問題提起。
取り敢えずの対策は決まった。
だが策が1つではやはり心配なので、何か他の対策も考えておきたい。
……が。
服飾の本を読んでいるうちにあっという間に昼食の時間となり、あっという間に剣の稽古の時間となってしまった。
稽古着に着替え、木刀を持って庭に出ると、父上が既に素振りをしていた。
「申し訳ありません。遅くなりました」
駆け寄り、頭を下げる。
「頭を上げなさい。私が楽しみで時間まで待ちきれなかったのだから」
そう言うと、私の頭を優しく撫でる。
顔を上げると、父上は優しい笑顔を浮かべていた。
父上…ルーベンス・グライエル伯爵は、私と同じ黒髪紅眼で、長い髪を1つに結っている。
少し冷たい印象を受けるイケメンだが、私達子供には優しく、嫁には強く出れず、おばあ様には頭が上がらない……要はヘタレだ。
だが、外では文武両道眉目秀麗の大層有能な騎士団長兼グライエル伯爵家当主。
内弁慶ならぬ外弁慶だ。
そして、父似の私を大層溺愛している。娘として。
「本当ならこんな稽古ではなく、本を読みお茶をしてゆっくり過ごしたいのだが…」
「父上。私は次期当主として、騎士団長である父上の嫡男として恥ずかしくない様になりたいのです」
甘ったれた事を言い出す伯爵に息子としての模範解答を返すが…。
……まてよ。この親父にベタベタに甘え、女として生きていきたいと言えば、もしかしたら跡継ぎとして学園に通わなくても済むかもしれない!
「お待たせして申し訳ありませんグライエル伯爵」
第2の対策に思い当たった時、声がかけられた。
振り返ると、銀髪の男の子が2人、こちらに歩み寄って来る。
ラーシュ侯爵家の兄弟、ウィリアムとアドニスだ。
兄のウィリアムは14歳。来年騎士候補の通う男子校とは別の、跡継ぎや、騎士になる気の無い子息、令嬢達の通う学園に入学する。
弟のアドニスは同い年で、私と同じく騎士候補生の学園に入学する気でいるらしい。
「良く来たな、二人とも。もう少し遅くても良かったのだぞ?リラとゆっくり過ごせたからな」
冗談か本気か分からない事を言う。
いや、多分本気だ。この父親はかなり私を溺愛している。
その証拠にさっきから私の隣にピッタリ引っ付いて離れない。
「お約束の時間に遅れるなど、侯爵家の恥。それに、お忙しいグライエル伯爵様のお時間を頂くのですから、1秒たりとも無駄に出来ませぬ」
笑顔を浮かべてそう言うウィリアムは非の打ち所の無い美少年だ。
だが、その笑顔になんか黒い気配がする。
なんか父上との間に火花的なものが見える。
あぁ。やはりゲーム通りなのか……。
1人、胸の内で呟いた…。
少しずつでも出来るだけ上げて行きたいと思います。