プロローグ
それは、街灯もまばらにしか存在しない倉庫街
少女《小鳥遊 響》(タカナシ ヒビキ)は、息をきらしながら走っていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・早く逃げないとあいつに追いつかれる」
その表情は、焦りと恐怖で強ばっており今にも泣き出しそうな顔をしている。
「待ってよ響ちゃん僕達恋人だろ?何で逃げるんだい。」
突如として響の背後からひたひたと言った形容詞が良く似合う足音と共に一人の男が近付いてくる。
身長は、160cmほど体格は90キロほどと完璧なる肥満体型であり間違っても響のストライクゾーンには入らないそんな容姿の男が響の背後から近寄ってきた。
「はぁはぁはぁ・・・・何を言ってるの?私は貴方なんか知らないし告白された記憶すらない。」
響は、記憶にすらない相手の事をにらみつけはっきりと拒絶の意思を示した。
「そんな・・・・君は今までに10回も僕と目を合わせたじゃないか?それはもう愛の告白だろ?さぁ・・・・行こう僕達の愛の巣へ!!」
そう言って男《河間口 透》(ガマグチ トオル)は、一点の曇りもない透き通った瞳で響に近寄っていく。
「いや・・・こっち来ないで!!」
響は、今にも泣き出しそうに目には涙を浮かべ後ずさりながら逃道を必死に探していた。
「悲しいな・・・・僕はこんなに君の事を思っているのに・・・でも心配しないで響ちゃん僕の能力を使えば僕達は相思相愛の恋人同士になれるんだ。」
そういうと透は、おもむろに上半身の服を脱ぎ去りその姿を夜の燦然と輝く満月にさらす。
「さぁフロッシュいくぞ・・・・《エボリューション》」
透が銃の引き金を引くような動作と共に、その言葉を叫ぶと彼の体は膨張しその姿を変貌させていった。
「ゲコ・・・・キタキタキターーーーー!!これで・・・ゲコ・・・・僕は最強だ・・・・ゲェェェェェェロォォォォォォーーー!!」
透の叫びと共に彼の膨張した体は弾け中から人影が現れる。
月の光にさらされたその姿は、一言で言えばカエルだった。緑色のタイツのような皮膚に、顔の大半を覆うマスクのような顔一見して悪役プロレスラーに見えなくもない見た目をした透が立っていた。