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夏休み2年目・1

大変間が空いてしまいました…。

申し訳ありません。

「リランドと正式に婚約したのだから、私も付き合う人は選ばないといけないわよね」


 夜会も終わり、無事に社交シーズンと言う名の夏休みに入った。フリジアも社交界デビューしたのでプリムヴェール家での催しの招待客にフリジア枠が発生し、今誰を呼ぶかうちに相談に来ていた。


「それを言うなら私もだよ。何しろ天下のプリムヴェール公爵家のご令嬢を娶らせて貰うんだからね」


 と言っても今までも付き合う相手は選んできたつもりだし、元々プリムヴェール家とは親戚関係だったからお互いに不利益になるような相手との付き合いはない。そんなに気にする事はないだろう。


 でもまぁ一応と、お互い招待予定のリストを眺めていると、珍しくフリジアがもじもじしだした。なんだ?トイレか?


「…あのね。リラ、クリゾンテーム家を呼んだらマズイかしら…?」

「は?」


 もじもじしながら言いづらそうにフリジアが口にしたのはあのクリゾンテーム家。いや、元々うちも付き合いあった家だし、娘に問題はあっても家としては問題ない。娘に問題あっても。


「クリゾンテーム一家を呼ぶの?」

「ううん。カナリー様だけ呼びたいの。夜会で凄く心細そうにしていたから、私が何か力になれればと思って」


 成る程、プリムヴェール公爵令嬢と親しいとなれば、カナリーがいくら立場が弱くてもフリジアの後ろ楯で一気に勝ち組になれる。双子の姉に虐げられているカナリーを守るのには良いかもしれない。


「良いんじゃないかな?クリゾンテーム男爵は元々父上と交流のある方だし、フリジアも夜会で面識があるから、呼んでも不自然ではないよ」

「そうよね!ありがとうリランド」


 それに、フリジアとカナリーが親しくなれば、クーゲルをカナリールートに入れるのに都合が良いかもしれないし…。

 利用してごめんな。カナリー、フリジア。

 明るい笑顔を浮かべるフリジアに心の中で謝った…。










「本日はお招き頂きありがとうございます」

「此方こそご足労頂きありがとうございます」

「フリジア様もグライエル様もご機嫌麗しく」


 にこやかに招待客と挨拶を交わすフリジアの横には同じくにこやかに挨拶を交わす私。

 今日はプリムヴェール家のフリジア主催のお茶会で、私は未来の旦那としてフリジアをエスコートし、共に来賓に挨拶をしていた。

 流石にプリムヴェール家の来賓だけあって年の近いご令嬢達も私に目もくれずフリジアしか見ていない。いや、ちょいちょいこっちをチラ見してくるけど、まぁ露骨にガン見はしてこない。


 そういえばカナリーも出席すると返事が来ていた筈だけど、ちゃんと来ているだろうか?

 挨拶をしつつ周りに視線を走らせる。


 あ、居た。


 1人では来られなかったのか、クリゾンテーム男爵に付き添われてすみの方でもじもじしている。双子の姉は居ないようだ。夜会での様子だと恐らく置いてきたのだろう。

 男爵が居るなら大丈夫だろう。取り敢えず挨拶に集中するか。


「どうぞ楽しんでいらして下さい」

「…っはい」


 にこやかに挨拶をすると目の前のご令嬢はちょっと顔を赤らめてお辞儀をして去っていった。…あー。ホントなんでリラって男女問わずモテんだろ?ゲームの製作者どんな設定してんだよ?


「…し、失礼致します。フリジア様、本日はお招き頂きありがとうございます…」


 クリゾンテーム男爵に軽く背中を押されながらフリジアが目の前に来た。緊張しているのか声が震えているが、挨拶と共にされたお辞儀はライラなんぞよりよっぽど綺麗だった。カナリーって生まれはともかく攻略対象だけあってスペック高いんだよなぁ。


「カナリー様!来て下さってありがとうございます。社交界1年生同士仲良くして下さいね」


 フリジアが優しい笑顔で言葉をかける。いや、お前正式デビューは確かに今年だけど、カナリーと違って昔からあっちこっちに顔出してたから社交界余裕だろ。


「そ、そんなもったいないお言葉…」


 顔を赤くして俯きがちになるカナリー。ここは取り敢えずフリジアと話させた方が良さそうかな。


「お越しいただきありがとうございます、クリゾンテーム男爵」


 それではと、クリゾンテーム男爵に挨拶をする。男爵は此方に向き直り丁寧にお辞儀をした。


「此方こそお招き頂きありがとうございますリランド様。カナリーが1人では心細いと言うので私も着いてきてしまいました」

「お気になさらず、どうぞごゆっくりなさって下さい。フリジアはカナリー様が随分気に入られた様で、親しくして頂けると嬉しいです」

「畏れ多い限りですな。うちのライラはご迷惑をお掛けしたでしょうに」


 あー。まぁねー。諦めが悪いお嬢さんで結構迷惑ですね。


「そんなことはありませんよ。それにカナリー様には関係のない事ですから」


 にこやかに返すと何か察したのか男爵は苦笑いを浮かべた。


「お話中失礼致します。クリゾンテーム男爵もようこそお越し下さいました」


 カナリーと話し終わったのかフリジアが男爵に挨拶をする。


「此方こそ挨拶もせず失礼致しました。本日はカナリーをお招き頂きありがとうございます」


 フリジアに向き直りやはり丁寧にお辞儀する男爵。


「私是非カナリー様と仲良くさせて頂きたくて」

「勿体ないお言葉ありがとうございます。カナリーはあまり親しい友人がおりませんので、此方こそ仲良くして頂きたい」

「此方こそよろしくお願い致しますわ。ね、カナリー様」

「は、はい!よろしくお願い致します!」


 顔を真っ赤にするカナリーと優しく微笑むフリジアを、私と男爵は微笑ましく眺めたのだった。


 カナリーには申し訳ないけど、上手くクーゲルをバッドエンドに落とせると良いなぁ。





























 

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