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イベント?・3

2ヶ月も経ってしまいました。申し訳ありません。

お付き合い下さる皆様今年もよろしくお願いしますm(__)m

 ※主人公視点ではありません。


 ―2日前。グライエル家―


「明日から領地に行くのよね?」

「あぁ。5日位で帰って来るよ」

「もっとゆっくりしてきても良いんじゃない?」

「そうしたいけど休暇ももうあまりないしね」

「あら、私のせいかしら?」


 今年の休暇は大分私に付き合わせた自覚がある。わざと嫌味っぽく言ってみると、目の前の婚約者は苦笑を浮かべた。


「そんなことないよ。…とは言えないかな?」


 嘘でも笑顔で否定しそうな外面の良い婚約者だが、流石に幼い頃からの付き合いの私には猫は被らないらしい。正直な反応が返ってきた。


「それはごめんなさいね。今年は何事もなく終わると良いわね?」


 自分の予定があっても出来るだけ私の為に時間を作ってくれた優しい婚約者。流石にちょっと申し訳なくなったので素直に謝った。と同時に去年は誘拐なんてされていたので釘を刺す。

 この婚約者には拐ってでも自分の物にしようとする輩が居るのだ。それも恐らく1人2人ではないだろう。また同じ様な事が起きないとは限らない。


「大丈夫だよ。護衛も増えてるし」


 自分の魅力を正しく理解していないこの婚約者はのほほんと答える。確かに騎士団の見廻りも増えていると聞くし、グライエル家の鼠が付いているとも聞く。今年は大丈夫だろう。


「気を付けて行ってきてね」

「あぁ。お土産買ってくるよ」


 そう言って微笑む婚約者。

 私はその貴女の笑顔を守りたいの。だから。


「楽しみに待ってるわ」


 私も心から、綺麗に微笑んだ。








 ※ここからリラ視点です。


「今年は日照りが続く為か作物の収穫量が今一つですね」


 領内の農村からの報告書に目を通す。今年は去年より雨も少なく暑い日が続いているせいか作物の収穫量が減っていた。


「そうね。それでも良い方よ。去年リランドが提案してくれた貯水池が機能したお陰ね」


 伯母様からフォローが入る。去年の視察で農地を見た時に気になったので貯水池と用水路の建設を提案したのだ。前世の農地じゃ当たり前だった物だからなんだけど。


「ちゃんと機能してくれて良かったです…。ですがもう少し何か手を打ちたいですね」

「そうねぇ…貯水池を拡大するか、増設するか…。別の産業に手を出すか」

「失礼します。本日の郵便物をお持ちしました」


 執務室で明日からの現場視察に向けて伯母様と資料を見ているとセルゲイが入ってきた。


「此方がマリア様宛。此方がリラ様宛でございます」


 王都の屋敷に届いた私宛の郵便物も今は此方に転送してもらっている。


「有難う」


 礼を言って受け取り差出人だけ確認していく。


「クーゲル家からの物もございました」


 一応郵便物は執事が私達主に渡す前に一通りチェックする。勿論中身は見ないし勝手に処分することもないが、何か気になったり不審な郵便物は今みたいに前もって教えてくれたりする。ちなみに今クーゲル家は左腕骨折事件によりグライエル家にとって要注意扱いになっている。


「あぁ。クーゲル家の次男だろう。この前経営について少し話す機会があったからね」


 クリゾンテーム家でお詫びに万年筆を貰う話しになったその3日後に、万年筆が準備出来たからと次男坊が届けに来たのだ。

 カナン・クーゲルも着いてくるかと思ったが1人で来たらしく、門前で物だけ受け取って帰れと言うのもなんなので上がってもらって軽くお茶をしたのだ。グライエル家心狭いとか噂立てられても困るし。何しろクーゲル商会は最大手と言って良い大手の商会。勿論クリゾンテーム家意外にも多くの貴族の顧客を持っているし、平民相手にも手広く商売している。そんなクーゲル家に悪い印象を持たれるのは正直まずい。

 その際に色々話して情報交換をするようになったのだ。私もグラン商会を経営していくのに生粋の商人の話が聞けるのは有難いし、カナン・クーゲルの身内と連絡が取れるのは何か役に立つ時が来るかもしれない。


「そんなに心配しないでくれ、あれは事故だったんだし」


 クーゲル家の手紙に警戒心を抱くセルゲイに笑顔でそう言うが、その表情は固いままだった。駄目だねー。まぁ去年同級生に夏誘拐されて春に同級生に骨折られてりゃ私の人間関係警戒するわな。何も言わないけど伯母様からも警戒の視線を感じるし。


 無駄だろうが、2人の警戒を解く為に目の前でクーゲル家の手紙を開封して読み始めた。

 勿論2人とも中身を覗き込む様な事はしないが、この2人なら読んでる時の私の表情なんかで色々察するだろう。

 内容は大した物ではなかった。商品を買い付けに行った先からの手紙の様で、その土地の様子や護衛に着いて貰った傭兵からの噂話など。これなら見せても大丈夫だろうと思い2人に向けて見せた。


「ほら、大した内容じゃないでしょう?」


 2人はざっと目を通しひとまず納得した様だった。


「この傭兵の噂話は本当かしら?向こうの国境付近でそんなに小競り合いがあるとは聞いていないけど…。一応裏を取っておきましょうか」

「畏まりました」


 伯母様の言葉にすぐ応えるセルゲイ。

 これである程度有用性のある文通だと思って貰えれば取り敢えずまぁ大丈夫だろう。


「では急ぎの郵便物がなければ話しに戻りましょうか伯母様」

「そうね」


 そして再び領内の資料に目を落とす。


 バレなくて良かった。実は気になった1文があったのだ。


『修練がてらでいつも護衛に着くカナンが今回は着いて来ませんでした』


 休暇も終わりが近いから王都に残っただけかもしれない。だが次男坊がわざわざ手紙に書く位にはクーゲル家にとっては不自然な行動なのだろう。それとも私がクーゲルの同級生だからただの雑談のつもりで書いたのか。


 私が王都に居ないタイミングでわざわざクーゲルが王都に残った。


 何か嫌な予感がした。













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