イベント?・6
読んで下さる皆様ありがとうございますm(_ _)m
「で、このまま現場に向かって良いのか?梟」
ロッドさんを西の詰め所に行かせた事から、取り敢えず街の西部に向かって馬車を走らせているが、これからどうするのか、どこまでが梟の段取りだったのかが分からないので、屋敷から離れてから直ぐに声をかけた。
「それでも構いませんが、リランド様はどうお考えで?」
向かいに現れた梟は試すように此方を見てくる。て言うか試してるな。コイツ。
取り敢えずはっきり現場の特定が出来ているとは聞いていなかったが、この返しから察するにフリジアの居場所は特定出来ているのだろう。
「フリジアの安全を第一に考えるなら一刻も早く現場に向かうべきだ。だが、お前のその様子だとフリジアの安全は確保されているんだな?それも恐らくザックに。ならば、いきなり私が現場に行き着くのもおかしいだろう。1度クーゲル商会へ向かう」
「それがよろしいかと。ただ、ザックにフリジア様の安全が完璧に確保出来ているとは限りませんので、あまり悠長には出来ませんよ」
バカにしてんのか?
思わず口から出そうになった言葉を飲み込んだ。流石に貴族の子息が部下に吐いて良い言葉じゃないよな。でもその位考えてるわ。失礼な。
「大丈夫だ。と言うか、そもそもザックとプリムヴェール家の鼠とお前でさっさと2人を連れ出してこれば早いんじゃないか?」
正直こっからマトモに段取り組んで救出するのは面倒くさい。早く帰って休みたいし。居場所が分かっていて、動ける鼠が3人。うち2人は間違いなく腕が立つ。ならばさっさと救出できる筈だ。
「確かにそうなのですが、それではフリジア様の思惑から外れてしまうので」
フリジアの思惑?まさか…。
「フリジアも共犯で狂言誘拐なんてないよな?」
「フリジア様誘拐はライラ様の計画です。フリジア様が共犯では無いことは間違いありません。ただフリジア様はライラ様の計画を利用しているだけです」
だけじゃねーだろ。そもそも自分の誘拐計画に乗っかって利用するとかなんなの?何企んでんの?何しようとしてんの?あの仔女狐は!?
「なら、私が救出に行かなければならないんだな?」
「行かなくても何とかなりますが?」
「いや、行くよ…。フリジアの思惑に乗ってやるよ」
そう言って私は視線を目の前の梟から車窓の外へと向けた。
なんかモヤモヤする。フリジアの手の上で踊らされてる事が面白くないのかな?でもあの娘が私にも読み切れない娘なのは分かっていたし。
姿を消さずにまだ目の前に居る梟に意識のみを向ける。まだ消えないなら何かあるのか?フリジアの思惑通りの動きをしている筈だ。それも私だけではなく恐らくナタリエとカナリーも。
去り際にカナリーの言った言葉が思い出される。
『リランド様がご予定より早くお戻りになられて良かったです』
恐らくフリジアは意図的にクリゾンテーム家に私の不在の期間を偽って伝えたのだ。ライラが動いたのも私が不在のうちにフリジアを片付けたかったからだろう。
どこまでがあの娘の手の上なのか。この為にフリジア付きの鼠と梟は前以て接触していたのだろう。
…あ。なんかモヤモヤが酷くなった。
「…梟」
「はい」
「お前は、誰の鼠だ?」
目は窓の外へ向けたまま尋ねた。
「今は、リランド様の鼠です」
「…なら、何故お前は私の知らない所で私の知らない動きをしている?」
「リランド様の為になると判断したからです」
「ならば私に何の報告もないのは何故だ?」
認めたくないけど、このモヤモヤは…。
蚊帳の外にされた嫉妬じゃないか!?
しかもなんかフリジアの手の上で踊らされてるし!?
「…リランド様は知らなくても良い事だと判断致しました」
「私がその程度だと…」
伯母様から梟を預けられても私の力量などその程度だと。そう判断したと言うことか。
「違います。此方を向いて頂けますか…リランド様」
懇願する様な響きの声にゆっくりと梟に視線を移した。
普段感情の読めない金の眼は、悲し気と言うか不安気と言うか…珍しく弱気な雰囲気を漂わせていた。
「私は元々マリアテーゼ様よりリランド様の為に動く様にと仰せつかっております。フリジア様の思惑に沿う動きをしているのも、リランド様の為になると思ったからです。報告をしなかったのは…」
そこで何故か言い淀む。
「リランド様が、大層フリジア様を可愛がっていらっしゃる様に見えたので、フリジア様の腹黒い…いえ、狡猾…いや、したたか…」
「フリジアがしたたかなのは分かってるし、なんなら狡猾なのも腹黒いのも分かってるから大丈夫だよ」
必死に言葉を選ぼうとしている梟に言う。この感じだと、梟から見た私ってそんなにフリジアを清廉潔白なお姫様として扱ってたかな?
だとしたら見事に騙されてるよ。鼠として大丈夫?
「私がフリジアに抱いている印象を壊したく無かったから黙ってたって事か?だとしたら梟。鼠として能力に問題があるな。私とフリジアの何を見ていた?」
「それは…申し訳ありません」
「梟もまだまだだね」
そう言うと、梟は苦笑した(多分)
「そうですね。私もまだまだ未熟です」
「まぁ、この件が片付いたら色々聞かせてもらうよ。取り敢えず…着いたな。クーゲル商会に」
取り敢えず段取りとしては、クーゲルに聞き込みか。
「では、行くか」
有益な情報が得られれば良いがな。
憎い面の同級生を思い浮かべ、馬車から降りた。