イベント?・7
大変間が空いてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
「失礼します。グライエルと申しますが、カナン殿はいらっしゃいますか?」
クーゲル商会に入り真っ直ぐカウンターに向かい、そこに立つ初老の男性に声を掛けた。
「リランド・グライエル様でございますか?」
グライエルと言う名を聞き、私のフルネームを問い返して来る。
「はい」
「そちらにお掛けになって少々お待ち下さい」
敢えてにこやかに応えると、男性は窓際のテーブルを手で示し丁寧なおじぎをして奥に入って行った。
「此方へどうぞ」
間髪いれずにドア前に立っていた若い男性がテーブルへと案内してくれる。席に着くとすぐお茶が運ばれてきた。流石貴族相手の一流店だな。
クーゲル商会は庶民から貴族まで広く商売しているが、ここは家屋に併設された1号店で、広さはそれほどでもないが貴族相手として貴重な品を揃えた店舗となっている。
「お待たせ致しました。グライエル様」
出されたお茶に手をつける間もなく、クーゲルが奥から姿を現した。その表情はにこやかで、かえって何かあるんじゃないかと思わせる。
「久し振りだなクーゲル。急ぎ訊きたい事があってな」
立ち上がり、正面からクーゲルを見据える。思わず表情が険しくなってしまうが、まぁ、火急の要件と分かれば周りも不審に思わないだろう。
「ライラ嬢とフリジアをどこまで送っていった?クリゾンテーム家の門の前までではないな?」
引っ掛かっていた疑問を投げた。門の前まで送っていればクリゾンテーム家の使用人が誰かしら気づく筈。
帰って来ないと騒ぎになるのだから誰も送ってこられた事に気付いていない。ならば、クーゲルも共犯で監禁場所に連れて行ったか、どこか別の場所で降ろしたか。何にせよ何と答えるか。
「お二人ですか。クリゾンテーム家の手前で降りられるとライラ様がおっしゃったのでそこで降りて頂きました。何でも、お屋敷を囲む薔薇の生け垣が外から見ると見事だからフリジア様にお見せしたいとおっしゃって。お二人共まだ見つからないのですか?」
クリゾンテーム家が2人の行方を訪ねに来たと言っていたな。その時にも答えたのだろう、スムーズな返答だ。
…まぁ、最初から用意していたとも考えられるが。
「そうだ。だから私も探している。今領地から戻ったばかりで、一応クーゲルにも状況を聞いておこうと思ってな」
「私もお手伝いさせて頂きます!」
「いや、大丈夫だ」
「いえ、最後に一緒にいたのは私です。お二人の失踪には私も責任があります!」
失踪の責任。ね。
「…責任の所在は兎も角、そうだな。人手は多い方が良い。なら頼む。私はクリゾンテーム家の周りを見てこよう。灯台もと暗しと言うしな」
「私は街を探してきます。そっちの方は詳しいので」
「あぁ、頼んだぞ」
そう言って私はクーゲル商会を出た。
再び馬車に乗り込み、御者台のセルゲイと姿は見えないが居るであろう梟に声を掛ける。
「では、やるか」
路地裏のボロい建物。恐らくはアパートか何かだったのだろうが、今は人気が感じられない。
その入り口付近に2人ヤンキーみたいな少年がたむろっている。
そこに、見覚えのある少年が近付いていく。ヤンキーはその少年に視線を送るが、何事もなかったかのようにまた会話を始めた。少年はヤンキーに目もくれず建物に入って行く。
少年の姿が見えなくなってから入り口に向かう。
「そこは立ち入り禁止だぜ?」
入り口に入る前にヤンキーが声を掛けてきた。
「そうなのか?さっき人が入って行ったみたいだけど?」
そちらを振り返りそう返すと、ヤンキー座りをしていた2人は立ち上がった。
そして此方へ距離を詰めてくる。
「さっきの奴は良いんだよ。アンタは立ち入り禁止だ」
至近距離で睨みながらそう言う。なんか典型的なヤンキーだなぁ。
「それは困る。私もここに用があってね」
「じゃあ入れなくしてやるよ」
そう言って目の前のヤンキーその1が拳を振るった。
次の瞬間。
「っ!」
ヤンキーその1の拳が届くより先に私の拳がその顎にめり込んでいた。
声も上げずに倒れ込むその1。
「てめぇ!」
それを見ていたヤンキーその2は懐からナイフを取り出した。
行動がテンプレだなぁ。
「死ね!」
「死なねぇよ」
雑魚特有の叫びを上げて突っ込んで来るその2。
思わずツッコミと共に顔面に拳を叩き込んだ。その2もそのまま倒れ込む。ちなみにナイフを振るう暇は与えなかった。
しかし、雑魚だなぁ。見張りだったんだろうけど、こんなんしか居なかったのか。
「一応手だけでも拘束しとくか」
こう呟いとけば梟が拘束しといてくれるだろう。まぁ、がっつり急所に決まってるからしばらく起きないだろうけど。
そして改めて入り口に向かい、建物に足を踏み入れた。
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