反省
遅くなってしまいました。
相変わらず進みが悪いです。すみません…。
「リランド!無事で良かった!」
「心配させないで頂戴!」
ダラスマニ家から帰ると、なんと母上とエリーゼお姉様が待ち構えていた。
そして屋敷に入るなり母上から熱い抱擁を受けることになった。
「すみません。ご心配お掛けしました…」
ガッツリ母上にホールドされ。すぐ横にはエリーゼお姉様が張り付いている。取り敢えず心配掛けたことを謝った。
しかし、母上は兎も角、何故エリーゼお姉様が此処に?
「セルゲイが援軍としてカーディナル領の警備兵を借りたのよ。だからカーディナル家にもお詫びとお礼をしたのよね」
私の疑問が分かったのか、伯母様が言う。
長女のエリーゼお姉様はカーディナル侯爵家に嫁いだ。だからか。
「そう。それでお義父様が教えて下さって、旦那様も心配して下さって、リランドの様子を見に行く様に言って下さったの。それでシャリア様と来たのよ」
「そうだったんですね…」
成る程。カーディナル領からダラスマニ領に入って割りと直ぐに襲われたから、セルゲイはグライエル領に助けを求めるよりカーディナル領に戻った方が速いと判断したのか。
…あれ?そしたら何故伯母様はあんなに早く助けに来てくれたんだ?
「カーディナル領に助けを求めたなら、何故伯母様はあんなに早く来て下さったんですか?」
母上にガッツリホールドされているので後ろに立つ伯母様を振り返れないが、取り敢えず問い掛ける。
「リランドは夕方迄には来るって言ってたじゃない。なのに日が沈み始めても来ない。お前を出来ない約束をする様な人間に育てた覚えはないもの。何かあったと思ったのよ。それで街道を遡って行ったら、うちの馬車が停まってて、セルゲイとロッドとカーディナル家の私兵が居るじゃない。やっぱりなと思うわよね」
成る程。時間にきっちりした人間に育ってて良かった。約束を守ることって大切だね!
「ロッドが野盗のアジトを突き止めたから襲撃して野盗連中を締め上げたんだけど、依頼主に何も聞かされてはいなかったらしくて。でもアイツらもそこまで馬鹿じゃなかったらしくて、リランドを連れ去った連中の後を着けてたらしいのよね。それでハルセルの街の娼館に居るって分かって助けに行ったのよ」
成る程。でも伯母様はダラスマニについて調べたらしいから、野盗が馬鹿だったとしても直ぐに娼館には行き着いただろうな。
「マリア様。リランドを助けて下さってありがとうございました」
母上は私から離れると伯母様に向き直って頭を下げた。
エリーゼお姉様も母上に並んで頭を下げる。
「そんな改まらないで。頭を上げて頂戴。リランドは私の甥よ?助けるのは当然だわ」
伯母様が2人の肩に手を掛け身体を起こさせる。…だが、母上は頑なに頭を下げたままだった。
「シャリア様?」
「母上?」
母上の肩が微かに震えていた。
「本当に、ありがとうございます…。この子を取り戻してくれて…」
声も震えていた。やっと気付いた。
母上は泣いているのだ。だから顔を上げられないのだ。公爵令嬢として育った母上は人前で涙を、弱味を見せるなどあってはならないと教育されている。
ここはグライエル家とは言え、空気と化しているがダラスマニも居るし、使用人も居る。伯爵夫人が弱味を見せてはならない場だ。
なのに私の無事を確認して涙を堪えられない程安心したのだろう。
…それだけの心配をかけてしまったのだ。
「…母上。ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした…」
頭を下げたままの母上を今度は私が抱き締めた。
6人姉妹だったから忘れてたけど、母上にとっては私は唯一の娘なのだ。いや、2人3人いれば1人位どうでもいいって訳じゃないけど、いや、貴族では結構そういう親も居るけど。うちは違うし。そりゃ泣くほど心配もするわな。
無茶をして申し訳ないことをした。今世では前世の分まで家族を大切にするって決めてたのに。こんなに心配させてしまった。
いや、元をただせばダラスマニが悪いんだけど。
今後、親に心配掛けるような真似はしない様にしよう…。
震えが治まってきた母上の肩を抱き、自分の行いを反省した…。