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まひるさんは逆襲します!   作者: 吸血姫
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プロローグ

鳥の声がして瞼をゆっくりと開ける。太陽の光が眩しいく目が痛い。

もう朝なのね…それにしても昨日は大変な目に遭ったよ。まさか襲われるなんて思いもしなかった。

自分の周囲は、ボロボロになった木で出来た建物らしき残骸がある。天井は大穴が開いて天窓になっていた、自分でもやり過ぎたと思う。

「あぁ〜…昨夜の事件に巻き込まれるなんてね…こんな事になるなんて…」


そんな事を言いつつ数日前のことを思い出していた…


挿絵(By みてみん)

穏やかな風が窓を吹き抜け、空はオレンジに染まり、都会の街並みが夕日に沈む病院の一室で、黒色の腰まである髪がなびき、小顔で華奢な体躯の美少女が佇んでいた名前は…神奈かんなまひる。


まひるはため息を吐きつつも、開いていた窓から離れてゆっくりと歩きながらベットに戻り、長座位になって看護師さんと、いつもと変わらない会話をする。


「はぁ〜今日も採血するんですね…」


パタパタと音を立て、注射器の準備をしている看護師さんは満面の笑みで、まひるの前に仁王立ちした。

「なんでそんな嫌な顔してるのよ、可愛い顔が台無しよ。全身の血吸い取るわよ」

まひるは、顔を背けつつ腕を出していた。

「えぇ〜逆にできるなら、やってみて下さいよ。どうせ私なんて、あと一年の命しかないんで、天国行きが、はやまるだけですよ…死にたい…」

「あのね〜私の前でそんな事言わないでよ…どうせとか、無理とかって言う言葉、一番嫌いなんだから、妹ちゃんを見習って欲しいわね。双子で2人とも綺麗なのに、1人だけ暗い顔だと台無しよ?」

「あの子は私にちょっかいをして、楽しんでるしね…元気だし私にもあのくらい元気が欲しいよ、そろそろ戻ってくるかな?」


そんな会話をしていると、病室の扉の方から音がしてくる。

「まひね〜花瓶の水汲んできたよ〜」

花瓶をベットの横にある台に置いて、まひるにハグをするまつり。

「うぅ〜まひね〜大好き!ちゅちゅ!」

ちなみにまつりは双子の妹で、とても仲が良い。私の唯一の心の支えだと思う。


看護師さんに怒られつつ、まひるは不意にあの医者との事を思い出していた。

私は子供の頃から心臓が弱く、手術するには移植が必要だと医者から聞かされた。

ちなみに今は女子高生で、まだ移植もしていないため病気も治っておらず、入退院を繰り返して学校に行ったり、行かなかったりしている。

最近はずっと入院しているけど…

そのため高校では入退院が酷く、誰この人?といった感じになっていたし、高校に入ってすぐの頃、数人から告白されて、それを見た他の女子軍団から棘のような視線を浴びて、嫌がらせをされていたのを覚えている。

ちなみに嫌がらせは、靴の中に画鋲とか机の上に花とか、足を引っ掛けて転倒させようとしてきたりとかそんな事だったと思う。


それだけではなく、私が病院通いしていた事について、家でいつも両親は喧嘩していた…

「お前がこんな病気の子を児童養護施設から引き取って来るからだ!」

「なによ!もう離婚よ!」

私とまつりは血の繋がった双子だけど、両親とは血縁関係がない。

私達は4歳の頃に、今の両親が児童養護施設から引き取って家族になったらしい。

なので私達の産みの親とか、なぜ児童養護施設にいたのか分からない。小さい頃のことなので、ほとんど覚えていない。


ちなみに最後にあった時の会話はこれ…

「短い命だから最後だけは好きに生活して欲しい、父さん達は離婚する事にしたよ」

はぁ〜そんな事、本人が死に掛けの時に普通、言うかな…


そんな事を考えている間に、どうやら採血は終わったらしい、いつも採血しているので、針を刺されても余り痛くなかった。

そんな時、不意に病室の隅にあるテレビに目を向けた。

テレビの男性キャスターが憂鬱そうに変な事を言っていた…

「次のニュースです。またしても◯◯区に異国の服を着た人が現れました、えぇ〜これは西洋の騎士でしょうか、他にも弓を持った人もいる模様です。」

まひるは目を見開き食い入るように見ていた。

「うにゅ?またこんな事起きてるんですね、そういえば、この前も見たこともない動物?モンスター?が話題になってましたよね!」

「まひね〜この前もそれ系のニュース見てたよね〜好きだね〜まぁ…まつりは、まひね〜が好きだからね!」

(まひね〜に私の思い届け!)

ずっとハグされてるから苦しいんだけど、まつりさん…

「はいはい好きね…その言葉もうお腹いっぱいだから」


「まひるちゃんも好きね〜オカルト話…でもそういえばこの前、同僚の看護師も変な格好をした人とか、巨大な鳥を見たって言ってたわね…」

ここ最近、世界各地でゲームの中でしか見ない様な巨大モンスターが出現したり、世界一大きな山が丸ごと消えたりといった事件が多発しており、異様な光景が広がっているのだ。

信じない人や信じる人などいて様々だが、この看護師さんは信じない人の一人だ。

以前、話を聞いたら自分の目で確かめないと絶対に信じないらしい、頑固すぎるでしょ…

「絶対にオカルト話信じないですよね〜いざって時、巨大モンスターに襲われても知りませんよ〜」

「そんな事あるわけないでしょ、ほら横になって少しは休まないとね」

「うにゅ…いつも横になって寝てたらカビが生えちゃう」

「じゃあまひね〜私もそろそろ帰るからまた明日ね!」

「うんまた明日ねまつり!」

看護師さんとまつりは居室から退室して、まひるはいつの間にか寝てしまっていた。




「ん…今何時だろう…うにゅ!夜中の12時⁉︎ご飯食べるの忘れてたよ〜まぁ病院食、美味しくないしいいかな。でも薬は飲まなくちゃ駄目だよね」

驚きとともにいつもの夕食の時に飲んでいる薬を探すため、看護師さんが毎日置いているベットの横の台に手を伸ばしだが…

「あれ?ベットの横にいつも薬置いてあるのに…面倒だけど仕方ない…ナースステーションまで取りにいくかなぁ」


不思議に思いつつも病室から出ると、廊下を歩きナースステーションの方まで行く。

廊下の窓から月の光が差し込み、廊下の遠くに光が見える。

まひるがいる建物は3階で、各階にナースステーションがある。

そこに看護師さんがいつも仕事をしているはずだった…


「変な匂いがする、臭くて鼻が壊れそう…ナースステーションの奥の方からかな?」

ガタン!ガタガタガタガタ!

凄い音とともにナースステーションの方から赤い液体が廊下に流れてくる。

「ガルル!」

ガブ!グチャグチャ!

廊下からホールの中心にあるナースステーションの奥を覗いてみた…

ナースステーションの中には、身の丈2メートルほどの巨大狼が、1匹だけ何かにむしゃぶりついており、辺りには人の身体の一部があちらこちらに散らばっていた。


まひるは身体が硬直し、なにが起きているのか理解ができなかった。

いや…今、目の前で起きていることを直視したくなかった。

あまりにも現実離れしており今までの人生の中でもこんな事はない。

好奇心でナースステーションの中を覗くのは、やめれば良かったとこの時、後悔した。


そこにはバラバラの看護師さんの身体が沢山、散らばっており、よく見ると部屋の奥に病室の患者の人も横たわっている…

そんな時だった、巨大狼が鼻をヒクヒクさせ、まひると目が合った。

「ガルルゥゥゥゥ!ガウ!」


まひるは言葉が一瞬でず、悲鳴をすることさえ忘れていた。

巨大狼がまひるの方に勢い良く走って突っ込んで来ていた。

「きゃぁぁぁぁ〜!えっ⁉︎ちょっとまっ!!」

まひるは咄嗟に廊下の窓際にあった消化器を手にして、慌てながらレバーを押し巨大狼に向けて吹きかけた。

「ガルッ⁉︎」

「きゃぁぁぁ〜!やだ〜!本当はまだ死にたくないぃぃ!」

顔が白くなり目の前が見えなくなった巨大狼は、そのまま勢いがあったため、まひるを通り過ぎ目標を見失って3階の窓から落下する!

「ガルゥゥゥゥ〜!!」

ドスーン!グシャ!

「やだぁぁぁぁ〜!!」

身体が震えて立ち上がることができず、ふと考えてしまう…


死にたくない!


だなんて後1年もしたらこの世から消えるのに…命の危機に直面したまひるの感情が溢れだす。

そんな時だった、窓の下の方から何だか音が聞こえてくる。

まひるは気になり無理やり足を動かして、割れた窓から下の方を覗いてみる事にした。

すると何やら一階の地面の方で、複数の黒い大きな物体がさっき落ちた巨大狼に齧りついていた。


ガブグチャグチャ!

どうやら他にも同じ巨大狼がおり、共喰いしているようだった。

「ん〜〜〜!」

とっさに口を手で押さえたまひるは、身の危険を感じ、自分でも驚くほど自然と身体が動いた。

向かう先は階段だった、上に行くか下に行くか考える。

「下に行ったら巨大狼いるし…やっぱり屋上かな…」

屋上に辿り着いた、まひるはすぐに鍵を閉め柵に寄りかかる。


そんな時だった…信じられないことが起きている!

「はぁ〜はぁ〜何でこんな事ばっかり…えっ!…手が!」

突然自分の手が光りだし、先の方から消えている。

手が消えたことに動揺を隠せないまひるに、追い打ちをかけるように足の方も光って消えてくる!

「うにゅ!うにゅ!ちょっと待って⁉︎何これぇ〜!うにゅ!外も光って消えてる⁉︎」

この病院は3階建てで、小高い丘にあり遠くの方まで見渡せる。

病院から見える建物が光っては消えて辺り一面、消滅しており、町も消えていった。

「うにゅあぁぁぁぁ〜!……」

ついにまひるの身体も全て消えてしまい、辺りには、何も残ってなかった…

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