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誕生日・2 その3

「しかし、本当に凄いな」


 キッチンでお茶を淹れて戻ると荷物を眺めていたアドニスが呟いた。


「断ったんだけどな。寮だと狭いからって」

「ご令嬢方か?」

「あぁ」


 私の塩対応にも未だにめげずにアプローチしてくるご令嬢方。誕生日が近くなるとやはりプレゼントを送ると言い出した。

 その全てに寮は狭いし、頂いても置き場がないと断り、お気持ちだけで充分ですと返したのだが……。

 聞き分けの良いご令嬢は、ではご実家にと実家に送ると言ってきた。聞き分けの無いご令嬢は、どうしてもと寮に送り付けてきた。


 どっちにしても送るという選択を諦めてくれないご令嬢方。どんなに頑張っても私と結婚は出来ないのに。なんか申し訳ない。


「確認しなくて良いのか?」

「は?」


 アドニスの言葉に思わず睨み付けてしまった。

 昨日からプレゼント貰う度に機嫌悪くした奴が何言ってんだ?

 お前の前でプレゼントの確認なんかしたらまた朝みたいになるんじゃないのか?

 そんな気持ちが込もってしまった私の眼を見てアドニスは少し焦った様に口を開いた。


「いや、誰から来たか位は確認しても……。流石にご令嬢に嫉妬はしないし、王子殿下とストレイタ様は覚悟してるし」

「……気になるのか?」


 睨んだままの私の言葉にアドニスは更に焦る。


「いや、その……兎に角、確認しよう!」


 無理矢理私を椅子から立たせ、ベッドの前に追いやる。

 嘘が下手と言うか、馬鹿正直と言うか。


 仕方無い、取り敢えずどの家から来たか位は確認するか。

 包みに捺された家紋を確認していく。


 やはりアプローチしてくるご令嬢方の家紋が殆どで、その中に王家の紋が捺された荷物が2つ。レギアスとルークからだろう。そしてプリムヴェール公爵家の紋の荷物が2つ。これはストレイタとフリジアか。


「あれ?またラーシュ家から荷物来てる」


 ラーシュ家の紋が捺された荷物が1つあった。


「開けてみよう!」


 それを見たアドニスが食い付いてくる。

 何なんだよ。お前何なんだよホント。

 もう面倒になっていた私は無言でラーシュ家の荷物を開け始めた。

 外の包みを開けると中にはリボンのかかった細長い木箱が。リボンをほどいて木箱を開ける。


「……ワイン?」


 中には薄く黄色がかった液体の入ったボトルとワイングラスが2つ収まっていた。

 ボトルを手に取りラベルを見ると、有名な銘柄の甘口のワインだ。度数も低いので夜会などで女性に人気だったのを覚えている。まだ未成年だったので私は飲めなかったのだが、とても気になっていた。


「リランド、成人したら酒が飲みたいって言ってただろ」


 アドニスの言葉にハッとした。

 そうか!成人したから酒が飲めるのか!と言うか、そしたらこれはアドニスからなのか?


「これアドニスから?」

「……あぁ」

「ありがとう!これ飲んでみたかったんだ!」

「なら良かった。人気らしいから選んだんだけど」

「夕食後に飲んでみよう!アドニスも飲むだろ?」


 ワインボトルをくるくる回して眺める。あぁ!漸く酒が飲める!前世じゃ毎日の様に飲んでたから凄く飲みたかった!

 ちなみに学園では飲酒は特に制限されていない。だが飲むなら自己責任。飲み過ぎて次の日の授業に支障が出たら大変なペナルティが課せられると聞いた。自制出来ない奴はそれまでと退学させられるとも。

 まぁ、一杯位なら余裕だろう。


「良いのか?リランドの飲む分減るぞ?」

「1人で飲むのも勿体無いだろ。アドニスがくれたんだし遠慮するなよ。グラスも2つあるし」

「じゃあ、遠慮なく」


 そう言ってアドニスは今日初めて笑った。

 と言うか、同梱されているグラスが2つって、コイツ初めから一緒に飲む気だったんじゃ?

 まぁ、いいか。取り敢えずアドニスの様子も戻ったし。

 そしてテーブルに戻りお茶を飲み終えたアドニスはまた夕食の時にと言って部屋に戻って行った。


 部屋に1人になったので、ベッドの上の荷物に向き直る。

 さて、荷物を確認して礼状を書かねば。

 だがその前に。


 ポケットにしまっていた箱2つを取り出す。1つは先生から、1つはクーゲルからの物だ。


 1番の問題のクーゲルからのプレゼントを開ける。見れば何か思い出すかもしれない。

 細長い小さめの箱を開けると、中には万年筆が入っていた。箱にはクーゲル商会のロゴが。よく見るとさりげなく万年筆にも入っている。

 自社製品かい!いや、それを言ったらウィリアムのもそうだけど。

 取り敢えず手に取り眺めてみる。そう言えばクーゲル商会の万年筆はデザインも良く書きやすく、人気商品だと聞いたことがある。


 …聞いたことがある?誰から?


 記憶を辿る。万年筆の話など誰かとしただろうか?だが心当たりがない。確かに聞いたことがある筈なのに…。


『クーゲル家の万年筆は人気で中々手に入らないのに。ありがとう。大事に使わせて貰うよ』


 確かそう言ったのだ。

 あれは……。


 ………。


 そうだ。あれは私だ。正確にはゲーム画面のリラ・グライエルだ。


 万年筆。選択肢の1つはまさしくこの万年筆だ。


 無難な選択肢で、好感度が低い時なら当たり、まぁまぁまぁの時ならそこそこ上がり、高い時だと外れの選択肢になるが、それでも多少は上がると言う物だった。


 今私の好感度が高くは無い事は明らかだろう。それでこの選択なら、クーゲルはやはりゲームを知っているのか……?

 だがゲームと違い私の好感度は一切上がらないがな!


 今のところ私の好感度を1番上げたのはアドニスのワインだな!


 取り敢えず万年筆を机にしまい、夕食後のワインを楽しみに他のプレゼントを開け始めた。
























































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