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誕生日・2 その2

 朝食を終え、登校した。

 アドニスはずっと静かだった。距離も何時もより少し離れていた。


 何なんだよもー!ホント誕生日ってもっと嬉しいもんじゃないのか!?


 朝からもう全てが面倒になった私はなげやりな気分で1日を過ごす事となった。








「グライエル。今日誕生日だな。大変だろう」


 ブラッド先生の言葉に露骨に嫌な顔をしてしまった。

 授業も終わり、着替えも終わり、先生の書類整理を少し手伝っていた所だった。


「誕生日って昔はもっと楽しいモノだったんですけどね」


 成長して身内以外の貴族と関わるようになってからは年々面倒になった。

 主に婚約者にならんとするご令嬢達からのアプローチとか、まぁ、私が女と知っている身内の男連中からのアプローチとか。


 今朝だってなんかゴタゴタしたし。

 アドニスの様子はずっとおかしいし。

 だからこんな残って書類整理手伝ってるんだし。

 クーゲルは徹底的に避けてるせいか、元々何もする気がないのか何も接触はないし。


「まぁ。貴族の宿命だな。特にお前さんは立場が厄介だからな」


 意地の悪い笑顔を浮かべる先生。

 面白がってる!絶対面白がってる!


「先生。こちら終わりましたので失礼させて頂きます」


 任された分の書類整理を終えたので、整理した書類を先生に渡して帰ろうとした。


「あぁ、助かった。これは礼だ。取っておけ」


 書類と引き替えに先生が小さな包みを差し出す。


「……先生。これは?」

「大した物じゃない。取っておけ」

「いや、大した物じゃないとかではなく」


 これはまさか誕生日プレゼントですかね?生徒にプレゼントとかして大丈夫なのか?


「親友兼上司の子供の誕生日に贈り物をするのは礼儀だろう」

「……まぁ、貴族社会ではおかしな事ではありませんが、私は生徒ですよ?」

「バレないように持って帰れよ」


 有無を言わさず受け取らせる気か。だから隠せるように小さな物なのか。そこまで考えて用意してんのか。


「……ありがとうございます。では失礼致します」

「あぁ。気を付けて帰れよ。学園内でも油断はするな」


 諦めて受け取り制服のポケットにしまった。それを確認して先生は軽く口の端を上げた。

 学園内でも油断はするな。か。私は礼をして退室した。


「遅かったな」


 出た瞬間固まった。ドアの横にアドニスが立っていた。


「帰ってなかったのか?」


 帰って良いと言っておいた筈だ。なのに何故此処に居るのか?


「帰るのも帰らないのも俺の自由だろ」


 アドニスは不機嫌な表情でそう言うと廊下を歩き出した。

 その理屈で言うと私もここでアドニスと一緒に帰らなくても良くなるんだけど。取り敢えず黙って付いていく。


「待たせて悪かったな。帰ったと思ってたから」

「俺が勝手に待ってたんだから気にするな」


 言葉の内容と反して口調は冷たい。アドニスは今日1日通して機嫌が悪い。謝るのもなんか違う気がするし。どうすりゃいいんだ。


 ロクに口をきかないままに寮に着いた。


「あ、グライエル様。今日も荷物が届いております」


 管理人さんがそう言って手を差し出した方を見る。


「……嘘だろ」

「……凄いな」


 アドニスと私は呆然と呟いた。

 視線の先には玄関の隅にある小さなテーブルに綺麗に積み重ねられた包みの山。


「本日は誕生日でいらっしゃるのですね。おめでとうございます。……運ぶのお手伝いさせて頂きます」

「ありがとうございます……。お願いします……」

「俺も持つよ……2人でもキツイだろ……」


 3人がかりで部屋まで荷物を運び込んだ。管理人さんは荷物を置くと戻って行った。


「凄い荷物でいらっしゃいますね、グライエル様」


 管理人さんを見送って部屋に入ろうとした時、声を掛けられた。


「クーゲル……」

「お誕生日おめでとうございます」


 振り返るとカナン・クーゲルが笑顔を浮かべて立っていた。


「ありがとう」

「こちら、よろしければ受け取って下さい。グライエル様に差し上げるにはつまらない物ですが」


 そう言って細長い包みを差し出す。

 ここで来たか!?今山程プレゼントを受け取ったのを見られた後で渡されては断り様がない。

 と言うかどうやって今日私が誕生日だと知った?私はクーゲルに自分の誕生日を教えてなどいない。


「わざわざすまないな。ありがとう。……クーゲルは私の誕生日が今日だと何故知っていたんだ?」


 そうだ。教えてないのに知っている。そもそもこれがゲームの知識がある証拠じゃないのか?


「お屋敷で稽古をつけて頂いた際にセルゲイ様にお聞きしました。稽古のお礼をしたいので、誕生日はいつでいらっしやるのか」


 私の問いにクーゲルは笑顔で答えた。セルゲイに確認すれば嘘かどうかは直ぐ分かる。恐らく本当なのだろう。


「そうか。礼をされる事では無いが、折角だから有り難く頂くよ」


 そう言って包みを受け取る。


「気に入って頂けると良いのですが。それでは失礼致します」


 クーゲルは軽く頭を下げると去っていった。

 その時ドアが開き、アドニスが顔を出した。


「リランド、何かあったか?」

「あぁ……いや、何も」


 そう言えば部屋にアドニスが居たの忘れてた。


「手伝って貰ったし、お茶でもどうかと言ったんだが、仕事だからと戻られたよ」

「そうか。俺はお茶貰っても良いか?」

「あぁ」


 適当な嘘をつき、アドニスと共に部屋に戻る。


 置き場がなく、取り敢えずベッドに積まれたプレゼントの山と、手の中のクーゲルからのプレゼントに頭が痛くなった……。






































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