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驚愕

 タダですむと思うなよ!


 初心者マークのダークカラーの新車に吹っ飛ばされた時。

 前世最期の時に思った事だ。


 走馬燈とかそう言えば見た記憶無いわ。死ぬとは思ってなかったから家族の事とか考えなかったな。


 前世の家族にも何もしてあげられなかったのに、今世も何もしてあげられないで終わるのか。今世も前世も私を大切にしてくれた良い家族だったのに。


 …冗談じゃない。どんだけツイてないんだよ私の魂。

 前世の分まで今世は謳歌して家族孝行するんだ!私の人生リベンジを!


「邪魔すんじゃねえぇ!」


 叫ぶと同時に微かな光が見えた。


「…あれ?」


 頭が上手く回らず状況が理解できない。取り敢えず光を良く見ると、窓から見える満月だった。

 ここ、何処だ?どうやらベッドに横たわっている様だが、悪くはないベッドだが私の部屋のベッドではない。そもそも私の部屋ではない。


 身体を起こそうとして気が付く。


 後ろ手に手首が縛られている。


 そこで漸く思い出した。


 私は野盗達に捕まったのだ。


 だからあんな夢見たのか。

 しかし、拘束が手首だけとは。私が舌を噛んだりしたらどうするんだ。いや、勿論噛まないけど。猿轡位した方が良いと思うが。


 ベッドから起き上がり、部屋を見渡す。牢屋とかではない普通の部屋だ。テーブルにベッド。空の小さな本棚。タンス。窓は随分高い位置に小さな物が2つ。あれじゃ窓からの脱出はおろか、外の様子も見えないな。ドアは1つ。鉄格子じゃない普通の木製だ。試しにドアノブを回してみる。

 ガチッという音で阻まれる。やはり鍵はかけてあるか。古いし、体当たりとかで破れそうだけど、破る前にバレるな。


 さて。どうするか?


 そう思った時、ドアノブがガチャリと音を立てた。

 誰かが鍵が開けた。


 慌ててドアのすぐ横の壁に張り付く。ドアが開く。人影が部屋に1歩踏み込んできたその時。


 渾身の力でハイキックを放つ。後ろ手に縛られているのでバランスが取れないからそこまで威力はないが、上手く入れば逃げる隙位はつくれる筈。


 バシッ


 そう思ったが、私の放った蹴りは容易く受け止められてしまった。


「危ねぇなあ」


 男は掴んでいた私の足をそのまま押し戻してくる。私はバランスを崩し後ろに倒れそうになる。


 が、倒れなかった。男が背中に手をまわしそのまま抱き上げやがったのだ。しかもお姫様抱っこ。


「下ろせ!」

「下ろしたら何するか分からんだろう。しかし、さっきも思ったがお前さん軽いなあ」


 そのままベッドに運ばれ其処で下ろされる。

 圧倒的に力では敵わないのが分かったのでせめてもと睨み付ける。

 男は長身で色黒。筋肉質。目付きが鋭い中々のイケメンでなんか黒豹みたいなイメージだ。


「もう少し薬が効いてると思ったんだがな。まさかもう起きて襲ってくるとは。何から何まで予想の上を行くなぁ」

「それはどうも。で、私はこれからどうなるんです?」


 睨み付けたまま尋ねる。怯まない私に驚いたのか男は目を見開いたが、面白そうに笑った。


「どうにもならんさ。このままここで生きていくようになるだろうな」

「は?」


 予想外の答えが返ってきた。このままここで生きていく?


「ここは何だ?」

「あー。まぁ、色々あるが、娼館だな」


 答えが返ってくるとは思っていなかったが、男はアッサリと答えた。娼館?色々の部分は人身売買か?


「なら、私を商品にする気か?」


 また驚いた顔をする。そんなに変な事は言ってない筈だが。


「貴族のお坊ちゃんとは思えない発想だな。安心しろ。商品にはしない。アンタはただここで生きていくだけだ…アイツと共に」

「アイツ?」

「これから来る。アイツがアンタが欲しいって言うから拐ったんだ。御愁傷様だな。アイツに目を付けられなければこんな事にはならなかったのにな」


 アイツってのが黒幕か。しかし、ここで一緒に生きていく?目を付けられた?女か?

 てっきり売られると思っていたのに。全然話が見えない。


「酷いよ。ザック。僕に見初められたのが不幸みたいに」


 男の後ろから声がした。どうやらアイツとやらが来ていたようだ。丁度死角で見えなかった…。が。


 私はこの声に、聞き覚えがあった。


 ザックと呼ばれた男は振り返ってアイツとやらに声をかけた。


「戻ったか。ジェン」


 …ジェン?


 ザックの横から見えたジェンと呼ばれたのは襲撃の際に居た黒ずくめだった。

 黒ずくめはザックの横まで来ると、フードを取った。


 フードの下は赤い髪。眼は碧眼。間違いなく見覚えのある顔。


 マスクも外して、素顔を曝した黒ずくめは場違いに爽やかな笑顔を浮かべた。


 私は呆然とソイツの名を呟いた。


「ダラスマニ…」


 私を見下ろして、ジェンキル・ダラスマニはただ嬉しそうに笑った…。


































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