第1人格:春風
この話はフィクションです。実在の団体、地名などとは一切関係ありません。いや、ほんの少しだけあるかも・・・?
俺はいじめられっこだった。クラスで背が小さかったことと、泣き虫だったことに由来する。暴言や物隠しは当たり前、でも一番ひどいと思ったのは小学3年生以来の友達に裏切られたことだった。時には学校の人気のない所へ連れ出され、何人かにサンドバッグにされたこともあった。
そんなある日のことだった。
その日もいつも通りに上履きを隠され、見つけたのはゴミ捨て場だった。家に帰ってから、自分の部屋(その当時、俺は3つ上の姉と相部屋だった)に戻ってから、
「もう学校行きたくないな・・・」
自然に出た一言だった。誰も聞くことのないはずの。
「そんな事言うものじゃないよ。」
あれ?誰の声だろう。聞いたことのない声だし、第一今この部屋には誰もいないはず。
「僕は君の中にいるんだ。」
僕は空に返事をした。
「君は誰?」
どこからか聞こえてくる声は答えた。
「僕に名前はないよ。だって君が作り出したんだから。」
「じゃあ、僕が名前をつけてあげるよ!」
今考えると、ホントに変なことだったと思う。でも俺は不思議だとも思わなかった。小さい頃からテレビゲームをしてきた僕にとって、それは不思議の世界への入り口だと思ったから。・・・あるいは、不思議と思えないほどに俺の心が傷ついていたせいだろうか。
僕はしばらく考え込んでから、
「春の風・・・春風。君の名前は春風!」
「春風か・・・いい名前だね。素敵な名前をありがとう。」
春風と名付けられた声はうれしそうに言った。
「僕はいつも君の中にいる。春の風のように、やさしく、温かく。」
その後30分ほど、僕と春風はたわいもないことを話した。学校で面白かったこと、いじめてくる子達の不満、今まで親に言えなかった事がいくつもいくつも出てきた。
やがて親に呼ばれても、晩ご飯の準備をしながら小声で話した。
次の日、僕は不思議と学校を休もうとは思わなかった。