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バッドエンド?・3

「では、行って参ります」


 助かった!内心滅茶苦茶ホッとしながらダラスマニを見送った。

 まぁ、ザックが残っているから脱出とかは無理そうだけど、貞操の危機は取り敢えず逃れた。本当に取り敢えずだけど。


 残されたザックはやれやれといった様子で椅子に座る。見張りを頼まれたからか律儀に此方に向き直る。

 さて、これからどうしよう?2人きりとかツラいんだけど。時間的には夜だし寝ちゃえばいいかな?ていうか今何時だ?


「聞きたいんだが、今は何時頃なんだ?」


 声を掛けると少し驚いた表情で此方を見た。なんだよ声掛けたらダメだったかよ。


「7時過ぎだな。そういや腹は減ってないか?」


 そんな時間か、確かにもう夕食時だ。でもこの状況で飯を食う気には流石になれないな。…けど、もしかして食事するなら拘束を解かれるかもしれない。


「そうだな。空いてきたな…。アンタはもう食事はしたのか?」

「俺もまだだな。待ってろ、何か持ってくる。…まぁ、貴族の坊っちゃんには粗末な物しか無いけどな」

「構わない。この状況で贅沢は言わないさ。…ありがとう」


 一応礼を言うと、また驚いた表情をしてザックは立ち上がった。


「大人しくしていてくれよ」


 そう釘を刺して部屋を出ていった。

 ガチャリと鍵を掛ける音がする。まぁ、ですよね?

 もう7時か、約束の時間に行かなかったから伯母様も心配してるかな?

 てか、ロッドとセルゲイは何してるだろう?娼館だし、此処は何処かの街ではあるんだろうけど、見つけられないでいるのかな?

 取り敢えずザックが戻ったら此処が何処の街か聞こう。


 あと今出来る事は…部屋の外の様子でも探るか?なんでも良いから情報が欲しい。

 立ち上り、ドアに耳を付ける。外に人が居たりして、何か話でもしていてくれたらなー。ダメ元で耳をすます。


「…困ります!」

「お待ち下さい!」


 ダメ元だったのにうっすら慌てた声が聞こえる。誰かを止めようとしている様だ。

 恐らくこの辺は関係者以外立ち入り禁止な所なのだろう。そこに客が入り込んだか?


 カツカツという速足の足音が此方に近付いてくる。


「此処は客は立ち入り禁止だ。商品は向こうに揃ってる。戻ってもらおう」


 ザックの声がした。と同時に足音が止む。どうやらザックの前で止まったようだ。


「あら、貴方なかなか好みだわ」


 足音の主だろうか?女の声がした。

 …あれ?ていうか、この声…。


「残念ながら俺は非売品でな。もっと良いのが向こうに揃ってる。戻ってくれ」


 揺るがないザック。


「私、躾のされた商品は飽きてしまったの。貴方みたいな躾されてない子の方が好みだわ」


 間違いねぇー!この声は!


 ードンッ!


 咄嗟に私はドアに向かって体当りをした。


「…あら、あの部屋にも未だ躾のされてない子が居そうね?」


 気付いた女性が反応する。


「ダメだ。戻ってもらおう」

「ダメと言われると見たくなるものよ。…退きなさい」


 ーダンッ


 何かが叩き付けられる音がした。

 恐らく誰かが突き飛ばされたかしたのだろう。声もしない。外がどうなっているのか不安になる。


 ーガチャリ。


 鍵が開いた。ドアから離れるとほぼ同時にドアが開いた。


「あらぁ。やっぱり居たじゃない。私好みの黒髪の子」


 そこには、赤い髪に翠眼の見慣れた顔の美女が立っていた…。


 あれ?赤い髪?伯母様アッシュブロンドだったよね?


「この子を買いたいわ。言い値を払うわよ?」


 振り返って言う伯母様。廊下を覗くと、ザックが床から立ち上る所だった。どうやらさっきの音はザックが投げ飛ばされた音だったようだ。伯母様も父上と一緒に剣術体術極めてるから、強いんだよなぁ。


 伯母様は廊下に居るザックと他の奴等から死角になるように後ろ手にナイフを差し出す。

 それを受け取り、確実に死角になる部屋の奥に移動し縄を切る。

 よし!拘束も解けて武器もゲット!


「ソイツも非売品だ。あまり勝手をするならタダでは済まんぞ」


 立ち上がったザックと、此処まで着いてきたのだろう男2人が伯母様に詰め寄る。


「あら、言い値を払うって言っているのに。…なら、タダで貰っていくわよ?」


 次の瞬間、男2人の片割れ、雑魚っぽい髭面が投げ飛ばされた。

 ザックが伯母様を取り抑えようとするが、そこに私が体当りをかます。

 その間にもう1人の雑魚を伯母様が落としていた。怖ぁ。このご婦人怖ぁ。

 ザックは私を取り抑えようとするが、伯母様から貰ったナイフを喉元に突き付けるとやれやれといった様子で手を挙げた。


「何の騒ぎだ?」


 その時、廊下の奥から身なりの良い中年親父が出て来た。横にはダラスマニが付いている。成る程コイツがオーナーか。


「貴方がオーナーかしら?」


 腰に手を当て、威圧的な態度で対峙する伯母様。

 タダでさえ迫力ある美女なのに、更にその醸し出された威圧感。普通の男なら多分泣く。

 だが、人身売買なんかしてる娼館のオーナーだけあって怯む事なく向き合っている。大したもんだ。


「左様で…。お客様、此方は非売品しか居りません。どうぞお引き取り下さい」

「非売品?アンタ。この子が誰か知っていてそんなことを言っているのかしら?」


 私が物扱いされたことが余程気に食わなかったのか、伯母様の気配が一気に変わる。

 その様子に流石にオーナーの顔色が変わる。


「誰か、とは…?」

「客のフリして出来るだけ穏便に済ませようと気を遣ってやったのに…。知らないなら黙ってこの子を渡しなさい。知っていたのなら…」


 一歩だけ距離を詰める伯母様に圧倒されて一歩後ずさるオーナー。完全に気圧されてる。

 そんなオーナーにゾッとする程綺麗な笑顔を浮かべて伯母様は言った。


「失うものは、この娼館だけじゃなくなるわよ?」


 なにする気ですか伯母様ー!?

 伯母様の迫力にオーナーは顔面蒼白で立っているのもやっとの様だ。これなら私は無事に引き渡されるだろうな。

 …でも。

 喉元にナイフを突き付けたままザックを見上げると、面白そうにに口角を上げていた。さてはコイツ、オーナー嫌いだな。

 オーナーの横に居るダラスマニを振り返る。オーナー程ではないがその顔色は青かった。


「私だけじゃなくて、コイツ…ザックと、そのジェンとやらも連れて行きたい」

「良いわよ」

「なっ!?」


 私の言葉を想定していた様で即座に答える伯母様に、驚きの声をあげるオーナー。

 ザックは笑みを深くし、ダラスマニは驚いた表情をした。


「俺は別に飯が食っていければ主は誰でも良い」

「貴様!」


 ザックの言葉に食って掛かろうとするオーナー。

 私はザックを放し、今度はそのままオーナーの喉元にナイフを突き付けた。


「自分の命と引き換えだと思えば安いモノだろう?問答無用で殺してやってもいいんだ。それをわざわざ交渉の余地を与えてやっているんだ。賢明な判断をするべきじゃないか?」


 突き付けられたナイフに再び顔面蒼白になるオーナー。


「どうする?」


 分かりきった答えを促す為に、敢えて私は問い掛けた…。

























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