」


 身から出た錆というか何というか。まぁ、大変だったのはあのロリ勇者と関わってからだけども。


「あの……、俺、さっき勇者にやられまして。それで、ここに連行させられた……ワケなんすけども」

「えぇそうねぇ。処遇よね」

「うっ……!」


 処遇。

 やっぱり刑とかあるのか!

 そりゃ、そうだよな……。あれだけ人間界で好き勝手やっちまったんだ。裁かれるのは当然だよな……。


「りょーちゃんはぁ……、あらやだ、死刑になるみたいじゃな~い。大変よぉ?」

「え! いきなり死刑!?」


 テンションそんなに変えずに言うことじゃなくない!?


「まぁ正確には、千八百年の禁固刑ね~。けどぉ、りょーちゃん人間種でぇ、そこまで長生きじゃあ無いでしょう?」

「は、はは……、そうっす……、ね」


 膝から崩れ落ちる。まじか……。いきなりゲームオーバー過ぎる……。

 完全に詰んでいる。

 弁明の余地はなさそうだ。


「ウフフ。……と、いうのが、処罰の提案として上がってるみたいね。法律(ルール)的にはそっちが適応されちゃうんだけど、神側的にはぁ、ちょっと勿体無いというかぁ」

「……はい?」


 ん? どういうことだ?

 死刑にはならないのか、俺?

 落とした首をもう一度持ち上げる俺。


「そもそも、世界を支配できるくらいの力を持っていて、い~っぱい女の子を侍らせてたのにぃ……、結局童貞のままなんだもんねりょーちゃん」

「うぐっ!」


 痛いところを突かれた!

 持ち上げた首がもう一度下がる。


「ヘタレよねぇ~。あんなことや、こんなことを、散っ々しておいてぇ……本番は出来ないんだもの。チキンよね♪」

「うぐぅっ!」


 下げた首は、もう上がりそうにない!

 はいそうです! チキン過ぎて、本番までは出来ていません!

 ……え、だって怖くない!? 痛かったらどうしようとか、噛み千切られたらどうしようとか、思わない!? この世に存在する非童貞の方々は、俺からしたら全員英雄だよ……。


 そんな風に俺が頭を抱えていると、女神ルーリー様は更に続ける。


「女の子が可哀想っていうなら、そもそも侍らせなければ良いだけだしぃ。もう準備万端で、『あ、私今日このまま、花を散らしちゃうんだ……!』って覚悟を決めてる子も、そこで放り投げちゃうわけだしぃ。……ある意味タチ悪いわよねぇ」

「見てきたかのようにズバズバ言いますね!」


 神様との取り決めで、監視は付かないとの約束だったはずだが!?


「今のりょーちゃんを見てれば、手に取るようにわかるわよ~♪ 当たってるでしょ?」

「……全弾命中ですっ!」

「ウフフ、完全にダークサイドに堕ちれないあたりも、中途半端だったわよねぇ~」


 抉り方がえげつないよ! 女神ってもっとニンゲンに優しいものなんじゃないの!? ある意味で、俺が女の敵だからか!?


「……けれどまぁ、根っこの部分の善性を捨てれらないりょーちゃんだからこそ、この(・・)判決なのかもねぇ」


 俺がうなだれていると。

 女神ルーリーはふわふわしたテンションのまま、喋り口調もそのままに告げた。


 選ばせてあげる、と。


「……選ぶ、って?」

「そのままの意味よぉ。刑を、選ばせてア・ゲ・ル。

 私サイドの提案を受け入れてくれるならぁ、禁固刑は無しにしてあげるわ~」


 突然の提案に、俺は顔を勢いよく上げて尋ねる。


「そ、そんなことが出来るんすか……?」

「出来るわよ~☆

 というよりも私サイド(めがみ)としてはぁ、こっちを提案する予定だったんだし」

「やるやる! 死ぬよりはマシでしょうから!」


 というよりも更正のチャンスを与えられたということだ! こんなにありがたいことは無い!

 がばっと起き上がり俺は即座に答えると、女神ルーリー様はちょっとだけ驚いた様子を見せて言った。


「……あらぁ、『やる』って言っちゃったわねぇ。契約、コレで完了しちゃったわぁ。

 もう~! だめじゃないりょーちゃん! 神の前で気安く契約事なんか口にしちゃあ!」


 めっ! と額を指で軽く押され、怒られる。

 ううむ、相変わらず可愛い。

 ゆるい空気と母性とおっぱい。完全に好みのタイプだ。


「って、ルーリー様。契約しちゃあマズかったんすか?」


 俺的にはどの道、その選択肢しか残ってなかったような気がするのだが。


「ありがたいけれど、一応内容聞いてからにして欲しかったわねぇ~。

 だって、死ぬより恐ろしい(・・・・・・・・)目に遭ってから文句(・・・・・・・・・)言われても困る(・・・・・・・)じゃない?」


 …………え?

 今、何て言った?

 俺の背中を冷や汗がつたう。


「でも流石はりょーちゃんねぇ~。ある意味死んじゃうよりも大変なことに、オッケーを出しちゃうんだもの~☆ そういうところ、好きよ~」

「い、いやいや、ちょっと待って! 何かすげえ不穏なことを言ってる気がするんですが!?」

「まぁどの道契約完了しちゃってるワケだからぁ、説明はするけれど……」

「しまったぁ! 俺のアホー!」


 俺の左薬指を確認すると、そこには神々との契約の証である『神紋』が浮かび上がっていた。

 これが浮き出ているイコール、神などと何らかの契約を結んでいるという証拠らしい。

 異世界に転移し、チート級の能力を与えられた際にもこれが浮かび上がっていた。……さっきまでは消えていたのだが、束の間の消失だったな。


「ってことは、俺の能力……。今取り上げられた、膨大な魔力は?」

「もちろん全部返してあげるわよぉ~。……そうじゃないと、りょーちゃん死んじゃうでしょう?」

「契約内容を確認するのが恐ろしすぎる!」


 いやいや! 地上で猛威を振るっていた魔王の力だぞ!? 他の追随を許さなかった、超ド級の魔力ですよ。それを使わないと生き残れない状況って何だよ!


「……って、ん? いや、もしかして?」


 俺が無双できなかった時がある。

 それは――――さっきだ。

 厳密に言えば、あの金髪ロリ勇者が現れてから。


「もしかして……、俺にあの勇者を倒せってことですか!?」


 だとしたら不可能すぎる。というか今しがた負けてきたばっかりだ。しかも俺の力どころか、魔王軍全勢力を持ってしても敵わなかったくらいだ。


「ウフフ~、違うわよ~。その、ぎゃ・く」

「逆……?」

 俺の疑問に指を振り、ちなみに豊満な乳も揺らし、女神ルーリーは満面の笑顔で言う。



「りょーちゃんには~、あの子と共に生きてもらうことになったのよ~」



 にこにことした狂気を、女神はそこに置いていく。

 共に生きる。

 (まおう)が。アレ(ゆうしゃ)と?


「は、」



「「はぁぁぁああっ!?」」



 声は同じタイミングで。

 重なる。


 ひび割れ、白い空間に。

 突如として、拘束された勇者が、投げ込まれるように入ってきた。


「え……?」

「アァ?」


 あたふた顔の俺の悲鳴と、勝気な彼女の疑問符とが、重なった。

 そして重なったのは言葉だけではなく。


 今このときより、生きる道もである。







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