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親の心子知らず (※主人公視点ではありません)

最近更新出来ず、進みも悪くすみません…。

 グライエル伯爵視点です。


「ルーベンス。カーディナル家から使いが来ているぞ」

「カーディナル家から?」


 そう言って執務室に入ってきたブラッドの後ろには見覚えのある顔の初老の男性が着いていた。確か2、3年前に騎士団を退団して出身のカーディナル領の私兵になった者だ。

 まだ通す許可は出していないのに連れてくるとは余程緊急の連絡か?


「グライエル騎士団長。お久し振りでございます。緊急ですので挨拶は省かせていただきます。単刀直入に申し上げます。ご子息、リランド様が襲撃されました」

「「なんだと!?」」


 一歩前に出た彼が口にしたその報告に、俺とブラッドは同時に声を上げた。


「ダラスマニ領に入って間も無く襲撃されたらしく、セルゲイ殿がカーディナル領の警備兵の詰め所に救助要請にいらっしゃいまして、私は報せに、他数名が既にセルゲイ殿と共に救助に向かっております」

「セルゲイが救助要請!?リランドの側を離れたと言うのか!?」


 ーバンッ

 思わず机に手を叩きつけ立ち上がった。机上の書類が何枚か床へ落ちていく。


「ルーベンス。落ち着け。恐らくそうせざるを得ない状況だったんだ」

「襲撃して来た輩は30人弱。狙撃にてセルゲイ殿と馬を狙い、更に金品ではなくリランド様を狙っている様子であったそうです」


 …成る程。だからリラはセルゲイを救助要請に出したのか。恐らくロッドも逃がしただろう。腕が立つとはいえ多勢に無勢。その場に2人を残し負傷させる位なら自分だけが残った方がリスクが低いと考えたか。我が子ながら立派なものだ。…だが。


 …馬鹿者が。


 思わず胸中で毒づいた。

 何故2人を犠牲にしてでも逃げる位我が身を大事に出来んのか。何の為の護衛だ。

 無論、ロッドもセルゲイも大切な人材だ。失いたくはない。だが、2人はリラを護る為に付けているのだ。リラが2人を護っては本末転倒だろう。


「騎士団からも救助を出すか?」

「セルゲイ殿に同行したのは私兵の中でも手練れの者達です。戦力は問題ないかと。同時にグライエル領主様にも使いを出しております」


 ブラッドの言葉に使いの者が答える。今王都から救助を送っても間に合わないだろう。姉様にも使いが行っているなら彼方も動くだろうし、騎士団を動かすのは無駄だとブラッドも分かっている筈だ。わざわざ無駄な事を提言する事で私が冷静な判断が出来るか試したのだろう。失礼な奴だ。


「貴殿の言う通り戦力には問題ないだろう。それに今騎士団を出しても間に合わないだろう。無駄に騎士を動かす訳にはいかない。貴殿にはカーディナル侯爵に使いを頼みたい。今書簡を用意する」


 言って私兵を借りた旨とその詫びと礼を書き、サインとグライエル家の家紋で封蝋をする。騎士団長としての印も別にあるが、今回はグライエル家の問題なのでグライエル伯爵としての書簡だ。


「これを。また後程私が直接伺うと伝えて頂きたい」

「承ります」


 書簡を受け取ると礼をして使いの者は出て行った。

 それを確認し、ブラッドが私に向き直って言った。


「襲撃して来た人数といい、明らかにリランド狙いだな。あの3人相手じゃ10人程度じゃ太刀打ち出来ないからな」

「それはおかしいだろう。今日うちの馬車がリランドを乗せてそこを通ると知っていなければそんな準備は出来ない」

「だから知ってたんじゃないか?リランドが今日グライエル領に向かう事を」

「内通者が居ると?」

「身内を疑いたくないだろうが、ちなみにグライエル家の人間以外で誰が今日の事を知っていた?」


 ブラッドの言葉に記憶を辿る。そう言えば昨日アドニスが来ていたな。リラが今日から暫く領地に行くと知っていて会いに来ていた様だった。

 …アドニスは知っていた。ならば家の者以外にも知れていてもおかしくはない。


「ラーシュ家に使いを。アドニスを呼んでくれ。リランドの名前を出して大至急と言えば直ぐ来るだろう」


 ブラッドは1つ頷いて出ていった。









「多分。ダラスマニも知っている筈です。俺が聞いた時に一緒に居たから」


 間も無くブラッドがアドニスを連れて来た。コイツ自分で行ったのか。確かにその方が速いが。

 来た早々アドニス以外でリラの今日の予定を知る者は居ないか?と問うとすんなりとアドニスは答えた。


 …ダラスマニも知っていた?襲撃されたのはダラスマニ領だ。偶然では無いのだろうか。


「ありがとうアドニス。帰って良いぞ」

「え。それだけ?」

「じゃあ帰るか」


 ブラッドが背中を押して部屋から出す。


「なんだったんですかー!?」


 大至急と連れてこられたにも関わらず早々に帰されるアドニスの叫び声がドアの向こうから聞こえた。


「鷹。居るか?」

「此処に」


 返事と共に机の横に姿を現す全身黒ずくめの男。目元以外は全て覆われている。


「ダラスマニ家の次男坊について調べろ。至急だ。それとカーディナル領とダラスマニ領の辺りを根城にしている野盗について」

「御意」


 今度は返事と共に姿を消した。


『あの2人について一応調べておいた方が良いんじゃない?』


 姉上の忠告が思い出される。聞いておけば良かった。今更後悔しても遅いが。


「どうか無事で…」


 動けぬ身では祈る事しか出来なかった…。






































鷹はグライエル伯爵の鼠です。梟と対称的な感じです。

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