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反省。再び

「申し訳ない事をした…」

「本当です。私達使用人も皆心配していたのですよ」


 父上と母上への謝罪を終え、反省して部屋に戻ると、今度はアザレとミュゲが良い笑顔で待ち構えていました。待ち構えていたっておかしいんだけど。アザレは私の部屋に控えてるのは当たり前なんだけど、ミュゲまで居て、2人から感じられる圧は控えて居ると言うより待ち構えていたって表現がしっくり来た。


 そしてお説教再び。


 本日何度目かの申し訳ないに何か気が滅入ってくる。自分が悪いんだけど。


「休暇中に治る様に私とミュゲで徹底的にお世話しますから。リランド様は左腕は一切使わないで下さいね!」

「はい…」


 もう大人しく言う事を聞くしか私に選択肢は無かった…。













「リランド、暫く見ない間にまた少し逞しくなったかな?腕の調子はどうだい?」

「貴方。ヒビが入っているのですよ?そんな軽く訊く事ではありませんわ。まだ痛むのかしら?本当に無理をしてはいけませんよ。私達も心配していたのですよ」


 キラキラした金髪碧眼のイケメンと心配そうな表情の銀髪碧眼の美女。ラーシュ侯爵夫妻だ。


「何もしなければもう痛みはないので大丈夫です。ご心配お掛けして申し訳ありません」


 頭を下げ様とすると、それをラーシュ侯爵が手で制した。


「なに、気にするな。子供の心配をするのは親の役目だ。まぁ、リランドは私達の子ではないが、うちの愚息達の兄弟みたいなものだからな。リランドの心配をするのも私達の役目だ」

「有り難うございます…。というか愚息達って」


 ウィリアムもアドニスも優秀だと思うんだけど…。


「まぁ、2人ともそれぞれ頑張ってはいるみたいだけれど、諦めが悪い所があるでしょう?リランドに迷惑をかけていないかしら?」


 あ、その事ですか。ため息混じりの夫人の言葉に、納得した。

 今日グライエル家で夜会が開かれており、今はその真っ最中。周りには事情を知らない出席者が大勢いるのでハッキリとは言えないが、2人とも未だに私を諦めていない事が問題なのだろう。


「申し訳ありません…」

「貴方が謝る事ではないのよ?まぁ、貴方さえ良ければうちは全然良いんだけれど……どちらでも」


 とても良い笑顔でそう言う夫人。

 …どちらでも?


「どちらでも、とは…?」

「そうねぇ。2つの意味があるのだけれど」


 困惑した様子の私に優雅にクスクスと笑いながらそう言う夫人。隣のラーシュ侯爵も面白そうに笑っている。

 2つの意味。どちらでもと言う事は二者択一だ。2つの二者択一。

 恐らく1つはウィリアムかアドニスか。と言う事だろう。

 となるともう1つの二者択一は…?


「リランドが女の子だったらうちに嫁に欲しかったなぁ」

「あら貴方。それは言ってはいけないわ」


 ラーシュ侯爵の言葉を面白そうに夫人が窘める。

 まさか、それが答えか?女に戻って嫁いでも、2人ともフッて騎士になっても。と?


「お二方とも…笑えない冗談ですよ…」


 私の低いテンションと声に、何かを察した2人は『うちの愚息達が申し訳ない』と見事にハモって下さった。







「グライエル。腕の調子はどうだ?」


 声を掛けられ振り返る。


「…ブラッド先生?」

「何で疑問形なんだ?」


 声でブラッド先生だと判断したが、自信が無かったので疑問形になってしまった。

 振り返った私の前には、何時もの動きやすい剣術の先生の格好ではなく、貴族らしく着飾ったタキシード姿のイケメンが立っていたのだから。


「失礼しました。雰囲気が何時もと違ったもので、一瞬誰かと…」

「あぁ、こういう格好では会った事がなかったか。今日は騎士としてではなく伯爵の友人として出席しているからな」

「そうでしたか。腕は大丈夫です。屋敷全体から絶対安静を強いられていますので」


 ほんと、アザレとミュゲだけでなく皆が私に何もさせないように目を光らせているから、鍛練も左腕に負担の掛からない最低限しかできないし、休暇中本を読んで姉妹達とお茶をする位しか出来ていない。

 まぁ、ゆっくり出来て姉妹達は嬉しそうだが。


「なら良かった」


 そう言ってブラッド先生は私の襟元に視線を落とした。


「あ、タイ有り難うございます。早速使わせて頂きました」


 今日のタキシードに合わせたのは誕生日に先生から貰ったループタイだ。

 ちなみに今日のコーディネートはダークグレーのジャケットに紺のシャツ。先生から貰った金の台座にオニキスの様な石とサファイアの様な石とルビーの様な石…。うん。前世と同じじゃないんだよな。宝石の名前。もう暫定オニキスサファイアルビーで良いや。それをあしらったループタイ。あと、胸元に金糸で刺繍の入った紺のチーフ。今日も魔王感漂う暗いコーディネートですね。


「あぁ。良く似合っていて良かった。…因みに、俺以外からタイは貰ったか?」

「…いくつか」


 私の答えにブラッド先生はため息を吐いた。


「因みにそれは公の場で使ったか?」

「いえ」


 流石にそんな真似はしない。前世じゃ女性からのネクタイのプレゼントは今の私にはよろしくない意味しかなかったから、念の為未使用で保管してある。


「なら良かった。これからも使うなよ。変な噂は立てたくないだろう」


 やっぱりこの世界でもネクタイのプレゼントには同じ様な意味が込められているのか。


「分かりました」


 私の答えに満足気に頷いて、先生は他の来客に挨拶しに去っていった。


 …あれ?先生のタイは大丈夫なのか?先生だしまさか変な意味は無いよな?

 先生の眼の色と私の眼の色、2人の髪の色があしらわれたループタイ。


 前世でのネクタイをプレゼントする意味は。


『貴方に首ったけ』


 まさか、な…。


 無意識にループタイを握り締めた…。


























因みに香水のプレゼントはフランスでは『貴方を独占したい』らしいです。

ウィリアムらしいですね。

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