表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/111

バッドエンド回避

「で、どう言うことか説明してもらえるかしら?」


 ベッドに腰掛け足を組み、威圧的な態度で伯母様が切り出した。

 目の前には姿勢良く並び立つザックとダラスマニ。


 娼館を脱出し、馬で走る事1時間程。ダラスマニ領は抜けきれ無いと判断した伯母様はグライエル領手前の街で1泊する事にした。


 そして今、伯母様からダラスマニとザックに対しての尋問が始まった。

 ごめん2人共。伯母様相手じゃ何もしてやれない。

 伯母様の隣に腰掛け遠い目をする。


「ダラスマニ家の次男坊があんな所に居るなんて。リランドの誘拐に貴方も1枚噛んでいたんじゃないかと思うんだけど、どうなのかしら?」

「伯母様…何故そんな?ダラスマニも拐われていたのです。だから私は共に脱出を…」


 一応フォローをしてみる。普通は私と同じで拐われたと思わないか?どんな推理力してらっしゃる!?


「セルゲイ達から聞いたわ。貴族の馬車とは言えあんな小さな馬車を襲うのには多すぎる襲撃者。明らかにリランドを狙う態度。おかしいでしょう?」

「それだけでダラスマニを疑うのは…」


 一応フォローを続けようとしたが、伯母様は露骨に溜め息を吐いた。そして次に発せられた言葉は予想外のものだった。


「リランド。貴方がこの子を庇うのは生い立ちに同情したからかしら?」

「ご存知で…」


 驚きのあまり誤魔化すことが出来なかった。失敗した。


「私の情報網を侮らないで。ダラスマニ男爵が愛人の子を引き取った事は知っていたわ。その子がリランドと付き合いがあるみたいだから、ちょっと調べたのよ。それまでどんな生活をしていたか」


 え。姪の交遊関係そこまで気にする?過保護過ぎない?


「引き取られる以前、あの娼館で働いていた事は知っているわ。夫人が貴方を『買った』事もね。我が家の『鼠』は優秀なのよ?」


 密偵か。仕事が仕事だから私も家の『鼠』には会ったことがない。話では父上と伯母様、お祖父様それぞれに仕えてるのが居るらしいんだけど。


「で、なんで家の子を拐ったのかしら?」


 話戻す⁉それはあんまり聞かない方が伯母様の精神衛生上良いかも知れませんよ!?てか私の精神衛生上によろしくない‼てかそこまで探っててなんでそこ分からないの⁉


「伯母様!そこまでお調べになっていたのなら、ダラスマニとザックを取り返す為に追手が掛けられる恐れはないですか⁉」


 こうなったら話題を無理矢理変えてやる!


「大丈夫よ。追手に備えてセルゲイ達と家の兵を置いてきたから」


 だから脱出してるのにセルゲイもロッドさんも合流しなかったんだね!流石伯母様!用意周到!


「俺達がここでアンタ達に危害を加えるとは思わないのか?」


 ずっと黙っていたザックが口を開いた。いや、お前伯母様に思いっきり投げられてたのによくそんな強気な事言えんな。


「大丈夫よ。私はリランドの人を見る眼を信用しているわ」


 いや、同級生に拐われたけどね。そんな奴の人を見る眼信用出来ないでしょ普通。


「それに、私達に何かしようとしたらすぐに家の鼠が噛みつくわよ?」


 その言葉に3人揃って周りを見回すが、部屋には私達4人以外見当たらない。

 そんな私達を見て伯母様が苦笑した。


「言ったでしょう?家の鼠は優秀なのよ?そんな簡単に見つからないわ」


 え。待って、何処に居るか分からないってことは何時何処で何を見聞きされてるか分からないから気が抜けないって事じゃない?

『家の鼠』ってことは身内みたいなもんだけど、それは流石にまずくないか?


「伯母様、ハッタリと思われるかもしれません。鼠は本当に此処に居るのですか?」


 暗に居るなら姿を見せろと促す。

 てかせめて一目だけでも姿見せとけや。得体の知れない奴に盗撮されてるみたいな不安を覚えるわ!今の私はダラスマニのせいで結構ナーバスになってるからな!気を遣え!


 私の言葉に少し考える様子を見せると、伯母様は命じた。


「出てきなさい。梟」


 伯母様鼠って言ってなかった?梟なの?どっち?


「出ていいんですか?」


 何処からともなく声が返ってきた。部屋の中なのは間違いないが何処からか特定できない。

 声も恐らく男だとは分かるが、若いのか年取ってるのかも分からない微妙な声だ。


「リランドは誘拐されて神経質になっているのよ。得体の知れない輩が部屋に居るのがストレスになったらどうするの。1度姿位見せなさい」


 え。なんでそんな私の思った事が分かるの?読心術?


「御意」


 返事と共に、いきなり部屋の隅に人影が現れた。現れたと思ったら此方に近寄って来る。

 全身白ずくめでフードを被り口元をマスクで覆っていて、かろうじて見える眼は金色だ。

 姿の殆どを隠されているからやっぱり若いのか年取ってるのか分からない。


「マリア様の鼠です。梟とお呼び下さい。姿はまたすぐ隠しますが、常にお側に居りますのでおかしな真似はなさいませぬ様に」


 恭しく私に向かって頭を下げ、最後はダラスマニとザックに視線を送る。

 睨んでいる様には見えなかったが、2人の表情が強張った。これで釘は刺せたな。一先ず安心か。


「姿が見えて一先ず安心出来ました。梟、これからも宜しく頼みます。では伯母様、明日は早く出るのでしょう?もう休みませんか?」

「…そうね。取り敢えず今日は休みましょう。詳しい事は屋敷に帰ったらゆっくり聞くわ」


 暗に話を反らしたままでは終わらせないと言われ、私は表情を引きつらせた…。















 

読んで下さる皆様ありがとうございますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ