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誕生日前日・2

遅くなってしまい申し訳ありませんm(__)m

 夏休みも終わり時間が過ぎるのは早いもので、もう冬が来ようとしていた。

 と言っても前世の日本程四季に変化があるわけではなく、山の方で雪は降りはするが大したことはないし、そんなに寒くない。

 それよりも、もう冬が来るという事はあと数ヶ月したら年度末試験だ。ゲームでは仕様上1位を取っていたが、現実はそうは行かない。1位を取れるように努力をせねば。間違ってもカナン・クーゲルに負けてはならない。


「リランド最近気迫が凄くないか?」

「父上の稽古を受けてダラスマニもクーゲルも腕を上げたからな。うかうかしてられないだろう」


 寮への帰り道、アドニスにそう指摘された。そんなに気迫凄いか?そんなつもりは無かったが?

 しかし、ダラスマニは伯母様に鍛えられたせいもあって随分と腕も上げたし座学の成績もよくなった。うかうかしてられないのは本当だ。


「アドニスも油断してると追い越されるぞ」

「…俺はアイツ等に負ける気はないよ。お前の隣に並び立つ為にどれだけ努力してると思ってるんだ」


 アドニスがムッとした表情で言う。隣に並び立つ為かい。もっと上を目指せよ。でもそんなに努力しているのか。


「アドニスって、見た目涼しげなせいか、汗かいて努力してます!って感じしないよな。努力してるのか」

「してるよ!誉めてるのか貶してるのかどっちだよ!」


 更にムッとさせてしまった。


「すまない。でも、どうせだったら私に並び立つよりももっと上を目指せよ」

「上を目指してリランドを置いてったらどうすんだ」


 まだムッとしているアドニスに思わず苦笑する。

 アドニスは夏休み中に誕生日を迎え15歳になった。この世界では一応15歳で成人になるのでもう大人なのだが、中身はまだ子供だな。


「そうなったら置いてかれないように努力するよ。それこそお前の隣に並び立てる様にな」

「俺の隣に?」


 嬉しそうに表情を綻ばせるアドニスに、意地悪に笑って見せる。


「まぁ、直ぐに追い抜いてみせるがな」


 良く聞く転生特典のチートスキルも無いのに、トップを取るならその位の気構えじゃないとな。


「リランドって、そう言う奴だよなぁ…」


 そうぼやいてアドニスは肩を落とした…。








「グライエル様、荷物が届いてますよ」


 寮の玄関で管理人さんからそう声を掛けられた。

 荷物?何も届く予定は無かった筈だが?

 不審に思いながらも差し出された荷物を確認する。そんなに大きい物ではない。


「うちからじゃないか」


 横から覗き込んでいたアドニスが呟く。ラーシュ家から?

 確かに包みにはラーシュ侯爵家の家紋が押されていた。


「ラーシュ侯爵家の荷物なら、アドニス宛では?」

「いえ。間違いなくグライエル様宛です」


 間違いではと問うと、管理人さんは首を降った。

 …何でラーシュ家から私に荷物が?まぁ、開けてみれば分かるだろう。

 取り敢えず受け取り、部屋に戻った。…因みに何故か当然の如くアドニスもついてきた。


「何でラーシュ家から私宛に?何か聞いてないかアドニス?」

「聞いてない。でも察しは付く」


 アドニスは面白くなさそうな顔で荷物を睨み付ける。何だ?

 取り敢えず開けてみようと包みを開くと、中には綺麗な小さな包みと手紙が入っていた。手紙を確認する。


「あ、ウィリアムからだ」

「やっぱりか」


 頭の良さそうな達筆な字で書かれた手紙はウィリアムからだった。そんなに長い文章ではない。直ぐに読めた。


「…そうか。すっかり忘れてた」

「忘れるなよ。自分の誕生日」


 手紙の内容は誕生日だからプレゼントを送るとの事と、祝いの言葉。

 …しかし、なんとも小狡い男だ。

 私の誕生日は『明日』なのに、わざわざ前日にプレゼントを贈るとは。しかも、しっかりと手紙に『当日だと他の人のプレゼントに埋もれてしまうので』と自分で書いている。


「凄いな。ウィリアム」

「抜け駆けって言うんじゃないか、これ」


 手紙をしまい、包みを開けてみる。包みの中には白い箱。それを開けてみると、青いラベルの綺麗なボトルが入っていた。

 中身を確認した瞬間アドニスが渋い顔をする。


「これ、香水か?」


 ボトルを取り出し蓋を開けると、シトラス系の爽やかな香りがした。

 …あれ?これ、何か覚えのある香りだな。

 記憶を辿る。どこで嗅いだか…。青いラベルに、口には青と白の2本のリボンが結んであるボトルを眺めて考える。青いラベルにはラーシュ家の家紋が…。


「あ、これ、ウィリアムが使ってる香水か?」


 漸く心当たりに行き着いた。そう言えば夏休みにどっかのお茶会で会った時にその香水良いねと言った気がする。

 確かラーシュ侯爵家の商会で作ってるオリジナル商品らしく、ラーシュ家の皆が使ってる物はそれぞれ専用で作っていて、市場には出回っていないので手に入らないと言っていた。

 この世界の社交界では、何故か成人すると香水を付け始める。私も明日成人する。それでわざわざくれたのか。


「これ、ウィリアム専用じゃないのか?」


 アドニスに問うと、もう苦虫を噛み潰し続けている様な顔でボトルを眺めて何やらブツブツ呟いていた。


「あの野郎…リラが同じ香水つけてたら周りがどんな目で見るか分かってて贈りやがったな…」


 おぉ。そうか、同じ、もしくは似たような香りをつけた『男女』はまぁ、そう言う関係だよねと言う暗黙の了解がある。

 ウィリアムの思惑は兎も角、私とウィリアムが同じ香りをつけても男同士だから、そんな目では見られんと思うのだが。


 …確かに騎士になるまでは諦めないって言ってたけど、すげぇ攻めてくんなぁ。


 しかし、明日誕生日か。すっかり忘れてたわ。攻略対象の誕生日ってプレゼントイベントがあったな。クーゲルがリラルートに入ろうとしているなら明日何かあるだろうか?


 まぁ、何を貰っても私の好感度は上がらんがな。


 好みの香りを放つボトルを眺めながら、これも使って良いものかどうか、どうしたもんかと考え、溜め息を吐かずにはいられなかった…。




















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