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夜会・4※主人公視点ではありません。

リラとリランドの呼び方を意図的に混ぜて使っています。もしかしたら気になるかも知れませんが脱字ではありませんのでお気になさらないで下さい。

 ※フリジア視点になります。


「さて、牽制も済んだし挨拶回りでもしてこようか」


 お兄様の言葉にチラリとホール内に視線を走らせる。私とリラのやり取りを見て、悔しそうにしているご令嬢や、落胆しているご令嬢、表情は変えずにこちらの様子を伺っているご令嬢と、リランド狙いだったであろうご令嬢達のリアクションは様々だが、私が挨拶だけで潔く引き下がったのを見て誰もリラには近付く様子はない。

 牽制は成功ね。


「そうね。欠席の夫に代わって婚約の挨拶周りをしていかなくちゃ」


 本来であればエスコートはリラがしてくれる筈なのだけれど、今回は仕方ない。リラが居ないと分かっていて出席することにしたのだから。まぁ、お兄様にエスコートされるのもかなりステータスは高いから問題はないのだけれど。


「私のエスコートのせいでお兄様もご令嬢とお近づきになれませんわね」

「可愛い妹の為だ。仕方ないさ」


 軽く嫌みったらしく言ってみるが、このどこまでも優秀なお兄様は爽やかな笑顔でさらりとかわす。

 内心では助かったと思っているくせに。あくまでもリラを諦める気のないこの兄は、未だに婚約の話は全てのらりくらりとかわしている。

 兄だけではない。先程会って挨拶を交わしたが、ラーシュ兄弟も王子2人も諦める気はまだないらしい。

 全く私の夫はモテすぎて困る。


 お兄様と共に両家と付き合いのある家の方々に挨拶をして回る。好意的な方もいれば、娘をリランドに嫁がせようとしていた方のご令嬢は敵意剥き出しだったりもした。流石に親御さんは態度には出ていなかったが。まぁ、貴族の政略結婚なんて、他にも条件の良い相手がいれば候補が1人こけたくらいで親は気にしないだろう。娘の方はリランドに惚れ込んでいればそうはいかないが。


 この、今目の前に居るライラ・クリゾンテームなんてまさにその筆頭ではないだろうか。


「この度はご婚約おめでとうございます。いやぁ、先程挨拶を交わされてる姿を拝見しましたが、お似合いでいらっしゃる」

「ありがとうございます。リランド様はとても優れたお方ですから、私も妻として恥ずかしくないように精進しなければと思っております」


 クリゾンテーム男爵と奥方は嘘の無さそうな笑顔で祝いの言葉をくれた。恐らくこのご夫妻の言葉に嘘はない。社交界でもクリゾンテーム男爵夫妻の人柄の良さは評判だ。

 男爵自身は有能なのに嘘のつけない性格で、騙しあいが常の貴族社会では出世できていないと言う。なんとも損な人だ。

 第2夫人を娶ったのも、夫人の生家での不遇な扱いを見かねての事だと言うし。それを許す第1夫人の心の広さも凄すぎる。


 先程から敵意剥き出しのライラ・クリゾンテームの隣には、瓜二つの顔で興味なさげな双子の片割れ、ナタリエ・クリゾンテーム。2人の後ろに所在なさげな雰囲気で居るのが第2夫人の娘のカナリー・クリゾンテーム。


 正直上の2人よりも断然可愛い。赤毛に灰青色の目という目を引かない配色だが、そんなもの気にならないくらい顔立ちが可愛い。不安げな様子が庇護欲を掻き立てる。あ、私より年上だけれど。


「カナリー様。もしやご気分が優れないのですか?」


 男爵とはお兄様が話しているのでこの隙にとカナリーに声を掛けた。

 まさか声を掛けられるとは思っていなかったのか、カナリーがびくりと体を震わせこちらを見た。


「あ、は、はい。あ、いえ、そんなことは…」


 私達相手に気分が悪いなどと言ったらまずいと思ったのか、肯定を改めて否定する。

 まぁ、貴女の姉は大分気分の悪さを全面に押し出してるけれども。


「カナリーはこの様な場に出たのは初めてですので、緊張しているのでしょう。よろしければ外の空気を吸わせてやっても?」

「お気になさらないで下さい。私も初めて他所のお宅にお呼ばれした時は緊張致しました。カナリー様。中庭は花も見事で気が休まりますわ。少し休憩なされては?」


 にっこり笑ってそう言うと、カナリーは安心したのか少し表情を和らげた。


「はい。では、お言葉に甘えさせて頂きます。失礼致します」


 そう言って可愛らしく淑女の礼をして、中庭へと向かっていった。


「では、私達も失礼します」


 お兄様がそう言って礼をするので、私もならって礼をする。

 男爵夫妻も双子も礼をした。ライラは最後まで敵意剥き出しだった。貴女は親を見習いなさいよ。


「どうだった?ライラ嬢は?」


 一見爽やかな、しかし身内の目にはわかる意地の悪い笑顔を浮かべてお兄様が聞いてくる。


「あんなの相手になりませんわ。カナリー様がライバルだったら手強いでしょうけれど」

「あんなに気弱な方はリランドになんか怖くて近づけないだろうよ」


 確かに。あの気弱さではご令嬢に囲まれるリランドには近付けない。

 でもリラはカナリーを見たら絶対守ってあげたくなるわ!下手したらクリゾンテーム男爵みたいに不憫に思って娶っちゃうかもしれないわ!

 …流石にそれはないか。そもそもリラ女だし。バレたらまずいものね。

 そう。リラは女なのだ。正式に婚約したとはいえ、1番油断ならないのは…。


「お兄様。リランドは私の夫ですからね」

「なんだい改まって。分かっているよ」


 そう言ってお兄様はやはり一見爽やかな、しかし本心の全く読めない笑顔を浮かべたのだった。




















フリジア、ファインプレーです。


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