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グライエル領到着

読んでくださる皆様ありがとうございますm(__)m

相変わらず進みが悪くてすみません…。

「本気?」

「はい。これが最善と判断しました。伯母様にはダラスマニ男爵と交渉して頂かなければなりませんが…。ダラスマニの手紙から此方が優位に立てるでしょう。グライエル領にも悪い話ではないかと」


 ロクに眠れないまま朝を迎え宿を出るとセルゲイとザックが待っていた。どうやらあの娼館の主は腰が抜けて何も出来なかったらしく、追手もかからなかったらしい。梟曰くリランド様の脅しが『良ーく』効いたのでしょうとの事。良ーくの念の入れ方が凄く気になったが。そんなに脅したつもりは無かったんだけど。


 そして護衛も増え無事にグライエル家の屋敷に到着。改めて伯母様から事情説明を求められ…。

 ダラスマニが全部自白してしまいました。そう。全部。私に対する感情とかそれに伴う行動まで。


 新手の拷問かと思った。誉め殺しとは良く言ったものだ。次々出てくるズレ気味の賛辞に恥ずかしさで殺されるかと思った。


 その後2人を連れ帰った理由を訊かれ、梟に話した通りの事を答えた。そして今に至る。

 ダラスマニの手紙とは、ダラスマニが行方を追われない為に書き置きしていった物で、内容は夫人と自分の関係の告白だったらしい。貴族は身内のスキャンダルには敏感だ。此方からしたらダラスマニ家の弱味を握ったようなもの。

 ザックは兎も角ダラスマニを家で預かるには流石に男爵に話を通さなければならない。此方の要求を飲ませるには十分なカードになるだろう。伯母様が使えばダラスマニの身柄以外にも領地間のやり取りでグライエル領に有益な条件を得られる様に出来るだろう。それをダラスマニを引き取るメリットの1つとして説得の材料とした。これで伯母様が納得して下されば、あとは父上や祖父母の説得等どうにでもなる!


 頼みます伯母様!納得してくれ!


 伯母様は思いっきり眉間にシワを寄せてため息を吐かれた。


「リランドの側に置くのは心配だけど、普段は寮生活だし、寮には忠犬アドニスがいるし、寮から出なけれはならない長期休暇だけ王都の屋敷じゃなくてこっちの屋敷で預かれば安全よね」

「伯母様!」

「使用人が2人増えただけと思えば、ダラスマニ家の弱味を握れた分でお釣りは来るわね。良いわ。ダラスマニ男爵との交渉も、愚弟とお父様達の説得も任せなさい」


 髪をかき上げ張る必要も無い立派な胸を張り、伯母様は堂々と言い切って下さった。忠犬アドニスとかちょっと引っ掛かったけど、まぁ良いか。


「ありがとうございます!私の勝手でご面倒をおかけします」

「別にこの程度大したことじゃないわ。2人共家で使われる事に文句は無いわね?」


 伯母様に念を押され、ダラスマニは黙って1つ頷き、ザックはダルそうに口を開いた。


「構わない。アンタはあの男よりはマシな主だろう?」

「あら。人としてはマシでも、仕事はキツいかもしれないわよ?」

「それは…まぁ」


 伯母様の意地の悪い笑顔にザックのダルそうな表情が引きつった。多分伯母様容赦なくこき使うよ?人使い洗いよ?


「まぁ、良いわ。梟。セルゲイを呼んで2人の部屋の用意と屋敷の案内をさせて。リランドは私とダラスマニ男爵との交渉の準備をするわ」

「私もですか?」

「何事も経験しておくのは良い事よ…まぁ、誘拐とかは別として」


 わぁ。嫌味ぃ。


 ちらとダラスマニに向けられた視線は凄く冷たかった。許す気は無いなこれ。


 間も無くセルゲイがロッドさんも連れて来たので、ザックとダラスマニは2人に連れられて出ていった。この間1度も梟は姿を現さなかった。けど居るんだよなぁ。凄いなぁ。


「それにしても、リランド、貴方はダラスマニの次男坊に制裁を与えても許される立場よ?家柄的にも、されたことに対しても。出るべき所で裁かせても良いわ。何故助けるような真似をしたの?」


 何故と言われても…。出るべき所に出たら下手したらダラスマニ家にも罰は及ぶし、個人的な制裁っても多分2度と私に手出し出来ないようにするだろうから、痛め付けられて監禁とか、薬で廃人にされるとか…多分結構な事になるだろうし…。

 ちょっとそれはねぇ…取り敢えず何事もなかったわけだし、それにダラスマニの境遇を考えたら可哀相だし…。

 私だったらどうだったろうか?母を亡くし、独りで生きていく為に己を売って。それも男女問わず。終いには母の仇みたいな女に慰み物にされて…。

 あ。絶対無理。だって前世の仇に似てるってだけでクーゲルの人生バッドエンドにしてやりたい奴だよ私は?心の狭さは猫の額以下だよきっと?絶対耐えられないわ。


「境遇に同情したからでしょうか…。私は何不自由無く育ってきました。だからあんな境遇でも耐えて生きてきたダラスマニを助けてやりたくなったのかもしれません」

「…何不自由無く?」

「はい」

「…私達は、リラには誰よりも不自由させていると思っているわ」


 そう言った伯母様の表情は悲しげだった。

 そうか、性別偽って生きてるから不自由か。確かにそうかも知れない。でも。


「不自由等、あまり感じた事はありません。私はグライエル家に産まれて幸せですよ」


 本当に、そう思っている。

 父上も母上も姉妹皆も伯母様も祖父母も仕えてくれている皆も。

 プリムヴェール公爵家の皆も王妃様も王子達も。

 ラーシュ侯爵家の皆もブラッド先生も。


 私が不自由だと思って気遣ってくれるから、皆が思っている程不自由等感じていないし、むしろ貴族で良い生活させてもらってるから幸せだ。


 それに、大切にされているのが分かるから。

 ダラスマニだってきっと大切にはされていたのだろう。男爵からは忘れ形見として、娼館では商品として、夫人からは得られない愛情を得たと錯覚する為のモノとして。


 でもそれは違うだろ。大切にされたって言っても可哀相だろ。


 まだ14歳だし、これまでの人生よりこれから先の人生のが長いんだから、これからの人生はせめて今までより幸せでも良いんじゃないかと思ったんだ。何か私の側に居られるだけで幸せらしいし。


「アンタって子は…」


 伯母様が頭を押さえて俯いた。呆れられたかな?

 この国は割りと平和だけど、やっぱり貴族って立場の為に他者を利用したり蹴落としたりするのが当たり前だから私の行動は理解しがたいのだろうか。


 等と考えていた次の瞬間。


「ほんっとうに良い子に育ってー‼」


 伯母様の叫びと共に顔面をその巨乳に埋められ全身が締め上げられました。…いや、熱い抱擁を受けました。


 …うん。本当に大切にしてもらって幸せです。



















 

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