2章 4 エルフ族の存在価値
あれはまだ私が小さかった子供の頃だっただろうか…
夏の日差しが眩しく、蝉がミンミン鳴いていた時に双子の妹のまつりと一緒に公園で蝶々を追い掛け回し、走り回っていた時の事。
「まひね〜早く!蝶々逃げちゃうよ!」
「うにゅ!まつり待って〜私も蝶々欲しいよ〜」
「あっ!」
まつりが大きな木を見つめて、目をうるうるさせて今にも泣きそうにしている。
「はぁ〜はぁ〜どうしたのまつり?」
「うっ…ひっく…まひね〜あれ見て…蝶々が…」
そこには木に出来た蜘蛛の巣に蝶々が1匹捕まり捕食されていた。
「うにゅ…うっ…ひっく…蝶々が…うわぁぁぁん!」
2人でお互いの身体を抱きしめ合い号泣していた。
その時、私は蝶々を見て思った…
こんなにも世界は無慈悲で残酷なのだと…
今まで一生懸命に生まれて、こうも呆気なく一生に一度の命を終えてしまう事に、感情が追いつかなかったが、1つだけ分かった事があった…
それは私達の両親が誰なのか分からず、まるで1匹の蝶々と私達は同じだと思ってしまった。
昔の夢を見ていた。あれは確か私がまだ小さかった頃だったかな?
昔の事だったので、ぼんやりとしていてあんまり覚えていないかも。
それよりも起きないと…
薄っすらと目を開けるけど、何か妙な事になっている。
身体が動かないし目隠しをされているのか、真っ暗で何も見えない。
(うにゅ…あれ?ここは…どこ…目隠しなのかなこれ?暗くて何も見えないよ…足は動くけど…あれ⁉︎手が動かない!それに誰かいる?)
「誰かそこに居るの!」
「……ちっ!」
「こいつがエルフ族なのか?」
「あぁ!こいつだ!間違いない。これはエルフ族の耳だ!」
「そうだが、獣人族の耳もあるけど、どうなっているんだ?」
「確かに…こいつに聞いてみるか」
乱暴に目隠しを取られゆっくりと目を開けると、どこかの家に閉じ込められて捕まっており、そこには村の青年が3人いて、手には安そうな剣を待っている青年が1人に、木の棒を持っている青年が2人いる。
「お前エルフ族か?あぁん!どうなんだ!」
まひるの身体を木の棒でおもいっきり殴ってくる。
自分の身体を動かそうとするも手足が縄で縛られて、さらに柱に縄で縛られて拘束されていた。
右腕には見慣れない腕輪がしてある、なんだか力が抜けるような感じがする。
「痛っ!何するのよ!エルフ族だけど文句あるの!」
「な…なに⁉︎」
「よっしゃあぁぁぁぁ!こんな事があるなんてな!」
「エルフ族だから価値があるんだ!これで俺達は大金持ちだぜ!」
「やったぜ!こいつを売って村の再建…いやどこかの街で贅沢に暮らすのもありだな」
「うにゅ?何言っているのよ⁇」
「なに不思議な顔してるんだこいつ!おい!」
木の棒で身体を殴ってくる青年達、今度は3人で殴ったり剣で小さな傷を付けたりしてくる。
その顔は愉快に満ちた顔をしており、人間としての理性が外れている。
「痛っ…やめて!何も悪い事してないじゃない! こんなの集団リンチじゃない!」
既にまひるの身体はマンビキ狼との戦闘や疲労でボロボロになり反抗しようにも村人の為、手が出せないでいた。
流石に見ず知らずの人を殺してしまうのは躊躇してしまうし、ボコボコに殴ろうにも手加減が出来る気がしない。
それにさっきからなぜかスキルが使えないのは、何でなのよ…
次第にぐったりと弱ってしまう。
「ちっ…あんまり痛めつけると、売値が下がっちまう! お前ら準備するぞ!他の奴らと、どこの国に売るか相談してこんな生活とはおさらばだ!」
ここは一晩休んで体力を回復して脱出してみるかな。
それにしても集団リンチしてきて悔しい、久し振りに目から涙が出て泣いたよ…
木造住宅の穴や隙間から夜の月の光が差し込みいつのまにか寝てしまったまひるは、ふと嫌な予感がして目を覚ましてしまう。
「身体中が痛いよ…大福ちゃんどこに行ったの…」
ギィィィ…バタン!
(うにゅ!誰か家に入ってきた?)
「こいつがエルフ族か…かなり美人だな。ムラムラしてきたぜ!前から獣人族を抱いてみたかったんだよな〜」
いそいそと汚れた格好の中年男が1人だけ部屋に入って来て、自分の服を脱ごうとしている。
明らかにやばいと思うし、身の危険を感じずにはいられない。
「うにゅぁぁ⁉︎ 変質者⁉︎ 私に近寄らないで!噛み付くわよ!誰か助けて〜‼︎」
「この!黙れ!こうしてやる!」
拳で腹部を殴られる。かなり痛く声も出せず息が出来ない。
「がはっ!痛っ!死んじゃう…なんで今日はこんな目に遭うのよ…エルフ族の何が悪いのよ…」
中年男は服を脱ぐのを止め、近くにあった木の樽に座り、ニヒルな笑みを浮かべながら語り出した。
「ぶっ…ぶあっはは!おめぇ何も知らないのかよ〜いいかエルフ族ってのは遥か昔、王国が長年血眼になって探し出していた種族なんだ!エルフ族の身体の一部分だけでも大金を払ってくれるのに、今回こんな上玉の絶滅したはずのエルフ族が居たんだ、村長以外の誰もが売ることに賛成したぜ」
「うにゅ…そんな…」
絶望の淵に立たされた気分で恐怖に怯えた顔になり身体が震えるまひる。
スキルを使いたいけど、身体に力が入らない?
「ぐっスキルが使えない…なんで…」
「スキルが使えないのは、スキル封印の腕輪をしてるからな。腕輪をするとスキルが使えないんだが…この腕輪は元々、森の中にいた白くて丸い精霊を捕まえて王国に売る為だったんだが…まさかこんな所で利用する事になるなんてな」
だからスキルが使えなかったんだ…
「さて…色々教えてやったんだ、そろそろ夜の営みって奴をするかな…」
中年男は、下着姿になりまひるに近づいてくる!
「嫌だぁぁ!やめて!近づかないでよ!嫌だよ…いや…」
ジュルリ!
「やべえ興奮し過ぎて涎が垂れてきちまった」
「いゃぁぁぁぁぁ〜!やめてぇ‼︎」
柱に縄で括り付けられたまま身動きが出来ないまひるの服に中年男が手を掛け、肩の巫女服をずらしブラジャーの肩紐に手を掛けて胸が露わになる寸前だった!
入口のドアが慌ただしく開けられ、青年が入って来る。
中年男に近づいて耳元で囁いている。
「大変だ‼︎…あいつが村長を――してしまったんだ!」
慌てていたから男達が何を話しているのかは、分からないけど…
なんだか慌ててる?
「くそっ!直ぐに行く!」
中年男は服を着て青年と一緒に家から慌てて出て行き、戻ってこなかった。
…貞操の危機を守れた?
「うにゅ!なんとしても…朝までに…ここから脱出しないと…」
大福ちゃん…助けてよ…