落ち着け自分。
さて。取り敢えずの対抗策は、親バカ伯爵とラーシュ兄弟と下着の開発か。
1番大変そうな下着の開発を出来るだけ早めに始めなければ。
胸をきちんと潰せてツルペタに出来るように…。
ミュゲを部屋に呼び、アザレと3人で考える。
「コルセットを改良すれば良いのでは?ウエストを絞めるのではなく、胸を絞めるように」
「でもそれではもし着替えを目撃されてしまった際に怪しまれます。男性が身に着けていて不自然ではないデザインにしなければ」
アザレが提案すると、ミュゲが問題点を指摘する。
2人には、学園生活で万が一にも女とバレないように万全の準備をしたいと正直に話している。
アザレはずっと私付きだから私の事を良くわかっているし、貴族の侍女として家事全般の能力も高く教養もある。
ミュゲには膨大な知識がある。
そして前世の人生分も足せばもはやアラフォーの私。
3人寄れば文殊の知恵と言う。
この3人でならきっと造り出せる‼ちょっと大袈裟かもしれないが‼
「あまりに絞めすぎて動けなくなっても困る。見た目が平らに見えれば良いのだから、胸を軽く絞め、腹周りを厚くして寸胴にしたら良いのでは?」
浴衣を着るとき、くびれを無くすために腹にタオルを巻いたのを思い出し、提案する。
「そうなると、個人個人のスタイルで下着の形も変わります。完全にオーダーメイドになりますね…」
「それなら出来るだけリラ様の入学直前に採寸して仕立てなければなりません。ですが、リラ様はまだ成長期。入学後にもサイズは変わります。こまめに仕立て直さなければ」
「それは面倒だな…。胸を潰して腹回りの生地を厚くするだけなんだけどな…」
そもそも、4年後の私がどんなスタイルになっているかも分からない。
母はスレンダーだが、祖母はグラマーで、どっちの遺伝子が作用してくるか現時点では分からない。
「取り敢えず、試作をしていこう。今の私ではそもそも身体に凹凸が無いから、アザレとミュゲに合わせて作ってテストしていこう」
ちなみにアザレは長身でわりとグラマーでいらっしゃる。
ミュゲは小柄だが、やはりわりとグラマーでいらっしゃる。
この2人がツルペタに見える下着が出来たらきっと将来安泰だ。
そんな事を思っている間にも、2人はコルセットの作りやなんやをもとにあーだこーだと構造を考えている。
有能なメイドが居てくれて助かった。
私は将来スレンダーになるのかグラマーになるのか。
剣技とかやってるし身体鍛えてるから筋肉付いてスレンダーになる可能性のが高いかな。
……まてよ。筋肉?
唐突に脳裏に前世のテレビで見たボディビルダーの姿が浮かび上がる。
ムッキムキの男性チャンピオンと女性チャンピオン。
男性はともかく、女性チャンピオンを見て、「うわー。女の人でもあんなに筋肉ブロック分けされるんだー。すげー!身体が筋肉ごとに区画分けされてるー‼」と思ったものだ。
そう。あの女性チャンピオンの胸はもはや胸と言うより胸筋。
あの身体を手に入れれば、下着の心配も無いのでは⁉
あ、でもウエストはくびれてたから、腹筋をもっと鍛えて筋肉で厚みを持たせなければ。
あと4年、下着と共に身体もつくっていこう‼
やはり食生活はささみとゆで玉子だろうか。
厨房に高タンパクの特別メニューを考えて持っていかないと。
あと、筋トレ。筋トレ用に講師付けてくれないか父上に頼んでみよう‼
よし‼
私はこの時、お色気キャラを回避すると言う目的に捕らわれすぎて、完全に自分を見失っていた……。