夏休み2年目・2
外出自粛でストレスが溜まりますが、少しでも暇潰しになればと思いますm(__)m
「ねぇリランド。今度、クリゾンーム家に遊びに行っても良いかしら?」
フリジアの発言に思わずお茶を吹きそうになった。
今日はプリムヴェール家に遊びに来ている。夏休みに入ってから結構頻繁にお互いの家を行き来している。世間的には婚約者に会いに通っている様に見えるだろうが、実質はストレイタも一緒にお茶してたりしてあまり2人きりになることはない。今日もストレイタが同じテーブルについている。
「クリゾンーム家って、確かあそこの双子の片割れがリランドに熱を上げていなかったか?」
ライラのアプローチは中々強烈で、私の周りの親しい面子には知れ渡っていた。勿論ストレイタもフリジアも知っている。
「そうね。でも私はカナリーさんと仲良くなりたいの!」
「カナリー嬢のどこがそんなに気に入ったんだ?」
意気込むフリジアに問い掛ける。ゲーム中ではカナリーとフリジアが親しい描写はなかった。公爵令嬢と男爵令嬢なんて身分も違うし、年齢も違うから接点はなかったから、関わりはなかった筈だ。なんでこんなにカナリーを気に入ったんだ?
「だって、とても素敵な令嬢なのにとても儚げなんですもの!あんなに素敵な令嬢があの双子に隅っこに追いやられて壁の花になるなんて許せないわ!私が親しくなれば、それは大きな後ろ楯になると思うの!」
「純然たる人助けとは、お前にしては珍しいな」
熱く語るフリジアにストレイタが静かに言ってお茶を啜る。温度差凄いな。確かにカナリーはこの貴族社会じゃなければカースト上位になれる美少女だ。ここがギャルゲーじゃなくて乙女ゲームだったら、ライバルの公爵令嬢の嫌がらせに耐えて最終的に王子とか落とせる主人公みたいなタイプ。
「あら。私そんなに打算的な女ではなくってよ」
「いきなりどうしたその口調」
「最近なんかロマンス小説の悪役令嬢みたいな口調になる時あるんだよ。この前なんか高笑いも上げてたし」
そう言ってストレイタがため息を吐く。フリジアは良い子だけど、スペック的にはそれこそライバルの悪役令嬢だよな。
「この前?」
「リランドと婚約した日、僕の部屋に乗り込んできてリランドは自分の物だって高笑い上げてたよ」
「うわぁ」
「お兄様!」
ニヤニヤ笑いながらチクるストレイタを慌てて制止しようとフリジアが声を上げる。もう手遅れだけど。
「そうかぁ。私はフリジアの物なんだ?」
ストレイタの言葉を受けてフリジアにそう問い掛けると、フリジアは顔を一気に赤くした。
「そう言えばお兄様もリラを諦めると思ったのよ…。リラの意思を無視してそんなこと本気で言えないわ…」
もじもじしながらそう言うフリジア。うん。可愛らしいな。とても悪役令嬢にはなれそうにもないな。
「私もフリジアも誰の所有物でも無いからね。お互いを尊重して大事にしていける夫婦になれたら良いと思ってるよ」
そう言うとフリジアはパッと明るい笑顔を浮かべた。
「夫婦…。私、将来はリランドと夫婦になれるのね…」
「そりゃあ、婚約したんだし」
「私、リランドに相応しい淑女になれるように頑張るわ!」
「フリジアは既に私には勿体無い程のご令嬢だよ。そんなに意気込まなくて大丈夫だよ」
「いや、フリジアはまだまだ立派な淑女には程遠いよ。あんまり甘やかしていたらリランドの足手まといになってしまうよ?」
「お兄様!」
ストレイタの言葉にフリジアが今度は怒りで再び顔を赤くした。
うん。確かにまだ立派な淑女には程遠いな。
「これから立派な淑女になるんです!その為にもカナリー様と親しくなりたいんです!カナリー様は身分のせいでオドオドしてますが、礼儀作法は完璧でしたし、あの控えめな態度は私には無いものですし!色々と学ぶ事があると思うの!」
そう熱く語るフリジア。うーん。確かにカナリーはスペック高いしなぁ。それでクリゾンーム家に行きたいのか。まぁ、大丈夫だとは思うけど。
「まぁ、クリゾンーム家とうちとは元々付き合いがあったし、大丈夫じゃないかな?」
ライラとナタリエか何か仕掛けてきてもフリジアならどうとでも対処出来るだろうし。
「本当?ありがとうリラ!」
「まぁ、悪役令嬢フリジアならクリゾンーム家の双子なんてなんて事ないか」
私の考えと同じ事を言うストレイタ。なんか口に出されるとトゲがあるな。フリジア睨んでるし。
「でね。リランドにお願いがあるんだけど…」
「お願い?」
フリジアの言葉に私は首を傾げた。
「大丈夫!大したことじゃないから!」
そのお願いを聞いて、私はストレイタの悪役令嬢フリジアという言葉があながち間違いではないと思ったのだった。
読んで下さる皆様ありがとうございますm(__)m