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作戦立案

地震大丈夫でしょうか?津波が怖いです。

 新学期が始まりはや数ヶ月。特にクーゲルから何か仕掛けられる事もなく、平和な日々が過ぎていった。

 平和なのは良い事だが、嵐の前の静けさとかじゃないだろうな。


「グライエル。今年の王家主催の夜会はどうするんだ?」


 実技の授業が終わり、着替えも終えた私にブラッド先生がそう尋ねた。


「警護のメンバーに選ばれるのであれば、欠席します。その為に去年出席したのですから」

「まぁ、お前は間違いなく選ばれるだろうな。あとはラーシュとダラスマニ、クーゲルも確実だろうが、ラーシュとダラスマニは正式に社交界に出るだろう?」

「ダラスマニはどうか分かりませんが、ラーシュは出ると思います。そんな話をラーシュ夫妻とうちの両親がしていました」


 ダラスマニはダラスマニ家の次男として正式にデビューするなら家に帰って両親と兄と出なきゃならないしな。夫人と顔会わせなきゃならないからどうするか。妾の子だし、辞退するかもしれない。

 アドニスは出すって言ってたな。正式にデビューさせて、いい加減どっちかは婚約させないとってラーシュ夫妻がぼやいてた。何か申し訳ない。


「フリジアもまだ出席しませんからエスコートも必要ないですし、私は警護に回ります」

「そうか。他の候補者には確認しないとな」

「そうですね。では、失礼します」


 先生に礼をして部屋を出た。クーゲルは警備に選ばれる。平民のクーゲルがご令嬢と出会える機会だ。ここで必ずカナリールートに入れる!帰ったらまずカナリールートの復習と、確実に出会いイベントに持っていく為の作戦を練らなければ!


 アドニスの待つ教室に向かいながら、ゲームの記憶を辿る。


 そういえば思い出せないがカナリー以外にも何人か出会えるご令嬢が居た筈。もしクーゲルが私と同じでこのゲームの知識があるなら自ら攻略対象に出会いに行く可能性もあるだろうか?

 それともアイツの『望む未来』とやらがリラルートのハッピーエンドならば、他の攻略対象には近付かないだろうか?

 このゲームは確か3年目の初めに最終的にどのルートに入るか決定するイベントが起きるのだが、それまでは出会えた攻略対象を同時攻略出来た筈だ。イベントのタイミングとかでどうしても同時攻略無理なキャラも居たが、今のクーゲルのステータスなら恐らく全攻略対象と出会える条件が整っている筈。

 ならば、私の攻略が厳しいと判断したら他のご令嬢にも手を出すのでは?


 もし私の覚えていないカナリー以外のご令嬢と出会いに行かれたら、バッドエンドに誘導出来ない。


 それはマズイ。他のご令嬢とのハッピーエンドがどんなものか覚えていないが、幸せになられても癪だし、まんまと騎士になられるのも嫌だ。ならば何が何でもカナリールートに入れなければならないが、万が一の為に手を打っておかなければ。


 幸い今の私には非常に優秀な駒が与えられている。完全に私怨で私用する事に頷いてくれるかは分からないが、動いてくれればかなりの助けだ。


 帰ったらまず梟の説得だな…。


「アドニス。待たせたな」

「いや、じゃあ帰るか」


 考えがまとまった所で教室に着いた。待っていたアドニスに声をかけ、帰路についた。











「梟。居るか?」


 部屋に着いて早々に声をかける。


「お帰りなさいませ。珍しいですね、リランド様からお呼びとは。また何か御座いましたか?」


『また』とは嫌味か。人をトラブルメーカーみたいに。


「何もないよ。平和そのものだ。でも頼みたい事があるんだ」


 梟は微かに首をかしげる。


「平和そのもの、ですか…なのに頼みたい事とは?」


 何か含みのある言い方だな。ダメかい平和そのものじゃ。


「あぁ。王家の夜会に忍び込めるか?」


 私の言葉に梟は軽く目を細める。


「王家の夜会とは。警備が最も厳重な催しではないですか。それに忍び込めと?」


 そう。国中の貴族が王城に集まるのだ。警備はかなり厳重だ。私達学生が駆り出されるのも研修の為でもあるが単純に頭数が必要というのも理由の1つだ。


 騎士達だけでなく恐らく王家の鼠も目を光らせているだろう。其処に忍び込むのは容易ではない。忍び込めるかどうかで梟の使い方も変わってくる。


「流石に無理か…」


 なら違う方向で動いてもらうしかないか…。


「出来ますよ」

「じゃあは?」


 別のプランを口にしようとした瞬間にされた梟の返事に変な言葉を口走ってしまった。タイミング悪いわ!


「確かに難しいですが、出来ますよ。夜会で何か探るんですか?」


 梟の目は細められたままだ。自分をどう使うのか。それで私の価値を測ろうとしているのか。


「…大した事ではないんだ。梟を使う程の大層な目的じゃない」

「ですから、それは何なのかと訊いています」


 梟の目に言い出しづらくなり、言葉を濁すとはっきりと問い詰められた。居心地が悪くて思わず俯いてしまう。

 学校であれだけ意気込んだのに、本人を目の前にすると本当に大した用じゃないのに使う事が申し訳無くて言い出しづらい。


「…貴方は人を使う事を覚えなくてはなりません。だから、何でも良いのですよ。それがどれ程つまらない事でも」


 梟の言葉に顔を上げる。細められた金眼と目が合う。その目は値踏みしていると言うより、優しさを感じた。まるで慈しまれているような。


「警備に配置される同級生の動向を監視してもらいたい。そして、夜会で接触した人物の身辺調査を」


 ついその目に気が弛んだのか、目的をさらりと口にしてしまった。梟の表情は変わらない。


「同級生。とは?」

「カナン・クーゲル」

「カナン・クーゲル…」


 クーゲルの名をオウム返しに呟いた梟の目が、一瞬更に、鋭く細められた気がした。


「承知致しました。お任せ下さい」


 そう言って恭しく礼をする梟。


「あぁ、頼んだ…すまないな、つまらない用事で」

「いえ、リランド様。貴方の為さる事に疑いを抱く事以上につまらぬ事などありません。マリアテーゼ様、いえ、グライエル家全てが貴方を信じております」


 そう言って顔を上げた梟の目は、再び優しく細められていた。































読んで下さる皆様ありがとうございますm(__)m


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